原題:“The Equalizer 3” / 原作:マイケル・スローン、リチャード・リンドハイム『ザ・シークレット・ハンター』 / 監督:アントワーン・フークア / 脚本&共同製作:リチャード・ウェンク / 製作:トッド・ブラック、ジェイソン・ブルメンタル、デンゼル・ワシントン、アントワーン・フークア、スティーヴ・ティッシュ、クレイトン・タウンゼント、アレックス・シスキン、トニー・エルドリッジ、マイケル・スローン / 製作総指揮:デヴィッド・ブルームフィールド、タラク・ベン・アマール、アンディ・ミッチェル / 撮影監督:ロバート・リチャードソン / プロダクション・デザイナー:ナオミ・ショーハン / 編集:コンラッド・バフ / 衣装:キアラ・バルドゥッチ・エミリアノ / キャスティング:バーバラ・ジョルダニ、リンゼイ・グラハム・アーノーヌ、フランセスコ・ヴェドヴァリ、メアリー・ヴェルニュー / 音楽:マーセロ・ザーヴォス / 出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、エウジェニオ・マストランドレア、デヴィッド・デンマン、ガイア・スコデッラーロ、レモ・ジローネ、アンドレア・スカルドゥッツィオ、アンドレア・ドデーロ、ダニエレ・ベローネ、ディア・ランザーロ、ソニア・ベン・アマル、ブルーノ・ビロッタ、メリッサ・レオ、ビル・プルマン / 配給&映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment
2024年日本作品 / 上映時間:1時間49分 / 日本語字幕:風間綾平 / R15+
2023年10月6日日本公開
2019年8月7日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video|Blu-ray Disc|4K ULTRA HD + Blu-rayセット]
公式サイト : https://www.equalizer.jp/
ムービープラスにて初見(2025/5/16)
[粗筋]
かつて国防情報局=DIAの特殊工作員として辣腕を振るい、いまは現役を退いたロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、その情報網と高い戦闘能力を駆使し、善良な人々を苦しめる悪党を密かに始末し、救済している。
海を渡り、はるばるイタリアの醸造所に侵入したロバートは、地元のマフィアを一掃する。だが、目的を果たしその場を離れようとしたところで、不意を突かれ銃弾を浴びてしまった。さすがに死を覚悟したロバートだったが、気づいたときには、病院のベッドに横たわっていた。
ナポリ近郊の町・アルタモンテの善良な憲兵ジオ・ボヌッチ(エウジェニオ・マストランドレア)が、密かに町の医師に託してくれたのだった。明らかに犯罪絡みで負傷したロバートを、医師のエンゾ・アリシオ(レモ・ジローネ)は詮索することなく治療し、癒えるまでのあいだ、滞在することも快く許した。
滞在するうちにマッコールは町の人々の善良さと、古い町並みに好感を抱くようになった。町に流通する、不審な薬物について、CIAに匿名で通報する一方、マッコールは町の人々に馴染み、隣人として受け入れられていく。
一方、アルタモンテには病根があった。ミラノに拠点を構える犯罪組織が、町に高級リゾートを建設する計画を立てており、警察を買収、市井の人々に対しても圧力をかけている。組織のボス、ヴィンセント・クアランタ(アンドレア・スカルドゥッツィオ)からアルタモンテでの引き締めを命じられたヴィンセントの弟マルコ(アンドレア・ドデーロ)は、みかじめ料を固辞した魚屋に火を放ち、見せしめにする。
ジアはそれが組織の犯行であることを察して警察に報告した。だが、警察は既に組織の息がかかっており、マルコと配下達はジアの家に侵入し、異変を察して帰ってきたジアをリンチにかける。
一方、マッコールのもとには、CIAの捜査官エマ・コリンズ(ダコタ・ファニング)が訪ねてきた。匿名の通報者がマッコールであったことを知ったエマは、彼の真意を探ろうとする――
[感想]
テレビドラマシリーズ『ザ・シークレット・ハンター』を、デンゼル・ワシントンをメインキャラクターに、現代を舞台としてリメイクしたシリーズの第3作である。
3作目にして初めてアメリカ、マサチューセッツ州から離れ、イタリアのシチリア、ナポリ、ローマを舞台としている。しかも冒頭からマッコールが危機的状況に陥る、という、この映画シリーズではなかった展開だ。
とはいえ、そこからはやはり基本を抑えている。穏やかに生活し、近隣の善良な人々の信頼を獲得していくが、やがて親しい人々や地域にとって災いをもたらす勢力と対立していく。そして、鮮やかな手腕で敵を圧倒していく。意図してのことだが、3作目にして良くも悪くもマンネリズムが完成している。
しかし、舞台を新たにしたこともそうだが、細かいシチュエーションや、物語の仕掛けにおいては、きちんと細かな工夫が施されている。
ストーリー面の印象を強める仕掛けがされているが、詳細は伏せておこう。決してメインを張るインパクトではないが、スパイスとしては効いている。
だがやはり本篇の見せ場は、マッコールの圧倒的な戦闘力である。今回、人目のある場面が多いこともあり、プロローグのあとはすぐに派手な立ち回りがないが、その分、悪党の非道ぶりをたっぷりと見せつける。途中でも、マッコールの経験の豊かさと戦闘能力の高さが裏打ちする見せ場はあるが、徹底的に鬱憤を溜め込んだあとの“始末”のカタルシスは極上だ。
