こないだ、「観るものがねええぇ」と嘆いたはかりですが、しかしぽつぽつかかってはいる。今日は夕方から映画鑑賞へ。
バイクにて訪れたのは、新宿シネマカリテ。鑑賞したのは、プロを起用しないスタイルで独自の世界を築いたロベール・ブレッソン監督作品、1匹のロバを軸に、ひとびとの悪意と無関心を暴き出す『バルタザールどこへ行く』(コピアポア・フィルム配給)。
あまり予備知識を入れずに鑑賞したせいもあるのでしょうが、とにかく細部が読み解きにくい。マリーとジャックの関係性はどうなってるのか、マリーの父はなぜ経済的に追い込まれてるのか、空白の期間にロバのバルタザールはどんな経緯であんな目に遭ってるのか。しかし、深く語らないからこそ、余白が饒舌で、観終わってから様々に考えずにはいられない。
と、余韻に浸っている暇はない。本日はハシゴなのです。しかも同じ劇場、同じスクリーンで。チケットを確保するとき、意図的に座席も同じにしたので、そのまま座ってても良かった――けどシステム的にいちど立たないわけにはいかないのでした。
完全に同じ場所にて鑑賞した本日2本目は、『バルタザールどこへ行く』の翌年に同じロベール・ブレッソン監督が撮った、こちらは迫害されるひとりの少女の姿を通して人間の独善性や無神経ぶりを炙り出していく『少女ムシェット』(コピアポア・フィルム配給)。
実は今回、この2作品を鑑賞したのは、前々からこの2本目が気になっていたからです。なんで気になっていたか、は正直覚えてません。たぶんどこかで引っかかるものを感じたのでしょう、いつからか月額レンタルのリストにこれを突っ込んでいて、そろそろ上位に移しておこうかな、と考えはじめた矢先に、このリマスター版の公開を知った。どうせ観るなら劇場で、そして同時にかかる作品も押さえたい。いざ公開されてみると、私の好きな午前中の上映回はない代わり、夕方からいい感じにハシゴできるスケジュールがあったため、まんまと乗せられた次第。
リヴァイヴァルということもあってかパンフレットの販売はなく、その代わりに解説を記した二つ折りのリーフレットが配布されていて、そちらにも書いてあったのですが、ぶっちゃけこの2作、本質的にほぼ同じ造りになっている。違いは被虐者が自分の意思を主張出来るか否か、というくらいで、劇中のモチーフでさえ細かに対になっている。しかしそれだけに、その感情を推測するしかない『バルタザール~』よりも『ムシェット』のほうがかなり剥き出しで痛々しい。周囲から辛く当たられることも、八つ当たりすることさえも習慣化してしまった少女が、ようやく感情を露わにしたかと思えば、それすらも容易く裏切られる。挙句、自らの境遇を変えるべくもない彼女に、あまりにも無慈悲な言葉が投げかけられる。悲痛なラストシーンは、なまじその趣向が詩的であるだけに、尚更生々しく映る。
粗筋をざっと聞いた印象で想像していたよりも描写は遙かにマイルドなんですが、しかしマイルドであればこそ却ってその過酷さが記憶に残る。これは確かにかなりの映画体験ですし、2作続けて観た甲斐はありました。
鑑賞後、時間的には家に帰っても食事は待っててくれそうな頃合いですが、このところ新宿で食べる機会がなかったので、あえて劇場近くで夕食を摂ることに。またぞろ新しい店を開拓……はせず、8月27日に初めて訪れた麵屋海神を再訪することに。
混んでいたら第2候補に切り替えるつもりでしたが、幸い待たずに着席出来たので、そのまま注文。基本、保守的な私は、やっぱり前回と同じあら炊き辛塩らーめんのへしこ焼きおにぎりつきを頼んでしまうのでした。だいぶ冷えてきたし、おにぎりを残ったスープで崩して食べるのが美味しいし、今日の陽気と時間帯には最高の取り合わせです。
家を出たときよりもだいぶ冷え込んでいて、服装が少々薄くないか、ちょっと心配になりましたが、いざバイクを出してみると、まだ何とかなる感じ。あと2度下がっていたら、凍えていたかも知れません。バイク乗りには過酷な季節が確実に迫ってきてます……それでも私ゃ乗るんだけど。
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[…] 原題:“Au Hasard Balthazar” / 監督&脚本:ロベール・ブレッソン / […]
[…] 原題:“Mouchette” / 原作:ジョルジュ・ベルナノス『新ムシェット物語』 / 監督&脚本:ロベール・ブレッソン / […]