『アベンジャーズ/エンドゲーム(字幕・3D・IMAX)』

TOHOシネマズ日比谷の最寄りにあるJR有楽町駅前、ビックカメラ有楽町店入口で陳列・販売されていた『アベンジャーズ』フィギュア類。
TOHOシネマズ日比谷の最寄りにあるJR有楽町駅前、ビックカメラ有楽町店入口で陳列・販売されていた『アベンジャーズ』フィギュア類。

原題:“Avengers : Endgame” / 監督:アンソニー&ジョー・ルッソ / 脚本:クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリー / 製作:ケヴィン・ファイギ / 製作総指揮:ルイス・デスポジート、ヴィクトリア・アロンソ、マイケル・グリロ、トリン・トラン、ジョン・ファヴロー、ジェームズ・ガン、スタン・リー / 撮影監督:トレント・オパロック / プロダクション・デザイナー:チャールズ・ウッド / 編集:ジェフリー・フォード、マシュー・シュミット / 衣装:ジュリアンナ・マコフスキー / キャスティング:サラ・フィン / 音楽:アラン・シルヴェストリ / 出演:ブリー・ラーソン、スカーレット・ヨハンソン、カレン・ギラン、テッサ・トンプソン、ロバート・ダウニー・Jr、クリス・ヘムズワース、クリス・エヴァンス、エヴァンジェリン・リリー、ポム・クレメンティーフ、ジョシュ・ブローリン、ポール・ラッド、ジョン・ファヴロー、エリザベス・オルセン、デイヴ・バウティスタ、セバスチャン・スタン、ミシェル・ファイファー、ジェレミー・レナー、ティルダ・スウィントン、マーク・ラファロ、グウィネス・パルトロー、チャドウィック・ボーズマン、ダナイ・グリラ、ウィンストン・デューク、フランク・グリロ、タイ・シンプキンス、ドン・チードル、ベネディクト・ウォン / 声の出演:ブラッドリー・クーパー、ケリー・コンドン / マーヴェル・スタジオ製作 / 配給&映像ソフト発売元:Walt Disney Japan
2019年アメリカ作品 / 上映時間:3時間2分 / 日本語字幕:林完治
2019年4月26日日本公開
2019年9月4日映像ソフト日本最新盤発売  [MovieNEX4K UHD MovieNEX『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』セット版MovieNEX]
公式サイト : http://marvel-japan.jp/avengers-eg/
TOHOシネマズ日比谷にて初見(2019/4/27)


[粗筋]
 サノス(ジョシュ・ブローリン)が大願を成就させ、宇宙の生命体は半減した。
 3週間にわたって宇宙を彷徨い、ネビュラ(カレン・ギラン)とともにどうにか永らえていたトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)が死を覚悟したとき、思わぬ救援が現れる。ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が消滅する間際に発した救援信号に応え、宇宙をも自在に飛び回ることの出来るキャロル・ダンバース(ブリー・ラーソン)が駆けつけ、スタークたちの乗る宇宙船を地球まで運んだのだ。
 地球で戦い続けていたスティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)やナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)は今もなお諦めていなかった。サノスから完成したインフィニティ・ガントレットを奪い、指を弾くことが出来れば、消滅した人々を復活させることが出来る。地球から去ったあとのサノスの所在は不明なままだったが、先日、サノスがフィンガースナップしたときと同じ衝撃が、ある惑星から検知された。すべてが終わったあと、辺境で農夫になることを願っていたサノスは、間違いなくそこにいる。
 タイタンでの戦いで深傷を負い、かつての諍いから未だスティーヴやナターシャとの間に溝のあるスタークは参加せず、ソー(クリス・ヘムズワース)やジェームズ・“ローディ”・ローズ(ドン・チードル)たちがスティーヴたちとともに雪辱を果たすべくサノスのいる惑星へと赴いた。
 だが、サノスのもとに既にインフィニティ・ガントレットはなかった。何者かのフィンガースナップで旧に復すことを警戒したサノスは自らの手でガントレットを破壊していたのである。憤りのあまりにソーがサノスの首を切り落とすが、もはや彼らに打つ手はなくなっていた。
 ――それから5年。
 生命が半減した地球は荒廃し、生き残った人々の多くはいまも生きる道を探しあぐねている。スティーヴはそんな人々を励まし導き続け、ナターシャもキャロル、ロケットら宇宙の航行手段を持つ者たちと通信を続けているが、そんな彼ら自身が喪失感から未だ立ち直れずにいた。
 だが、そんな彼らの元に、思わぬ人物が訪ねてくる。5年前の事件以降、行方をくらましていたひとり、スコット・ラング(ポール・ラッド)だった。ピム博士(マイケル・ダグラス)に協力し量子世界の調査をしているさなかに博士らが消滅、量子世界に取り残されていたが、偶然の出来事で帰還に成功していたのである。そして、彼の経験と知識とが、もはや不可能と思われていた“アベンジャーズ”再集結へのきっかけとなるのだった――


