原題:“Justice League” / 監督:ザック・スナイダー、ジョス・ウェドン / 原案:クリス・テリオ、ザック・スナイダー / 脚本:クリス・テリオ、ジョス・ウェドン / 製作:ジョン・バーグ、ジェフ・ジョンズ、チャールズ・ローヴェン、デボラ・スナイダー / 製作総指揮:ベン・アフレック、マディソン・アインリー、ウェズリー・コーラー、ダニエル・S・カミンスキー、カート・カネモト、ベンジャミン・メルニカー、ジム・ロウ、クリス・テリオ、マイケル・E・ウスラン / 撮影監督:ファビアン・ワグナー / プロダクション・デザイナー:パトリック・タトポロス / 編集:デイヴィッド・ブレナー、リチャード・ピアソン、マーティン・ウォルシュ / 衣装:マイケル・ウィルキンソン / キャスティング:クリスティ・カールソン、ローラ・ケネディ、ケイト・リングセル / 音楽:ダニー・エルフマン / 出演:ベン・アフレック、ガル・ガドット、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、エズラ・ミラー、ジェイソン・モモア、レイ・フィッシャー、ジェレミー・アイアンズ、ダイアン・レイン、コニー・ニールセン、J・K・シモンズ、キアラン・ハインズ、アンバー・ハード、ジョー・モートン、リサ・ローヴェン・コンシル / 配給&映像ソフト発売元:Warner Bros.
2017年アメリカ作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:アンゼたかし
2017年11月23日日本公開
2019年7月2日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|DVD Video(期間限定パッケージ):amazon|Blu-ray Disc:amazon|Blu-ray Disc(期間限定パッケージ):amazon|4K ULTRA HD &ブルーレイセット:amazon]
公式サイト : http://wwws.warnerbros.co.jp/justiceleaguejp/
WOWOW放送版(録画)にて初見(2019/2/15)
[粗筋]
スーパーマン(ヘンリー・カヴィル)が去ってのち、世界には暗い影が落ちていた。羽根を持つ謎の化け物が跳梁し、宇宙からの脅威によって地球が滅ぼされる、と信じた反動組織が大規模なテロを企てる事件が発生した。
バットマンとして郷里ゴッサムの夜を守り続けるブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は、スーパーマンが消えた際に構想した、ヒーローたちによる同盟の立ち上げに着手する。
同じ頃、ワンダーウーマンことダイアナ(ガル・ガドット)もまた、危険を察知していた。彼女の郷里である孤島のアマゾンに封印されていた“箱”が突如として活動を始め、召還されたステッペンウルフによって奪われたのである。アマゾンの一族が人類に向けて危機を知らせるメッセージを受け取ったダイアナはブルースに合流すると、かねてから動向を追っていた候補者たちへの接触を試みる。
ブルースはまず、海に面した小さな村で暮らすアーサー・カリー(ジェイソン・モモア)を訪ねた。彼は海中に沈んだ王国アトランティスの王子であり、海中を自在に游泳し、海の生物と意志を通じ味方にする力を持つ。世界を救うために力を貸して欲しい、と請うウェインに、しかし指示や命令を厭うアーサーは首を縦に振らなかった。
一方、ダイアナはヴィクター・ストーン(レイ・フィッシャー)という男に接触しようとしていた。事故によって絶命するが、父であるストーン博士によって機械を埋め込まれ復活した。しかし、正体不明の技術によって、本人の制御を超えて特殊な能力を身に付けていく自身を恐怖し、家に引き籠もっている。ダイアナの求めに応じて面会はしたが、同盟に加わることは拒絶した。
けっきょく、新たに同盟に加わったのは、あらゆる生物の限界を超える高速で行動出来るフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)のみ。だが、既に事態は動きつつあった。ゴッサムのゴードン警察本部長(J・K・シモンズ)によれば、先の事件で襲来した宇宙船の調査をしていた研究者が一斉に誘拐されているという。
