リンクが熱い。
シリーズ化までは考慮していなかったであろうシーズン1や、どこまで続くか不透明だったと思われる初期ではそこまで多くありませんが、回を重ねるにつれて、モチーフの連続やリンクが生まれていくのも楽しいところです。
代表格は“浅草”と、友人の滝山です。
このドラマ、だらだら観ているとエンドロールのあたりで「明日は浅草か、何食べようかな」という台詞を何回も聞きます。しかし実際には、次の回で浅草を訪れることはない。なにせ劇中、浅草と明言して採り上げられたのはたった1回です――地元を知っている人間からすると、実は“三ノ輪”として紹介されるエピソード、お店の場所はほぼ浅草のはじっこにあたるのですが、広く見てもこの2回しかない。
これの出所は明確で、初出はシーズン1の最終話でした。つまり、シーズン2が実現するかどうか、既に実現に向けて動いていたとしても、初回の舞台も決まっていない段階で、お遊び的に続篇を匂わすための台詞だったと思われます。結果として、シーズン2第1回は神奈川県川崎市で始まり、浅草云々の台詞は空振りに終わってしまった。この経緯そのものが、回を重ねるにつれてお遊びとして定着していったのでしょう。
一方、友人の滝山は、基本五郎さんしかレギュラーのいないこのドラマで唯一頻出する人名です。姿は見せないけれど、やたらと五郎さんに無茶振りをしてくる。五郎さんが握り拳を震わせ、心の声で罵る、本篇中唯一の人間ですから、ある意味とても貴重でもある。
ちなみにこの滝山、姿を見せているのはいまのところただ1回、シーズン4の第9話のみです。ただ、実はその前、シーズン2の第9話にて、電話越しに喋っている。恐らくこのときはまだ、姿を見せることも想定していなかったのでしょう、シーズン4で画面に現れた滝山は村田雄浩が演じていますが、シーズン2の電話の声は、本篇あとの《ぶらっとQUSUMI》のコーナーでナレーションを務めるテレビ東京アナウンサー植草朋樹が担当している。声がまるで違うあたり、滝山を実際に登場させる計画がなかったことは確実と思われる。ちなみにシーズン10の第8話では姪も登場するが、こちらもちゃんと押しが強い。
そんな感じで、意識的に描写を踏襲するかたちで生まれたリンクは、細かな発見の楽しさを加えます。個人的にニヤリとしたのは、芸人のアイデンティティです。シーズン10にて、五郎さんと同じお店の片隅で食事をしており、立ち去る際に五郎さんが心の中で「どこかで見たような……」と呟いていますが、それは有名人だからではなく、ちゃんと本篇中に登場している。あえてその詳細については触れないので、探してみてください。その前提の上で鑑賞していくと、本篇のスタッフが、育ててきた物語の世界観を大事にしていることも感じられて、より好感度が増します。
……ただ、それゆえに惜しまれるのは、配信での構成です。私はNetflixにてまとめて鑑賞したのですが、こちらは通常のシリーズと、初期は不定期に放送され、2017年から毎年のように大晦日に放送されているスペシャルが別々にまとめられている。しかしこれ、絶対に良くない。なぜなら、好評だったという2021年のスペシャルから翌年のスペシャルに、2年連続で起用された、五郎さんの相棒となったミニ・クーパーを巡る経緯が、この構成のせいで解りにくいのです。これは絶対に、2021年スペシャル→シーズン10→2022年スペシャルの順番で観るべき。先にシーズン10から観てしまうと、五郎さんが、観てるこっちからすれば聞いたことのない知り合いから急に譲渡の話を持ち込まれた旧車を嬉々として引き取る、奇妙な人になってしまう……まあ、ファンは多かれ少なかれ、五郎さんのことを“愛すべき奇人”だと思ってる気はするが。
なお、過去のエピソードとのリンクはこの2021年から顕著になっていて、同じ店の再登場や、惜しくも閉じてしまった店舗のその後に触れる場面もあったりする。この、物語として記録された歴史を辿れるのも、10年以上を費やしたシリーズの楽しさです。結果、シリーズ中で五郎さんが都合4杯も注文してる料理もあるぞ。
配信が終わるらしいんだが。
……で、髄まで啜る勢いで鑑賞している『孤独のグルメ』ですが、私が利用しているNetflixでの配信は、12月28日で終了するようです。
残念、と思った次の瞬間、なんとなく予感がしたのです。
なんで12月28日に終わるの? その日に、何かあるの?
配信の契約がいちど終了する時期、という可能性もありますし、Netflix側で作品の入れ換えに設定した日に過ぎない可能性もある。しかし、ついこのあいだファンになったばかりの私としては、ある可能性に期待してしまいます。
その前後から、メインの配信元であるU-NEXTに誘導したいのだとしたら? 積極的に配信を売り出せる何かが、12月28日前後にあるのでは?
……もう5年も続けていて、定着しつつあるスペシャルを、6年目もちゃんと用意しているのでは?
というわけで私はいま、大晦日に向けてワクワクしております。違う番組やってたら凹んで、紅白も何もかも無視して、Netflix以外の配信を利用して鑑賞してしまいそうなくらい。そのためだけに、だいぶ昔に切ったU-NEXTと再契約してしまいそうなくらいに。
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