今年6月リリースされた『ほんとにあった!呪いのビデオ87』を鑑賞。途中である音を流すと怪奇現象が起きるというトンネルで撮影された“異世界”、飲み会帰りに公衆トイレで遭遇した不気味な出来事を記録する“公衆トイレの不審者”、産婦人科帰りの夫婦が神社で撮影した怪奇映像を巡り事態が思わぬ形で転がっていく長篇“黒く蠢くもの”など全7篇を収録。
あんまし好印象を受けてないディレクターがまだ健在らしいです……が、ここ数巻と比べればまだまし。展開に工夫は感じるし、とりあえずは観ていられる。
しかしそれでも、単発作品の怪奇映像が全般に似たり寄ったりだったり、不自然に手ぶれが大きかったり、という発想の硬直、或いは選定の偏りが強くて、まだまだ多彩さに欠くのは否めない。何度か書いてるはずですが、おんなじようにおかしなところで手が出てくる、という映像ばっかりにするのは、多くの投稿が届いている、という設定からすれば矛盾が強すぎるのです。もうちょっと球数を揃えて欲しい。
そして長篇“黒く蠢くもの”ですが……この展開を「面白い」と思うひともいるんでしょうが、私は苛々の方が先に立ってしまった。AD上田のあり得ない言動を省けば半分の尺で済むでしょ。出来の悪い取材を、そのまんまネタにしてごまかしてるだけにしか見えない。過去にもスタッフと取材対象が揉める、という展開は少なからずありましたが、多くはスタッフの正義感が暴走してしまったり、過剰に真相を追い求めすぎた、という成り行きだったので、納得がいきましたし、そのまんま使うのもやむを得ない、と感じた。しかしこの上田の言動はぶっちゃけ【バカッター】の類で、明らかに褒められる性質のものじゃない。映像製作会社の振る舞いとしては恥ずべきもので、これをそのまんま流すのは、なりふり構わなくなっているか、よほど無神経になっている気がします。
この長篇は夏恒例の連作なので、結末はまだ咲の話。とりあえず最終的な判断は先送りにしますが、今のところ私の印象は良くない。突然再登場する先代の演出・川居尚美が綺麗にまとめてくれるんだろうか。
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