『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング(字幕・Dolby Cinema)』

丸の内ピカデリー Dolby CinemaスクリーンのAVP(オーディオ・ヴィジュアル・パス)に表示された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』特別映像のひとコマ。
丸の内ピカデリー Dolby CinemaスクリーンのAVP(オーディオ・ヴィジュアル・パス)に表示された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』特別映像のひとコマ。

原題:“Mission : Impossible – The Final Reckoning” / 原作:ブルース・ゲラー / 監督:クリストファー・マッカリー / 脚本:クリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセン / 製作:トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー / 製作総指揮:デヴィッド・エリソン、デイナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー、トミー・ゴームリー、クリス・ブロック、スーザン・E・ノヴィック / 撮影監督:フレイザー・タガート / プロダクション・デザイナー:ゲイリー・フリーマン / 衣裳デザイナー:ジル・テイラー / 視覚効果スーパーヴァイザー:アレックス・ヴットケ / 特殊効果スーパーヴァイザー:イアン・ロウ / 第2班監督&スタント・コーディネーター:ウェイド・イーストウッド / 編集:エディ・ハミルトン / キャスティング:ミンディ・マリン / 音楽:マックス・アルジ、アルフィー・ゴッドフリー / テーマ作曲:ラロ・シフリン / 出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、ヘンリー・ツェニー、ホルト・マッキャラニー、ジャネット・マクティア、ニック・オファーマン、ハンナ・ワディンガム、トラメル・ティルマン、アンジェラ・バセット、シェー・ウィガム、グレッグ・ターザン・デイヴィス、チャールズ・パーネル、マーク・ゲイティス、ロルフ・サクソン、ルーシー・トゥルガルジュク / 配給:東和ピクチャーズ
2025年アメリカ作品 / 上映時間:2時間49分 / 日本語字幕:戸田奈津子
2025年5月23日日本公開
公式サイト : http://missionimpossible.jp/
丸の内ピカデリーにて初見(2025/5/23)


[粗筋]
“鍵”を巡る攻防から数ヶ月。“鍵”は隠された状態だが、偏在する人工知能《エンティティ》は世界中に蔓延、様々なサーバに侵入し、誤情報を拡散させ、混沌に陥れていた。一部には《エンティティ》が世界を作り替えることを切望する狂信者までが現れ、各地で紛争が続いている。
 アメリカ大統領からビデオメッセージで指令を受け取ったIMFの工作員イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、ロンドンの地下トンネル網に潜伏していたチームメイト、ルーサー(ヴィング・レイムス)とベンジー(サイモン・ペッグ)のもとへと赴く。ルーサーは重い病を患っていたが、地下に医療設備と共に工房を作り、《エンティティ》を破壊するための“毒薬”の開発に没頭し、完成させていた。しかしこの“毒薬”の効果を発揮させるためには、北極海のどこかに沈没したロシアの潜水艦《セヴァストポリ》の中心にある、“エンティティ”の制御権を持つハードディスクに直接、“毒薬”を接続しなければならない。
 潜水艦が沈没した場所に関する正確な情報を持っている可能性があるのは、《エンティティ》に雇われ暗躍していたガブリエル(イーサイ・モラレス)ただ1人。そのガブリエルの行方を辿れるのは、かつてガブリエルとともに働いていたが、恩義からイーサンを助け、今はIMF本部の監督によって収監されているパリス(ポム・クレメンティエフ)だけ。
 イーサンとベンジーは監獄に潜入、パリスを連れ出すことには成功したが、数ヶ月前の攻防を経て立場の変わったガブリエルは、イーサンたちのチームに罠を仕掛けていた。
 そしてイーサン・ハントは、己のこれまでの選択にも関わる、最難関のミッションに身を投じていく――


丸の内ピカデリー Dolby Cinema ロビーに掲示された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』大型スタンディ。
丸の内ピカデリー Dolby Cinema ロビーに掲示された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』大型スタンディ。


