原題:“Ghostbusters II” / 監督&製作:アイヴァン・ライトマン / 脚本:ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス / 製作総指揮:バーニー・ブリルスタイン、ジョー・メジャック、マイケル・C・グロス / 撮影監督:マイケル・チャップマン / 美術:ボー・ウェルチ / 編集:シェルドン・カーン、ドン・キャンバーン / 衣装:グロリア・グレシャム / 特殊効果:デニス・ミューレン、インダストリアル・ライト&マジック / 視覚効果スーパーヴァイザー:ティペット・スタジオ / キャスティング:マイケル・チニック / 音楽:ランディ・エデルマン / 主題歌:ボビー・ブラウン / 出演:ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、シガーニー・ウィーヴァー、ハロルド・ライミス、アーニー・ハドソン、リック・モラニス、アニー・ポッツ、ピーター・マクニコル、デヴィッド・マーグリース、カート・フラー、ヴィルヘルム・フォン・ホンブルグ、チーチ・マリン、ブライアン・ドイル=マーレイ、ベン・スタイン、フィリップ・ベイカー・ホール、ボビー・ブラウン、ジェイソン・ライトマン / 声の出演:マックス・フォン・シドー / 配給:コロンビア映画 / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment
1989年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:?
1989年11月25日日本公開
2016年8月3日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video|Blu-ray Disc|4K ULTRA HD + Blu-ray セット]
Blu-ray Discにて初見(2018/01/22)
[粗筋]
ニューヨークを大混乱に陥れたマシュマロ・マンの事件から5年が過ぎた。
あの1件までは引く手あまたの大活躍をしていたゴーストバスターズの面々だったが、事件の際に起きたビルの爆発などの責任を問われたうえに、幽霊に関するトラブルがぱったりと収まってしまい、ゴーストバスターズは事実上の開店休業状態となっている。イゴン・スペングラー博士(ハロルド・ライミス)は大学の研究室に戻り、ピーター・ヴェンクマン博士(ビル・マーレイ)は超能力専門のテレビ番組のMCとなって現場を離れた。残されたレイモンド・スタンツ博士(ダン・エイクロイド)とウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)は施設のイベントに呼ばれればバスターズの装備で赴くが、もはや誰にも歓迎されていなかった。
先の事件でピーターと愛し合うようになったデイナ・バレット(シガーニー・ウィーヴァー)だったが、その後別の男と結婚、出産したものの、相手が海外の交響楽団に招かれたため、ひとりで幼い息子オスカーを育てている。ある日、オスカーを乗せた乳母車が突如として暴走、危うく大惨事を引き起こしかけた。ゴーストの影響を疑ったデイナは、渋々ながらピーターたちゴーストバスターズに調査を依頼する。
ピーターたちは、デイナのアパートのほど近い場所からゴーストの反応を検知、勝手に道路に穴を掘って調査した。穴を降りたレイモンドは、使われなくなった地下トンネルがスライムの川になっていることを発見、サンプルを採取するも、地上で起きたトラブルがきっかけで送電線を破損し、ニューヨークに大規模な停電を引き起こしてしまう。
一方、デイナが生活の糧を得るために働いている美術館で、彼女の上司として絵画修復の監督をしているヤニシュ・ポーハ博士(ピーター・マクニコル)は、修復中だったヴィーゴ大公の肖像画から、その亡霊が蘇ってくる瞬間に遭遇する。16世紀に“魔術師にして狂人”と恐れられたヴィーゴ大公は復活の機会を窺っており、そのためには幼子の肉体が必要だという。亡霊はヤニシュの身体を乗っ取って、行動を起こした。
停電騒ぎにまつわる様々な罪で裁判にかけられたピーターたちは、危うく刑務所送りにされかけたが、証拠として提出されたスライムからゴーストが出現、パニック状態に陥った法廷を救ったことでお咎めなしとされた。これを機にニューヨーク各地でゴーストが出没するようになり、ゴーストバスターズは大手を振って営業を再開する。
実働隊の一員だったウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)、会計士のルイス・タリー(リック・モラニス)、受付嬢のジャニーン・メルニッツ(アニー・ポッツ)も復帰、騒々しい毎日が戻ってきた。だがそんななか、ヴィーゴ大公の魔手は着実にデイナとその息子に忍び寄っていた――
[感想]
1984年に製作され、80年代を象徴する一大ムーブメントをも巻き起こした大ヒット作の、5年を経て製作された続篇である。劇中でもしっかり5年が経過しているのが律儀だ。
