レンタルDVD鑑賞日記その686。

 またしても作品を絞りかねたので、今日も月額レンタルで届いたブルーレイにて映画鑑賞。サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックがハリウッドに渡って初めて手懸けた作品、パトリシア・ハイスミスの小説をもとに、交換殺人を持ちかけられた男の恐怖を描いたサスペンス『見知らぬ乗客(1951)』(Warner Bros.配給&映像ソフト発売)
 これもだいぶ前から観ておきたかった1本。なにせ、脚本としてレイモンド・チャンドラーの名がクレジットされてるのですから――もっとも、チャンドラーは原作を低く評価していたうえにヒッチコックとも対立、どうやら実際に採用された脚本ではあまりその痕跡を残してないっぽいんですが、まあ原作者も監督もジャンルを代表するひとなので、観ておいて損はあるまい、とリストに入れてたのです。例によって、出荷されたタイミングは想定外なんですが。
 ヒッチコック監督作としては初期作なんですが、しかし充分すぎるくらいに堂々たるサスペンス。描写に品格かありながら、じわじわとのっぴきならぬ状況に追い込まれる主人公の心理を表現して緊迫感に富んでいる。主人公を“交換殺人”の共謀者に仕立てようと迫る男が実に怖い。仕立てのいい服装に柔らかな笑顔、と一見しただけではその狂気が解りにくいのが見事。
 果たしてどう着地するのか、とハラハラしながら観てたんですが、正直、クライマックスは個人的に微妙でした――いや、映像としてのインパクトはあるし、非常にスリリングではあるのです。しかしこれで決着、というのは、過程の緊迫感からするとちょっと不似合いに思えてしまう。あと、結果を見れば、実は犯人と同じくらいヤバいことをしてるのが刑事だ、というのが引っかかります。まあ、このくらいの時代だとまだまだ軽率な警官はいまよりずっと多く、フィクションのなかでもそういう描き方が普通だったので、現在の目線で文句をつけても意味がない、とは承知しつつももやもやしてしまう。
 やはり全体のクオリティは、これ以降発表された代表作より下がりますが、それでもサスペンスとしては優秀。チャンドラーが書いた脚本に従ってたら、どんな感じになったんでしょうね。
 ちなみにブルーレイには、映像特典としてイギリス公開版も全篇まるまる収録されてます。イギリス版のほうがちょっと長いですが、それは編集の問題で、あとはハリウッド版のラストシーンが少しカットされてる程度の違いらしい。こっちも一通り観てみようかしら、と一瞬考えましたが、さすがにそこまでは面倒なので、終わり方を確認するだけに留めました。イギリス版の締めくくり方はなんとなくドライ。

コメント

  1. […] 原題:“Strangers on a Train” / 原作:パトリシア・ハイスミス / 監督&製作:アルフレッド・ヒッチコック /  […]

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