10月5日、松江怪談談義を堪能したあとの話。
松江を訪れたとき、ほぼ毎回食べに行くラーメン店があります。この日も、イベントの後に、まあまあな距離を歩いて向かった。
が、生憎、スープ切れにより既に閉店。うわ今夜の食事どうしよう、と一瞬焦ったものの、すぐに次の候補を思いついた。
松江には、旧日本銀行松江支店の建物を流用した《カラコロ工房》という施設がある。内部を細かなブロックに分け、飲食店や雑貨店が入っているのですが、先頃改装が行われるのに際し、入居するテナントが大きく入れ替わった。施設全体のリニューアルオープンに少し先駆け、私が松江を訪れる少し前の10月2日に食のエリアが営業を始めている。そうして新たに入った店舗の中に、別の場所で営業していた人気ラーメン店が、そちらを閉めて移転してきたのです。旅行の前にあれこれ情報を集めていたときに知って、タイミングが合えば訪れるつもりでした。しかも、閉店が早い松江としては珍しく、22時半ラストオーダー、23時閉店というのも、困ったときには有り難い。
このときの松江滞在は、現地入りが21時を過ぎる公算で、到着してからの食事が悩みどころでした。当てにしていたテイクアウトは既にサービスを終了していたため、松江に着いたあと即、ここに食べに来ることも考えていたのです。このときは結局コンビニで済ませましたが、2日目のお目当ての店で営業終了の文字を見た瞬間、ふたたび頭に浮かんできて、急遽初訪問を決めました。
カラコロ工房の正式なリニューアルオープンは10月12日で、時期としてはまだプレオープン中。しかも、食のエリア以外はほぼ閉まっている。そのため、どうやって入るのか、に若干まごつきましたが、何のことはない、私が移動したルートが悪かった。階段を上がりデッキに入るルートなら、通りからすぐに解るのです。なまじ土地勘が出来てしまったのが災いした。
いちおう他のお店を眺めて悩みつつ、結局ゴイケヤラーメンを選択するも、店内は満席、カップルの先客もいたため少々待ちました。しかしもう他の店に行く気にもなれず、5分ほどでようやく入店。
注文したのは、一番人気だというエビシオラーメン、トッピングは毎度おなじみの味玉です。
ひとつだけ残念だったのは、注文から提供まで、若干待った印象があること。タイミング的に、用意する先客の注文が立て込んでいた、と思われますが、つけ麺のようにゆで時間を要するタイプではないはずなので、ちょっと意外。
琥珀がかったスープに載せられている具材はローストチャーシューに水菜、太めのメンマが1本、そから100円玉くらいの円盤状のなにか……なんだこれ。
とにかく一口スープを啜る都、しっかりと海老風味。私が好んで食べる海老系のラーメンは味噌ベースが多いのですが、これは塩だれなので、甘海老の甘い風味が強めに押し寄せてきて、しかもスッキリとした味わい。スープの色味が一部異なっているのは海老オイルを垂らしてあるからで、このあたりはまた更に海老のパンチが増す。1杯のラーメンなのに、ちゃんと変化がつくようになってます。一見シンプルだけど工夫がある。
麺は中細くらいのストレートで、やや柔らかめに茹でてある。麺の硬さは人によって好みの分かれるところでしょうが、スッキリとしたスープは軟らかめの方が染みこむので、ちょうどいいと思う。しかも場所によって海老の濃さも異なるので、飽きが来ません。
絡んでくる水菜がフレッシュな歯ごたえと仄かな苦みを添え、ローストチャーシューのムチムチとした肉の風味がまたいいアクセントです。唯一、未だに正体が解らない円盤状のものは……たぶんイカか貝柱をスライスしたものだと思うんですが、海老とは違う海鮮の風味、また違う食感をプラスしていて、これも良い変化。
トッピングしてもらった味玉は、黄身にとろみのある状態。そのまんま箸で割ると黄身がスープに溶け出す位。あんまりスープに混ざりすぎるのは好みではないので、レンゲの上で割り、ちょっとだけスープを溶いて食べましたが、海老の出汁とのバランスはこれも良好。完全に浸して、スープにコクをつけて食べるのもありだと思う。
そしてすべてがさっぱりとした風味で、割と疲れ気味だった胃腸にとても優しい。お酒のシメにも合うでしょう。私はこの日、都合12km歩いてだいぶ栄養不足に陥っていたせいもあるのでしょうが、思わずスープ1滴残さず食べきってしまいました。
ゴイケヤラーメン店内のショーケースに陳列されたソフビとか。上のモニターには特撮番組流れてます。
ちなみにこのお店、内装がだいぶ個性的です。ロゴがウルトラマンみたいだな、と思ってたら、店主がそういう趣味なのか、店内にショーケースがあって、無数のソフビやフィギュアが陳列されている。上のモニターでは、音を絞って延々と特撮ドラマを流してます。
店内に流れている音楽はず~っとローリング・ストーンズ。有線なのかな、と思ってたら、よく見れば店の奥にレコードプレーヤーが置いてあり、並べてあるレコードから客が自由にかけていいらしい。そして、プレーヤーの後ろには、ブルース・リーのパネル。
味の優しさ、バランスの良さに対して、やたらと店内は個性強めですが、お店の方の対応もいい。個人的には、その居心地まで含めて、非常に気に入りました。松江旅行のとき、可能な限り機会を作って訪ねたくなる1軒になりそうです。勧めに応じてスタンプカードも作っちゃったし……このペースで松江を訪れていては、貯まるまで数年がかりになるだろうけど。
ゴイケヤラーメン店の奥に展示されたブルース・リー。かかっているレコードは変えてもいいっぽい。
※2027/10/09現在、Google Mapにはまだ登録されていないため、テナントとして入っているカラコロ工房の地図を掲載しました。
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