第1回したまちコメディ映画祭in台東・特別招待作品『ライラにお手あげ』ファレリー監督来日舞台挨拶つき上映。

 きのう、当初観るつもりだった映画を先送りにして『トロピック・サンダー』を鑑賞したのは、本日にこのイベントが控えていたからです。

 今年から新しい映画イベントとして、かつてはビートたけしらを輩出する笑いの発信地であった浅草と上野にて、日本で初めてコメディ映画に限定した映画祭“したまちコメディ映画祭”というのが催されることになりました。両土地に縁のある私としては、ひとつぐらい鑑賞しておきたかったのですが、そのひとつとして、ベン・スティラー主演の日本未公開作『ライラにお手あげ』が、監督であるファレリー兄弟の舞台挨拶つきで上映されることを知り、この監督の作品群がけっこう好きな私はこれを選んだというわけ。同じベン・スティラーが主演しているから、という理由で、当初劇場公開中に観ておけばいいか、程度だった『トロピック・サンダー』を前倒しで鑑賞したわけです。この方針転換、正解であったことは、あとで判明しました。

 いつもの日曜日より早めに起床すると、普段とは違う交通手段を用いて、上映会場となる浅草公会堂へ。ちなみに私は20年以上昔、ここのステージに立ったことがあります。映画上映専用の小屋ではないので前の人の頭がどうしてもスクリーンに被ってしまいますし、古い劇場ゆえ座席の座り心地も非常に悪いのですが、そこはまあご愛敬。

 目玉となる舞台挨拶は、上映の前に行われました。まずは、したまちコメディ映画祭全体の監修を務めたいとうせいこう氏と、スーパーヴァイザーの大場しゅう太氏が登壇、それから待望のファレリー兄弟が登場――のはずだったのですが、現れたのは弟のボビー・ファレリー氏のみ。兄のピーター氏は来日直前にインフルエンザを患ってダウンしてしまったのだそうです。いとうせいこう氏は、不謹慎ながら「兄弟で良かった!」と思ったそうです。宜なるかな

 初めての映画祭、その中では特にVIPに属する方なので、ボビー氏は初日である22日のレッドカーペットにも参加したそうなのですが、その待遇と街の雰囲気がいたくお気に召したらしい。挨拶の早い段階でボビー氏は、現在製作中の最新作がちょうど来年の今ぐらいに完成している見込みであり、そのときは是非完成した作品を携えて、改めて兄とともに来日したい、と言ってくれました。こういうコメディ主体の映画イベントは、海外のコメディ映画が入りにくくなっている日本の現状からすると、存在していること自体に意義があるので、現段階でここまで言ってくれるのが嬉しい。是非とも再来日していただきたいものです。

 この話もさることながら、やはりコメディ映画の監督だけあって、ボビー氏はサービス精神旺盛で終始愉しい挨拶でしたが、特に出色だったのは、途中でベン・スティラー氏のコメントが上映されたくだりでした。

『トロピック・サンダー』公開に合わせて来日したスティラー氏、来日時間は1日にも満たないという超強行軍だったそうですが、打診してみたところ、快く観客およびファレリー兄弟へのコメントを収録させてくれたとのこと。もともと予定にもなく時間もなかったため、映像には字幕さえ入っていませんでしたが、私程度のリスニング能力でも、なんか怪しい話をしているのが解る。上映後、これは通訳をお願いしたほうがいいのでは、と司会がボビー氏のコメントを訳していた女性に振ったところ、途中で言い淀んでしまった。「これは僕が訳しましょうか」といういとうせいこう氏の言葉があって、のちにボビー氏が説明した概略は次の通り。

 やはりファレリー兄弟は普段からサービス精神が旺盛なようで、ベン・スティラー氏はこんな悪戯を仕掛けられたことがあるという。兄のピーター氏が、「実は俺、新しい腕時計買ったんだよ。見てくれる?」と手首を示す。スティラー氏が見ると、股間にかざされた手首の上にはアレ、というかナニが。――ああ、そりゃ女性に通訳させちゃいけません。スティラー氏はピーター氏に対して、今回は大勢の前なんだからそういうことしちゃ駄目よ、とたしなめていた模様。

 笑いの絶えなかった挨拶のあと、舞台挨拶には恒例のフォトセッションも行われたのですが、誤って退場しそうになったボビー氏は、呼び戻されると必要以上に前に出て「それじゃバストアップしか撮れません!」と言われたりと、最後までチャーミングなところを披露してくれました。満喫しましたが、それだけに却ってピーター氏の不在が惜しまれます。本当に来年も、新作をひっさげて来てほしいものです。

 実は今日はこの新作以外にも、代表作『メリーに首ったけ』の上映にファレリー兄弟による1時間半のトークを合わせたイベントも催されていたのですが、ちょっと時間がかかりすぎてしまうので今回は断念。本当は兄弟であることを想定して1時間半の尺を設けていたらしいいとうせいこう氏は「どうやって保たせるんだ」と冗談交じりに悩みを吐露していましたが、たぶんあの感じなら充分保つでしょう。

 しかしこのしたまちコメディ映画祭、3日間と期間は短いながらも、スケジュールを見るとなかなか充実しています。海外からの招待作品も、最近ではDVDスルーになりがちな作品中心ですが、しかしだからこそ敢えて大きなスクリーンでかけられるこういう機会は貴重です。盛り上がっていけば海外の、より新しい作品も上映できるでしょうし、日本でのプレミア上映の場として活用されることも期待できる。珍しい監督による舞台挨拶のあったこの上映がほぼ満席であったのは当然ながら、同じ浅草公会堂で次にかかる作品を待っている人も、見たところかなりの数がいたようですし、どうやらそれなりに注目は集められたようです。約束通りファレリー兄弟ふたりに揃って来日してもらうためにも、とりあえず来年は無事第2回が開催されることを祈りたい。

 肝心の作品の感想はこのあと、いつもの通り別枠にて。

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