きっかけは再放送なのです。
ちょうど私が自室で仮眠を取ったり作業を進めたあと、透析装置のあるリビングに移動して、その日の透析の準備を始める時間帯に、テレ東ではずーっと『孤独のグルメ』の再放送をしている。以前は、刑事ドラマや2時間ドラマをやっていて、時間潰しにはあんまり適当ではなかったため、チャンネルを合わせたりはしなかったのですが、ある時期から“シリーズイッキ見”と称して、連日再放送をするようになった。
知ってはいたものの特に観るつもりはなく、ある日、準備の傍らに観るものが他になぁんにもなくて、なんとなく『孤独のグルメ』を点けておくことが増えたのですが、だんだん面白さが解ってきた。気分や感覚で見知らぬ飲食店に飛び込み、メニューが多いとその構成に本気で悩む。いざ食べ始めるとグルメぶった素振りはせず、素直に美味しさを喜び、調味料の追加やご飯にぶっかける、などの工夫をして全力で食事を楽しむ。賑やかさも、しばしば紛れ込む居酒屋での酔漢の絡みにも鷹揚で、ずーっと視聴者に心の声を届けながら「いただきます」と「ごちそうさま」は口に出して礼を尽くす。ひとりメシのお手本、とも言うべき主人公・井之頭五郎の食事をただただ眺めるのが、すっかり楽しくなってしまった。
気づけば、前よりも早い時間にリビングに移動して、17時45分から始まる再放送に備え、ドラマ序盤で多士済々な取引先とのやり取りまでしっかり楽しみつつ透析の準備をするのが日課となった。ハマって間もなく再放送はシーズン10に到達、再放送としては最後まで辿り着いてしまいましたが、翌週からふたたびシーズン1より再放送が始まり、引き続き楽しめることになった。
が、なまじ続いているがゆえに、ときどきの休みがもどかしくなる。ずっと月曜から木曜に17時45分から18時25分の40分間、1話ずつ再放送されていたのですが、10月からだったか、放送を始めた新ドラマへの引きのためか、先週分を流すようになってしまった。まあ、それはしょうがないのだけど、視聴習慣がついてしまったこちらは、木曜日が物足りなくて仕方ない。
結果、全話を配信しているNETFLIXで、シーズン1から順番に観始めてしまいました。
当初は、直近で再放送され観た回の復習だけにするつもりだったのに、透析の準備中だけでなく暇つぶしにも鑑賞しているうちに、あっという間に現在の再放送を追い抜いてしまった。そうなると開き直り、松江に宿泊していたときも、食事だったりパソコンで書き物をしている傍らだったりにNETFLIXで『孤独のグルメ』を鑑賞するようになってしまった。
ちなみにこれ、実は私と母にとって、体調のバロメーター代わりをも果たしていた。母が体調を崩した際、透析中もずーっとリビングで横になっていたときにも、だんだん立って用事をし始めたときにも、私がダラダラ流しているのを付き合って鑑賞していたのですが、これのお陰で母に食欲があるのを確認出来た。かく言う私も、旅行から帰ったあと、風邪で唸っているあいだはそもそも配信を流す余裕すらなかったわけですが、再放送の方はしっかり観ていたし、起き上がるようになってからもずーっと時間潰しは『孤独のグルメ』で、各地で舌鼓を打つ五郎さんを素直に羨む余裕があったのです。途中、完全に五郎さんに釣られて献立を決めたことも何度かあった。
しっかり観続けた結果、五郎さんの注文のパターンにも、接客のスタンスにも、そして「明日は浅草か」という台詞をわざと何度も入れていることにも気づいた。実際にはシーズン9まで、はっきり浅草として訪ねたのは1回だけ、ただし台東区三ノ輪として紹介しておきながら、実際に移動した付近の様子からすると完全に浅草エリアだったので、劇中では実質2回だけ訪ねてる。また、再放送ではカットされてますが、本放送及び配信には本篇のあとに原作者・久住昌之が劇中で登場したお店を実際に訪ねるコーナーがあり、それが劇中における久住さんの登場シーンにも繋がっていることが解ってきた。そういうお遊びもまた楽しい。
現在、配信での鑑賞は遂にシーズン10に突入。別枠で配信されているスペシャル回はまだそっくり残してあるとはいえ、なんだか名残惜しい。既に配信版で鑑賞したエピソードも再放送で改めて堪能しつつ、未だ発表のないシーズン11を心待ちにしているのでした……鑑賞する前から、撮影における松重豊の負担の重さは噂に聞いているので、そろそろ厳しいんだろうな、とは察しながら。とりあえず私は、配信版をスペシャルまで観終えたら、また頭に戻ってもう1周する気満々です。
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