ただし、誰もが受け入れられる類の作品でないこともこれまで通りだ。序盤、悪党の傍若無人な振る舞いもかなり強烈で観ているのが辛いが、マッコールによる反撃もだいぶ過激だ。多くは瞬殺されるので苦しむ暇もないが、その行為が悪質だった者ほど、トドメを刺す前に凄まじい苦痛を与える。序盤での悪逆非道が観客に充分なストレスをもたらすので、鮮やかで徹底した反撃は痛快だが、そもそも暴力描写を好まない人には間違いなく向かない――そんなことは、旧作にちょっとで一目瞭然だし、仮に本篇だけ観たとしても冒頭10分で解る野で、言わずもがなではあるが。
定住はしないが、その地に一定期間は留まり、温厚な人柄で周囲の人々と良好な関係を築く。そこに踏み込んできた悪意、害意に対して敏感で、機を窺い、二度と善良な友人たちを傷つけぬよう“始末”する。そのフォーマットを堅持しながら、可能な範囲での変化や、観客の心を動かす趣向を凝らす。意図したマンネリズムと、それを崩すことなく異なる味付けを施した本篇は、姿勢のブレていない優秀なエンタテインメント作品だ。合わない人もいるだろうし、賞レースには上がることもないだろうけれど、そういう作品も必要なのだ。言ってみれば本篇そのものが、充分すぎるキャリアを積んだ主演俳優と監督による職人仕事なのである。
邦題では“FINAL”と入れてしまったこの作品だが、前作の感想で触れたように、別作品のキャンペーンにおいてデンゼル・ワシントンが第4作、第5作の計画があることを明言している。
まあ、明言したところで、思わぬことで躓いてそれっきり、という展開も珍しくないが、少なくともデンゼル・ワシントンはこの作品が多くの観客を喜ばせていることを充分に承知しており、しかもこのシリーズは彼が主演だけでなく、作品の方向性を決める製作にも加わっている。これを書いている2025年11月時点では具体的な公開予定も公表はされていないが、信じて待ってもいいと思う。
以下、余談。
実はこのシリーズ、私が観た順番は、2→1→3だった。テレビを点けておきたいけどこれといって観るものがない、というときに、興味があったこのシリーズをムービープラスで放送していたので、時間の合った第2作を、流しておく程度のつもりで観始めたら、どっぷりとハマってしまった。
ただ、ちゃんと観るなら順番通りにしたいし、全作CSで放送されているから、放送日をチェックすれば順番通りに鑑賞し直せる。幸いに、配信もふんだんに行われていたため、1作、2作を順番にアップすることが出来た。
いざ3作目となる本篇の感想を仕上げようとしたところで、多忙になってしまい、感想の本文はだいたい書き上がったものの粗筋を書けず、随分と間が空いてしまった。
そうして、初めてきちんと本篇を通して鑑賞したあと、いったい何回、本篇を観ただろうか。
復習がしたかった、わけではない。粗筋を書く前に観直すつもりはあったが、そういうことではない。
何故か、「他に観る番組がない」というタイミングに、CSでやたらとこのシリーズがかかっている。しかもどういうわけか、第3作である本篇なのだ。
恐らく、ちょうどこの感想を寝かせている時期に、3作すぺての放送権があったために、3作連続で上映することが多かったのだろう。夕方くらいから連続して流すと、ちょうど21時くらいに本篇が始まる。そのせいで私は、3部作でも本篇をとりわけ繰り返し鑑賞する羽目になった。
しかも、これをアップする直前の数回は、判を捺したように、憲兵の家族が酷い目に遭う場面から観始めている。私が1時間のテレビ番組を観終わり、手持ち無沙汰になって、他に合わせるチャンネルを探すとこの映画が既に始まっていて、もう知っている映画だから適当に眺めていてもいいし、ここからマッコールの見せ場であることも充分に承知しているので、ついついチャンネルを合わせてしまうのである。
あまりにも繰り返し鑑賞してしまったお陰で、粗筋はほぼ記憶してしまった。漠然と覚えている固有名詞を確認したりはしたが、本項の粗筋は、だから直前に映画を観直すことなく書けている。
余談がやけに長くなったが、いちどその面白さを把握すると、何度でも観ていられるのが本篇である。娯楽映画として間違いなく優れているし、続篇が制作されるのは当然のことなのだろう。
関連作品:
『イコライザー(2014)』/『』/『イコライザー2』
『トレーニング・デイ』/『ライトニング・イン・ア・ボトル ~ラジオシティ・ミュージック・ホール 奇蹟の一夜~』/『キング・アーサー(2004)』/『クロッシング(2009)』/『THE GUILTY/ギルティ(2021)』/『メカニック』/『エクスペンダブルズ2』
『2ガンズ』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』/『ビッグ・フィッシュ』/『フォードvsフェラーリ』/『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』/『ツーリスト』/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』/『THE JUON―呪怨―』
『太陽がいっぱい』/『ゴッドファーザー』/『RED/レッド』/『キラー・エリート』



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