現段階ではたぶん今年最後の、月額レンタルによる映画鑑賞になると思われる1本は、鬼才スタンリー・キューブリックの戦争映画『フルメタル・ジャケット』(Warner Bros.配給&映像ソフト発売元)でした。……クリスマス・イブになに観てんだ、と自分でも思いますが、レンタルで届いたものの、今日ぐらいしか適切なタイミングがなかったのよ。今日を外すと年明けになってしまう。
これは凄い映画でした。まさに本物の匂いのする“戦争映画”。戦場に送りこむため、非人間的な指導で新兵達を追い込んでいく鬼軍曹。許された僅かな自由の中で友情を育みながらも、愚鈍な同僚に対するイジメに荷担してしまう主人公。そして卒業の日に起きる悲劇。そうして教育の場で地獄を見た新兵達は、前線で善悪の境を麻痺させていく。
キューブリックは本篇を反戦映画とは考えず、“戦争”そのものを撮った、と考えていたそうですが、確かに本篇には反戦のメッセージはない。戦うための教育と、戦場でのリアルを織り込んでいるに過ぎない。その様相に恐怖するか、一線を超えてしまう興奮を味わうか、は観るひと次第なのでしょう。性向によっては、観客を戦場に駆り立てる危うさもある。
しかし、それくらいに真に迫った、圧倒的傑作。これからどんなに戦争映画が撮られるとしても、その頂点に近いところにずっと君臨し続けると思う。
その後の戦争映画の基本をぜんぶ完成させてしまった、という印象の本篇ですが、個人的に、海兵隊がジョギングしているときの替え歌が特に気になって仕方なかった。軍曹のコールを新兵が復唱しながらジョギングするのですが、私くらいの年代はきっとみんな、頭の中で同じフレーズを思い浮かべるはず。
「ファミコンウォーズが出るぞ、こいつはどえらいシミュレーション……」
……改めて確認したけど、この映画のパロディだったのね、あのCM。
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[…] 原題:“Full Metal Jacket” / 原作:グスタフ・ハスフォード / 監督&製作:スタンリー・キューブリック / […]