[感想]
 粗筋を少々短めにしたのは、序盤から前作のネタばらしになるような内容が頻出するからだ。このシリーズはどれほどストーリーに芯が通っていようと基本的に、困難なミッションや常軌を逸したスタントが見どころであり、ストーリーはぼんやりと把握しただけでも楽しめるように作られているが、それでももともとは『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART TWO』と題される予定だった本篇は、少なくとも前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』は観ておくのが大前提だろう。さもないと、前作のスパイ・スリラーとしての面白みを損ねてしまう。
 贅沢を言えば、もし時間が許すのなら、第1作からすべて観ておくに越したことはない。最低でも前作と、第1作くらいは観ておくべきだろう。恐らく、そうすれば更に本篇を観たときの興奮が増すはずだ。
 実は、単純にアクション・シークエンスの量について言えば、本篇は決してふんだんとは言えない。随所に格闘シーンもあるが、大きな見せ場は長い尺を使っているため、量、密度という点では旧作には及ばない。アクションの質と量いずれもほしいのなら、クリストファー・マッカリーが監督に就任して以降の旧作のほうが満足度は高い。
 しかしその分、本篇にはこれまでトム・クルーズがリメイクの権利を獲得して以降製作した作品群の集大成と言えるドラマが詰まっている。
 どこがどう、というのを細かく記すことは避ける。意地の悪い見方をすれば、無理矢理に挿入しただけでは? という要素もある、という評価もあるだろう。だが、少なくとも本篇の文脈においては、十分に効果的だし、強い印象をもたらしているのは確かだ。個人的にはその中でも、潜水艦の沈んだ座標を特定し、現地に赴く途中での会話は巧い、と感じた。本篇はそれ自体が、イーサン・ハントという特異な工作員の歴史を総括するものだが、このワンシーンには、当事者にも決してままならない宿命ばかりではなく、その影響を受けた人々の運命と生き様までが詰め込まれている。見ようによっては、あまりにご都合主義にも思える流れは、だがその端々にきちんとこのシリーズ、とりわけイーサン・ハントの歴史が詰まっている、その象徴のようなひと幕なのだ。
 そこからの連続し、最後には同時進行となるミッションは圧巻と言っていい。
 前作の時点で予測された、沈没した潜水艦に赴くミッションは、さすがにセットとCGによって生み出したシーンと思われるが、そのリアリティを表現するために凝らした工夫と努力は想像するにあまりある。そして、観ているあいだは、フィクションであることも忘れて手に汗握ってしまう。海底に沈んだ潜水艦の中だからこそのトラブルの数々と極限の展開は、抗いようもなく惹きつけられる。
 そして、クライマックスの並行するふたつのミッションの緊張感と迫力がまた出色だ。
 ここでは複数のチームに分かれ、それぞれが困難と立ち向かうが、この並行するミッション一つ一つが本篇自体と、前作から繋がれたドラマを凝縮したものになっていて、緊迫感以上の見応えがある。特に、ベンジーと同行した面々の活躍は、緊張感ばかりでなく、感動すらある。
 今回、トム・クルーズはいつもよりスタント控えめだな、と残念に感じていた人も、このクライマックスで不満は吹き飛ぶだろう。これまでも、どう見ても絶対に危険なスタントを披露してきたトム・クルーズだが、今回はダントツにヤバい。無論、撮影にあたっては可能な限りの安全を確保しているだろうが、それでも制御しきれない危険さが画面の端々から読み取れて、目が離せない。
 シークエンスに分ければ、少ないとは言える。しかし、スタントの緻密さとクオリティ自体は、間違いなく進化しているし、それを技術としてではなく、ストーリーの一部として観客に“体感”させる語り口の巧さが、観ているときはもちろん、観終わったあとも猛烈な昂揚感を観客に齎してくれる。 
 果たして続篇があるのか否か、現時点では解らない。本篇の日本公開直後である現時点で、少なくとも公式にはまだ発表はされていないはずだ。だが、キャンペーンのさなかに“生涯現役”を宣言したトム・クルーズが、育て上げたこのシリーズと、その中でこそ描きうる“ミッション”を捨てきれるとはどうしても思えない。
 だが、仮にそうして続篇が発表されたとしても、本篇は30年近くにわたって製作されたシリーズを、ひとつの大きなドラマとして昇華させた作品として、ファンや観客の心に強いイメージを刻みつけるはずである。これが終わりでもいい、けれど、きっとまだ世界は彼らを必要としている、と。


関連作品:
M:i:III』/『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』/『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』/『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』/『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング
アウトロー(2012)』/『ワルキューレ』/『ツーリスト』/『ジャックと天空の巨人』/『オール・ユー・ニード・イズ・キル』/『トップガン マーヴェリック
ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』/『宇宙人ポール』/『ファーストフード・ネイション』/『ソー:ラブ&サンダー』/『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』/『キャッシュトラック』/『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』/『ヤギと男と男と壁と』/『レ・ミゼラブル(2012)』/『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』/『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』/『野性の呼び声(2020)』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『ロックダウン(2021)』/『プライベート・ライアン
ビロウ』/『ブラック・シー』/『ターミネーター2』/『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊〈4Kリマスター版〉』/『LUCY/ルーシー』/『トランセンデンス』/『アップグレード』/『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』/『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

丸の内ピカデリー Dolby Cinema エレベーター扉にあしらわれた『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』キーヴィジュアルと、Dolby Cinema 限定ポスター。
丸の内ピカデリー Dolby Cinema エレベーター扉にあしらわれた『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』キーヴィジュアルと、Dolby Cinema 限定ポスター。

コメント

タイトルとURLをコピーしました