ストーン博士すら拉致されており、いちどは提案を拒んだヴィクターも加わって、ブルースは被害者達が囚われたと見られる海底トンネルへと赴く――
[感想]
マーヴェルと双璧を為すアメコミ・レーベル“DCコミック”が『アベンジャーズ』第1作から遅れること5年、ようやく発表させたオールスター作品である。
DCにはアメコミのスーパーヒーローの代名詞とも言える存在であるスーパーマンと、知名度が極めて高く映画としての成功作も多いバットマンがいる。マーヴェルと同様に、このふたりを含むヒーローが結集した作品が待ち望まれるのは自然な流れだった。
だが、率直に言って、順番があまり良くなかった。本篇の発表時点で、直接繋がるシリーズにおいてメインを張ったヒーローは前述のふたりとワンダーウーマンしかいない。そのために本篇では、他の3人について紹介するような展開を挿入せねばならず、本筋が充分に練りこまれていない。そのために、全員揃って立ち向かわねばならないほどの脅威である、という点を観客に充分浸透させられず、クライマックスがどこか“ヒーローたちが勝手に騒いでる”ような印象を与えることに繋がってしまった。
製作側の事情を知ると、少々致し方のなかったことが窺える。実は本篇は、『マン・オブ・スティール』からDC作品に携わってきたザック・スナイダー監督が、家族の不幸により製作半ばで降板、代わりにマーヴェルサイドから離脱していたジョス・ウェドンが完成させた、という背景がある。いったい制作のどの段階で交代劇が繰り広げられたのかは解らないが、本篇の構成の歪さには、指揮体系の乱れがあった、と想像してしまう。
『アベンジャーズ』で癖のあるヒーローたちを見事にまとめ上げたジョス・ウェドンが脚本にもクレジットされているだけあって、内容自体はそつのないものだ。中盤までに新顔であるアクアマン、フラッシュ、サイボーグの人物像を観客に理解させ、うまくクライマックスへと持ち込んでいる。しかしやはり、こういうスーパーヒーローの共演に必要なのは、それに相応しいだけの脅威と存在感を誇示する悪役だったのだろう。
ザック・スナイダー監督の特徴である、ポリシーの感じられるヴィジュアルを維持しつつ、アクアマンの天の邪鬼だが愛嬌のある言動や、戦い方を知らない若造っぽさを発揮して程よい弛緩をもたらすフラッシュの振る舞いでリズムを作っていく、洗練された語り口もあって、決して作りは悪くない。だが、先行する『アベンジャーズ』と比較すると、ヒーローそれぞれの存在感がうまく混ざり合わず、ぎこちなさが目立っている。
さすがにトップクラスのスタッフが携わっているだけあって、細部のクオリティは高い。ひとつひとつの場面を抜き出せば質は高いのだが、せっかくのヒーロー・オールスター作品としてはあまりにもこぢんまりと、そしてぎこちなくまとまってしまった。制作態勢の混乱や、後発であるために登場するヒーローそれぞれの実写映画デビューが間に合わず、劇中で紹介しなければならなかったことなど、悪条件が重なったせいもあるとはいえ、とにかく色々と惜しい出来である。直前の『ワンダーウーマン』、本篇を跨いで『アクアマン』『シャザム!』と相次いで好評を博したことを思うと、やはりもう少しヒーローそれぞれの活躍を描いた上で、全員の力が求められる危機を見せて欲しかった。これを書いている時点でまだDCコミック作品の映画化は続いており、ふたたび“ジャスティス・リーグ”が結成される可能性は残っている。もし実現するのであれば、より充実した続篇が作られることを期待したい。
関連作品:
『マン・オブ・スティール』/『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』/『スーサイド・スクワッド』/『ワンダーウーマン』
『ドーン・オブ・ザ・デッド』/『300<スリー・ハンドレッド>』/『ウォッチメン』/『ガフールの伝説』/『エンジェル ウォーズ』/『アベンジャーズ』/『アルゴ』
『ゴーン・ガール』/『シュガー・ラッシュ:オンライン』/『インモータルズ-神々の戦い-』/『アメリカン・ハッスル』/『ウォールフラワー』/『マージン・コール』/『ジャンパー』/『閉ざされた森』/『ラ・ラ・ランド』/『沈黙-サイレンス-(2016)』/『マチェーテ・キルズ』/『アメリカン・ギャングスター』
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