如何せん前作が猛烈に支持されただけに、本篇は評価的にも興行的にもいまいち、という印象があるが、実際のところ決して不出来ではない。前作の世界観とその魅力を明確に踏襲し、確実に楽しませる出来になっている。
前作の“事件”を背景として活用することで、主要キャラクターたちを巡る環境のアップダウンを前作に近いかたちに整えているのがなかなかに巧みだ。前作クライマックスでの活躍が却ってアダとなり、ゴーストバスターズとしての仕事を失い、ピーターは恋仲だったデイナとも別れている、と人生下降線のただなかにあるが、ゴーストの復活によって一気に盛り返す。そして、さんざっぱら調子に乗ったところで、街全体を巻き込む非常事態と対決せねばならなくなる。動機や発展に関連するモチーフは異なれど、物語の起伏はほぼ一緒だ。
代わり映えしない、という批判も出来そうだが、この場合、見た目のスケールアップばかりで続篇としての魅力を大きく見せるのではなく、5年の月日を経ても面白さの根本を守っている点をこそ評価すべきだと思う。ヒット作の続篇は、やもすると増大した予算に振り回され、いたずらに撮影規模が大きくなって物語としての面白さを制御出来なくなる傾向にあるが、本篇は随所で贅沢をしつつも、その過剰さをあまり意識させない。
唯一、続篇ならではの贅沢さ、規模の大きさを痛感させるのはクライマックスだ。前作も終盤はニューヨーク全体を巻き込んでの大騒動で、本篇でもその本質はやはり一貫しているが、描写が色んな意味でいちいちデカい。街全体での騒動の拡散ぶり、窮地から脱したゴーストバスターズに対する市民の歓迎っぷり、挙句、最終兵器としてゴーストバスターズが持ち出すものは、大ヒット作の続篇、という位置づけならではの趣向だろう――惜しむらくは、見せ場としてはド派手だが、終わったあとで「あれって意味はあったっけ?」とやや居心地の悪さを感じさせる点だ。成り行きを辿っていくと、いちおうは効果もあった、と解釈は出来るが、それでも過剰さのほうを強く感じる。
しかしそれも、本篇が辻褄合わせ以上に、ちょっとの緊張感とふんだんな擽り、そして憂さを晴らすほどの爽快感を観客に与えることを何よりも重視したからだろう。細かい粗を指摘したらキリがないが、どれほどの窮地でも笑いを誘う展開を用意し、最後まで楽しませようとするエンターテイナー精神は天晴だ。
大人になってから冷静に鑑賞すると、なかなかに際どいジョーク、露骨な場面もあって、厳格な人からすれば子供に見せたくない作品だろう。が、そういう潔癖さだけでは成り立たない楽しさ、面白さを供給しながら、より多くの層にアピールしたからこそ、前作は80年代を代表するカルチャーになった。その価値を損ねなかったからこそ、更なる続篇が期待され、違うかたちではあるが、21世紀になって復活することも出来たのだろう。
その気になれば、間隔を置かずに第3弾も製作されそうな勢いだったが、やはりあまりにも大きくなりすぎたシリーズは事情が複雑になってくるようで、計画自体は段階的に進行、21世紀になる前後にはしばしばその進展が報じられることもあったが、紆余曲折の挙句、脚本と出演を兼ねたハロルド・ライミスの逝去により、本篇までの体裁を踏襲したかも知れない第3作は消滅してしまった。
その構想はかたちを変え、ポール・フェイグ監督によるリブートとして結実した。バスターズのメンバーを女性に置き換えるなど、オリジナルの精神を巧みにアップデートした快作だったが、2022年現在、こちらのヴァージョンは1作きりになっている。しかし、まだこのフランチャイズが魅力を留めていることを証明したこのリブート版を経て、2021年には本篇にもちらっと出演している監督の実子ジェイソン・ライトマンが、本篇を継承する正統的続篇を発表した。
いずれも、第1作とは色々な点で趣を違えている。しかし、そこに至ったのは、《ゴーストバスターズ》の基本精神を固着させた本篇が、フランチャイズとしての価値を証明したからだ、と思う。ある意味では守りに入った、堅実な作り方だったが、本篇がなければ或いは、これらの展開もなかったかも知れない。
関連作品:
『ゴーストバスターズ(1984)』
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』/『ブルース・ブラザース』/『エイリアン2 完全版』/『恋愛小説家』/『ストリート・オブ・ファイヤー』/『バトルシップ』/『オール・ザット・ジャズ』/『ザ・ファン』/『羊たちの沈黙』/『デスペラード』/『ドッグヴィル』/『ネバーセイ・ネバーアゲイン』
『市民ケーン』/『エレファント・マン 4K修復版』/『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』/『ゴースト/ニューヨークの幻』/『13ゴースト』/『ゴーストシップ』/『ステキな金縛り』/『パラノーマン ブライス・ホローの謎』/『貞子vs伽椰子』
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