TOHOシネマズ新宿の入っている新宿東宝ビル壁面にあしらわれたキーヴィジュアル、とそれを見おろすゴジラ。[感想]
 これは、10年以上、実に22作に及んだ《マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース》を追ってきたひとびとへのご褒美だ。
 途中で何度か「もういいんじゃないの?」と感じたひともいただろうし、長い年月の間に、嗜好の変化や生活の都合で離れたひともあるだろう――かく言う私自身、単独で評価しづらい、理解しにくい作品が増えてきたことに苦言を呈したくなったし(先行作の感想にも何度かそんなことを書いた)、出来る限り追いたかったのに劇場で見落とした作品が2本出てしまった(この感想をアップするまでのあいだに鑑賞して補填するつもりだが)。
 これを書いている2019年4月現在の時点で、続く『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の公開を控えており、『Guardians of the Galaxy Vol.3』の製作が確定、また既に『Dr. Strange 2』、『Blaxk Panther 2』、そして本篇にも登場するナターシャ・ロマノフ=ブラック・ウィドウの単独作品の準備が始まっている、という噂も聞こえており、マーヴェル映画が終わることは当分なさそうだ。しかし、2008年の『アイアンマン』をスタートとした大きな物語に、本篇ははっきりと明確な決着をもたらしていることは間違いない。
 だが、そうして次を匂わせつつも、しかし本篇は『アイアンマン』から連なる大きな物語を見事に締めくくっている。MCUの一連の作品を多く鑑賞してきたひとほど、本篇はカタルシスを味わえるはずだ。
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を鑑賞し、更に粗筋で記したあたりの筋を踏まえれば、打開策もその決着もおのずと限られてくるため、大筋の予想は難しくない。しかし、そのプロセスの鮮やかさ、伏線回収の緻密さには唸らされ、いちいち感激、感慨を禁じ得ない。狙いすましたかのような設定で、自然にシリーズのなかでの出来事を反復して、観客の記憶の引き出しを開けると共に、懐かしいキャラクターたちも随所で顔を見せる。それらと“現在”のキャラクターたちとの思わぬ交錯、邂逅によって生まれるドラマがいちいち味わい深い。
 そして、この一連の流れを経て突入するクライマックスの熱さが逸品だ。ギリギリで繰り広げられる戦いの緊張感もありながら、その随所で思わず快哉を上げたくなるようなシチュエーションのなんと多いことか。これまでのMCUをどの程度観てきたか、どの作品に思い入れがあるか、によって痺れる箇所は異なるだろうが、強烈にツボを突かれる瞬間はきっといちどや二度ではない。
 ネタばらしを避けようとするとどうしても隔靴掻痒の表現にならざるを得ないのだが、本篇はとにかく、これまでのシリーズに登場したヒーロー、キャラクター、エピソードを尊重した作りとなっている。旧作を追ってきたひとなら、細かな出来事、ふとした描写ひとつひとつに何かを垣間見て、感慨を新たにする。あまりに丁寧に織り込んだがゆえにシリーズ最長となる3時間超えの尺となったが、密度が尋常でなく高く、MCUに親しんできたひとほど長さを感じないはずだ。
 だが、本篇が真に素晴らしいエンディングである理由は、特にふたりのヒーローの扱いにこそある、と私は考える。
 この《マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース》の第一歩として製作され、劇中においても《アベンジャーズ》の拠点を自ら立ち上げるなど中心的な役割を果たしたアイアンマンことトニー・スタークは、並外れた頭脳と途方もない資産を所有してはいるものの、スーツの中はあくまで普通の人間だった。
 また、その名に相応しく《アベンジャーズ》の実質的なリーダーとして振る舞っていたキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースは、いちおうは軍人であったものの、元々の身体能力は低く、アメリカ軍の実験に供されるまではやはり普通の人間だった。
 本篇に至るまで22作にまたがる長い長い道程は、やがていちどは対立し、本篇においてふたたび手を取りあったふたりのヒーローとしての軌跡を描いた物語だった、とも言える。そして、だからこそ物語の終焉には、彼らが“普通のひと”に戻る瞬間こそが相応しかった。
 こんなにも美しい完結を迎えることが出来た、最初の《マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース》は、だからこそとても幸せな作品だった、と言える。あれこれ言いつつも、その一部始終を追うことが出来た自分もまた幸せだったし、同じようにリアルタイムで追ってきたひともまた、同じような感慨を抱いているはずだ。
 前述したように、マーヴェルの映画はまだ続く。一説によれば、ヒーロー同士の対立から始まった《アベンジャーズ》フェイズ3は、2019年夏に公開を控えた『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で本当に完結する、とも言われているし、その真偽に拘わらず、心機一転、新たなフェイズとして束ねられていくことは間違いないだろう。その壮大な作品世界に惹かれた観客は引き続き、“マーヴェル”の名を冠した作品を観つづける。
 それでもきっと、本篇はいつまでも心に残るフィナーレであり続けるに違いない。心からの拍手を贈りたい。


新宿ピカデリーのロビーに展示されていた、アイアンマンとサノスの等身大フィギュア。
新宿ピカデリーのロビーに展示されていた、アイアンマンとサノスの等身大フィギュア。


関連作品:
アイアンマン』/『インクレディブル・ハルク』/『アイアンマン2』/『マイティ・ソー』/『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』/『アベンジャーズ』/『アイアンマン3』/『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』/『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』/『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』/『アントマン』/『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』/『ドクター・ストレンジ』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』/『スパイダーマン:ホームカミング』/『マイティ・ソー バトルロイヤル』/『ブラックパンサー』/『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』/『アントマン&ワスプ』/『キャプテン・マーベル
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コメント

  1. […] [感想]  日本ではあまり馴染みのない――と言っても、マーヴェル・ヒーローの多くは、アメコミ愛好家でないと知らない傾向にある気はするが――新たなヒーローの映画化だが、本篇の成立には、『ブラックパンサー』の成功が大きく寄与していることは確かだろう。 […]

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