2月24日、透析のあとに訪れたお店の話。
この日訪ねたのは、旧日本銀行松江支店の建物を商業施設として再利用しているカラコロ工房、そのなかに《フードホール》と名付けられた、複数の飲食店が軒を連ねる一画がある。それぞれの店舗の屋内にも座席がありますが、対応出来る状況であれば、テラスになった区画で食べることも可能らしい――正直、この日は寒すぎて、外のテーブルで食べたいなんて微塵も考えませんでしたが。
私の目当ては、ラーメンゴイケヤです。
昨年の10月に松江を旅行した際、移転オープンしたばかりだったこのお店の存在を知り、そのうち訪れるためにチェックしただけだったのに、訪れるつもりだった麪家ひばりが既に閉まっていたため、急遽訪問して、美味しかったため後日再訪するのを心に決めていた。その後、こまめにメニューをチェックしていたところ、ものすご~く気になるものがあったので、初日か2日目か、どちらかで来ることを考えてました。
注文したのは、冬季限定メニューのカミモツです。辛味噌もつ鍋つけ麺、略してカミモツ、ということらしい。
ご覧の通り、もつ鍋をそのまんまつけ汁としていただくのです。しかも、鍋は固形燃料で常に熱してあって、ず~っと熱々の状態で食べられる。つけ麺は、基本的に冷たい麺を漬して食べるスタイルゆえ、つけ汁が冷めやすいので、店によっては保温のために焼き石を投入するサービスを施していたりしますが、常に火にかける、というのはたぶんないわけではないけどだいぶ過激派。
しかもこれ、ちゃんと単独でもつ鍋として食べられるのです。どうやらとんこつスープをベースにしているようですが、名前通り辛口の味噌で、温度と味の両方で身体の奥から温めてくれる。そして当然のように、モツは下処理が丁寧で、プリプリかつ柔らかく臭みがない。ニラやもやしに白菜も少量ながら一緒に煮込まれていて、辛さと熱さに痺れた舌を適度に癒してくれます。なにせこの日は、移動中に吹雪が来るほどの冷え込みでしたから、純粋に熱々の鍋が嬉しい。
そして、ここにくぐらせたつけ麺がまた美味しい。つけ麺としてはオーソドックスな太麺は、それだけ啜ってももちもち感と仄かな甘みがあって美味しい。これを適度に鍋に漬して食べると、実によく調和します。麺のほうにはネギが少し添えられていて、これも摘まみつつ漬していくとまた味わいが変わる。
面白いのは、コシのある太麺なので、鍋に着けたまま煮込むことも出来るのです。箸が進むので、ひたすら煮込むことは出来なくとも、少し味を通した麺はまた趣が変わってくる。私は使いませんでしたが、徳利で添えられたスープ割りを投入して、煮詰まった味を調整することも出来るはず。
鍋として食べて良し、つけ麺として食べて良し、ですが、このメニューは麺を食べ終わったあとにまだ楽しみがある。料金を追加することで、雑炊にも出来るのです。
お茶碗に小盛りにしたご飯、ネギ、岩海苔をスープに投入して、蓋を閉めたあと、沸騰するのを待つ。私はここで初めて、調整として割りスープを少々投入。このとき、固形燃料が切れてしまいましたが、お願いすれば交換してくれます。そして、煮えてきたところで、生玉子を投入して完成。
このシメがまた美味しい。なにせ食べているあいだもじっくり煮込んで、肉の旨味も浸透した汁が染みこんだ雑炊ですからコクが豊かで、それがご飯と生玉子でいい具合に円やかになっている。
私の場合、途中で固形燃料の交換もあって、火を止めるタイミングを誤ったのか、やや焦げついてしまいましたが、個人的には焦げも大好き。鍋の底から掻き出すようにして、完璧に食べ尽くしてしまいました。
個人的には、これまでに食べたつけ麺の中でもトップクラスに美味しかった。支払いのとき、お店のお姉さんに、冬だけなのがもったいない、と訴え、必ずまた来ます、と言ったら、「明日はどうですか?」と聞かれた。さすがに、せっかくの旅行だし、違う物も食べたいので、2日連続は……と返しつつ、でも間違いなくまた来ます、と断言して店をあとにした。
本当に、翌日、もういっかい訪れてしまいました。
時間的余裕や、ルート的に好都合だった、というのもありますが、それだけカミモツに魅せられた、というのも大きい。
しかしこの日は前日と異なり、既に疲れ切っていて、胃もたれがしてきている。カミモツを注文しても、雑炊までたどり着ける気がしない。あの魅力を知ったあとで、雑炊を飛ばしたら却って後悔することになりそう。店の前でしばし悩みましたが、けっきょく入店。
ただし、こんど食べたのは、キワミシオでした。とにかく胃が疲れていて、前に注文したエビシオも、バリエーション豊かなブラックの類もちょっと重たそうに感じたため、いちばんシンプルそうなメニューを選んだのです。
淡麗な魚介系のスープに浸るのはストレートの細麺。具材はローストチャーシューと炙りチャーシュー、太めのメンマが1本に水菜と、やはり極めてシンプル。
しかしこの選択は大正解でした。コク豊かだけど優しく、胃が疲れているのに箸が進む。水菜のシャキッとした歯ごたえ、仄かな苦みのアクセントがまた快い。
2種類のチャーシューも、それぞれ肉の旨味と個性が出ているのに、決してクドくないのです。ローストチャーシューはムチムチとした食感がありつつも柔らかく、炙りチャーシューは脂の旨味が染みだして、また違った味わいが楽しめる。嬉しいのは、こんなにしっかり脂を感じても、決してもたれる感じがなかったこと――まあ、このときは胃以外の疲れが栄養を求めていて、予想より食べられただけかも知れないけど。
お陰で無事に完食。水分を摂りすぎているので、スープは残しましたが、正直、飲み干したいくらいでした。
昨年から3度通って確信しました。ここは、美味しい。
今後は、麪家ひばりとともに、松江旅行の際に必ず訪問するお店になりそうです――いちどの旅行でラーメン2杯食べるのはどうなの、と思わなくもないけれど、家から遠いんだから致し方ない。機会があれば、堪能しなくては。
ちなみに、2日目の会計のとき、一緒にウルトラ怪獣クランチチョコも買いました――何故か、そんなものまで売っている。こういう遊び心も嫌いじゃない。
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