2月27日に、2022年10月リリースの『心霊闇動画70』を鑑賞。YouTuberの他愛もない企画撮影のために利用したキッチンスタジオで異変が起きる《食べ比べ》、カップルが母校を訪ねた際、使われなくなった旧校舎を記録した映像に怪異が映り込む《思い出の旧校舎》、会社の研修の会場視察を記録した映像に不気味なものが映っていた《研修会場の下見》など、全6篇を収録。
どうやら演出の交代は一時的だったのだろうか、今回もまた大門孝雄演出です。
ただ、前巻がそうだったように、今回もまあまあ観られる出来ではある。たとえば《食べ比べ》は2箇所にカメラを設置することで、片方だけならさすがに採り上げないだろ、という現象の異様さが浮き彫りになってる。インタビュー部分の少ない《洗面所の怪》は、現象としてはシンプルですが、シチュエーションやその前後の展開に違いがあって目を惹かれます……まあ、基本的に省力的な作りであることは変わらないのですが。
ひとつ気になるのは巻末の《研修会場の下見》です。シチュエーションや、映像を撮影する前後の展開は、こうした怪奇ドキュメンタリーの定番からちょっとはみ出していて、それはそれで面白いのですが、問題は、映り込む怪異の原因を“生霊”と決めつけたことで、明らかに裏付けのないオカルト理論で話をまとめる流れになってしまったこと。確かに、こういう怪奇ドキュメンタリーの一部やオカルトものでは、“生霊”と呼ばれるものが現実の時間軸を超越した顕れ方をすることがある、なんて理論があるのは知ってますが、そもそも“生霊”はそれが実在するのかも不明なものです。そういう理屈がある、程度に留めて、もっと様々な可能性を提示するべきではなかったか。“生霊”という言葉に縋って思考停止してしまったことで、巻末のエピソードの説得力が大いに失われている。
……展開は嫌いではないんですよね。怪異が起きるとは思えないようなほのぼのした撮影風景、映像の存在も含めたやり取りが思わぬ成り行きに発展する、というのも面白い。そして、その流れの背景で、“捨てられた”人物がいる、という不穏な気配。ただ単に恐怖を煽るだけでは出来ない雰囲気、余韻が演出出来ている、という意味では、このエピソードはなかなかの出来と言える。“生霊”のやり取りがなければなあ……。
今回はなかった《質問コーナー》での理論武装もそうですが、このシリーズ、とりわけ大門演出作品には、こういうオカルトの解釈で馬脚を露わしがちです。もうちょっと“現象”そのものに着目して、周辺の出来事との関連性も最低限仄めかすだけにしたほうがいい。
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