朝からしとしとと冷たい雨が降る日に、ほんとーは外出なんざしたくない。しかし、観たい映画がすっかり溜まっているので、ローテーションの都合でいちばん出かけやすいこの日に出ないわけにはいかない。
行き先はTOHOシネマズ日本橋。ここは地下鉄の通路と建物が直結しているので、雨のとき、寒空のときは有り難い。劇場そのもののストレスも少ないので、やっぱり私にはいちばん利用しやすいところです。
鑑賞したのは、日本が誇る怪獣映画の最新作、終戦で深い傷を負った日本を、巨大生物が更に蹂躙する『ゴジラ-1.0』(東宝配給)。
率直に言って、私のなかで本篇の山崎貴監督の評価はあんまし高くない。CGを駆使した映像そのもののクオリティは高くとも、構図であったり編集のリズムであったり、物語としてのクオリティが全般にいまいち、という印象なのです。だから初期の作品は微妙な評価で、『ALWAYS 三丁目の夕日』において古沢良太というシナリオ面でのサポートがあって初めて成功したのが、その辺を理解しないまま作を重ねて、どんどん微妙になっていった、と感じてます。ぶっちゃけ、CGの監督としてのみ尽力して、脚本演出は他の人に委ねればいいのに、とずーっと思ってました。ゆえに、この作品の監督を担当することが発表されても、まあ仕方ないから観に行くか、というくらいの心境でした。だから、プレミアムスクリーンでの上映が豊富だった公開当初、二の足を踏んでいたわけで。ただ、評判はいいようなので、ようやく重い腰を上げたのです。
確かに、これはいい。少なくとも、これまで観た山崎貴監督作品のなかではいちばん評価出来る。
相変わらず編集がもたついてる、とか戦後の空気感がいまいち表現しきれてない、とか引っかかるところは幾つかあるものの、災厄としてのゴジラの解釈、そして終戦直後の無力感や戦時の反省をこめた戦い、というドラマの組み立て方はいい。終盤の展開はお約束、予定調和の繰り返しではあるものの、その陳腐さを意識的に受け入れたがゆえの熱さと感動は見事。
あと、特に感心したのは、兵器のほとんどない、GHQの助けも期待できない、という状況でのゴジラへの対抗手段です。これはなかなかの着眼だと思う。それ以外はお約束一辺倒であればこそ、他にはあり得ない窮余の一策は、けっこう価値が高い――果たして本当に可能か、は別として。発想のダイナミズムと映像的なインパクトがあるなら、映画としてはいいのだ。個人的にはこのくだり、『バトルシップ』を思い出しました。
人間ドラマとしては、怖じ気づいて特攻を断念したうえ、結果的に同胞たちを見殺しにしてしまった主人公・敷島の葛藤を軸にしているのもいい。パニック映画としての側面があるがゆえに、焦点が絞りきれなくなるのが、ハリウッドの《モンスター・バース》でも見られる難点でしたが、ゴジラの恐怖、それでも戦う意味と目的を敷島に凝縮したことで、物語として観やすく、感情移入もしやすくなった。『らんまん』といい本篇といい、神木隆之介の説得力が素晴らしい。浜辺美波も。
『シン・ゴジラ』のような厚み、現代性はないものの、しかし《ゴジラ》というキャラクターの意味合いと、それを活かしたドラマとしては見事。このあとの山崎貴監督作品を観る気に――まではなってませんが、次の作品の鑑賞はもうちょっと積極的に検討してみてもいいかな、という程度には認識を改めました。でもまだ解らないぞ。
鑑賞後は、久々に日本橋ふくしま館へ赴いての昼食。既に雨は上がり、寒いけど外を歩くのに不安はない……結果、またしても私は手持ちの傘をただぶら下げて歩くほうが長いお出かけになったのであった。用心して持ち歩いた傘が無駄になることはしょっちゅうでしたが、出かけたときに降っててもこうなるんか。
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