英題:“The Fate of the Furious / Fast & Furious 8” / キャラクター原案:ゲイリー・スコット・トンプソン / 監督:F・ゲイリー・グレイ / 脚本:クリス・モーガン / 製作:ヴィン・ディーゼル、マイケル・フットレル、クリス・モーガン、ニヘル・H・モーリッツ / 製作総指揮:アマンダ・ルイス、サマンサ・ヴィンセント / 共同製作:クリフ・ラニング / 撮影監督:スティーブン・F・ウィンドン / プロダクション・デザイナー:ビル・ブルゼスキー / 編集:ポール・ルベル、クリスチャン・ワグナー / 衣装:サーニャ・ミルコヴィック・ヘイズ、マリアンヌ・スチュワート / キャスティング:クリストファー・グレイ、ジェフリー・カランツァ、ジョン・パプシデラ / 音楽:ブライアン・タイラー / 出演:ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ナタリー・エマニュエル、エルサ・パタキー、カート・ラッセル、シャーリーズ・セロン、スコット・イーストウッド / オリジナル・フィルム/ワン・レース・フィルムズ製作 / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:NBC Universal Entertainment Japan
2017年アメリカ作品 / 上映時間:2時間16分 / 日本語字幕:岡田壯平
2017年4月28日日本公開
2018年5月9日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|DVD + Blu-ray セット:amazon|Blu-ray オクタロジー SET:amazon]
公式サイト : http://wildspeed-official.jp/
TOHOシネマズ新宿にて初見(2017/4/28)
[粗筋]
ようやくお尋ね者でなくなったドム(ヴィン・ディーゼル)とレティ(ミシェル・ロドリゲス)は、キューバのハバナで遅いハネムーンを満喫していた。
だが、ドムの前に突如、ひとりの女が現れる。サイファー(シャーリーズ・セロン)というその女は、ある事実を突きつけて、ドムに“協力”を求めてきた。
他方、外光保安部の捜査官であるホブス(ドウェイン・ジョンソン)を、セイフの人間が訊ねてきた。軍が掠奪され、かねてから行方を追っていた電磁パルス兵器がベルリンで発見されたという。休暇中だったが、やむなくホブスは任務に就く。
ホブスの依頼により、ドムたち“ファミリー”が助力に入った。豪快な作戦で見事に兵器を脱炭した――かに思われたとき、“ファミリー”の誰しもが想定しなかった事態が起きる。
ドムが突如として裏切り、ホブスから兵器を奪って去ったのだ。
拘束され、重罪に問われたホブスはすぐさま刑務所に収容される。ホブスが押し込まれた独房は、奇しくも先の事件でドムやホブスたちが対峙した最強の敵デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)の真向かいだった。
ほどなく刑務所内で騒動が勃発する。何故かすべての房の扉が開き、囚人たちの暴動が始まった。逃走しようとするショウをすぐにホブスは追ったが、そこにミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)が現れる。
表沙汰に出来ない特殊任務を預かるこの男が、刑務所を混乱に陥れてまでホブス、そしてショウを放ったのは、サイファーのある計画を阻止するためだった。同様に、レティたちもこの作戦のために召集される。
だが、“ファミリー”でも屈指の能力を持つドムを掌中に収めたサイファーを、果たして阻止することが出来るのか……?
[感想]
恐らくはスタッフにとってもキャストにとっても、最も大きな壁と闘うことを余儀なくされた作品だろう。
前作の経緯はあまりに神憑りすぎた。第1作から出演するメインキャスト、ポール・ウォーカーが撮影半ばにして亡くなる、という悲劇に見舞われながら、ポールの兄弟を代役に起用して撮影を完遂、劇中でポールに対するリスペクトを最大限に捧げながら、それらを作品のドラマとも結合させ、これまでのシリーズを追ってきた観客にとって、もはやフィクションの域を超えた感動作にまで昇華させてしまった。そうした背景を除いても、ホラー映画で技術を培ったジェームズ・ワン監督のサスペンス感に優れた演出、カーアクションの限界を突破するアクションシーンの数々のクオリティによって、アクション映画史に残る傑作の水準にまで到達してしまった。
その高評価からすれば、続篇が製作されるのは当然ではあったが、なまじ高いハードルを乗り越えてしまったあとだからこそ、なおさらにプレッシャーは大きかったはずだ。
だから、そういう意味では、間違いなく本篇のスタッフ・キャストは最大限の努力をし、かなりのレベルでハードルを乗り越えた、と言っていいと思う。
作を追うごとに、とりわけヴィン・ディーゼルが戻ってきた第4作以降、毎回のようにカーアクションの限界を超える趣向を凝らして観客を楽しませてきたこのシリーズだが、ここに至っても未だその精神は健在だ。
何よりも特筆すべきは、ドムの寝返り、という衝撃的なトピックだ。もともと第1作では“容疑者”であり、人情に厚くもその振る舞いは基本的にアウトロー寄りだった。“ファミリー”への配慮を知りつつも、そうした本質があるだけに、あっても不思議のない筋書きであり、だからこそ、驚きとともに物語に緊張をもたらしている。
アクション面ではふたつ、ド派手な趣向が用意されている。予告篇でもちらりと顔を覗かせていたが、それでも何も知らずに観た方がインパクトがあるはずなので、細かくは触れない。前作の趣向もたいがい禁じ手に等しかったが、今回もある意味ではカースタントの極北に近いアイディアで圧倒する。現実にこんなことが可能なのか、という疑問をブッ飛ばすほどの迫力は、大スクリーンで鑑賞する意義があるし、アクション好きなら一見の価値がある。
そしてドラマの面でも、これまでのシリーズで描いてきた要素、扱ってきた主題をさらに追求するべく真摯に練りこまれている。ドムの“裏切り”にも、これまでのシリーズでの出来事に基づく事情があるし、終盤の逆転劇もこれまでのシリーズが土台にあればこそ、だ。翻って、前作以上にシリーズに親しんでいなければ全体にピンと来ない趣向が多く、終盤の展開もだいぶ御都合主義的に映るだろう――実際、シリーズで積み上げた歴史があるとは言い条、かなり都合よく話が運びがちなので、アクションのド派手さが主体の作品ながら、そういう意味では大味な印象も強い。
しかし、そもそもアクション主体でここまでシリーズを語り継いできたこと自体が驚異的なのだ。いささか御都合主義的な展開も、それを裏打ちするシリーズの蓄積があるからこそであり、それを利用するのはシリーズとしての特権だろう。使える武器を遺憾なく活かしている、という意味では、やはり充分にいい仕事をしている。
個人的には、前作において終始、最強の敵として存在感を発揮したジェイソン・ステイサムに鮮やかな見せ場を用意してくれたことが嬉しい。これまで様々なトラブルを生き抜いてきた主要メンバーを圧倒するレベルの悪役に相応しいスキルと存在感を備えた俳優として最高の活躍を示したが、やはりこの人は、現れる敵を次々に薙ぎ倒していくほうが似合う。特に本篇において彼が最も気を吐くシーンは、いっそ愛嬌すら感じさせる趣向が盛り込まれており、ステイサムの担当したアクション・シーンでもベストのひとつに食い込む出来映えだと思う。ついでに、彼が演じるデッカードの周辺に、大変贅沢なゲストが出てくるのも憎い。
隙のない大傑作、とは言えないが、これまでのシリーズ作品を愛してきたファンの期待には充分応えた仕上がりだろう。前作同様に世界各国で大ヒットを遂げたことで、現在捜査官ホブスと犯罪者ショウが組むスピンオフが撮影されており、それを挟んで第9作、そして現時点では完結篇となる可能性が示唆されている第10作が公開される予定となっている。最後までパワーダウンすることなく、走りきることを願いたいところだが――。
関連作品:
『ワイルド・スピードMAX』/『ワイルド・スピード MEGA MAX』/『ワイルド・スピード EURO MISSION』/『ワイルド・スピード SKY MISSION』
『ミニミニ大作戦』/『Be Cool/ビー・クール』/『完全なる報復』
『リディック:ギャラクシー・バトル』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』/『トリプルX:再起動』/『バイオハザードV:リトリビューション』/『マチェーテ・キルズ』/『ゲット スマート』/『ワイルドカード』/『メカニック:ワールドミッション』/『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』/『GAMER』/『ジャーロ』/『デス・プルーフ in グラインドハウス』/『プロメテウス』/『スノーホワイト』/『フューリー』/『RED/レッド リターンズ』/『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』
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