8月9日に、2023年6月リリースの『封印映像65 首切り小屋』を鑑賞。肝試しに向かった友人に貸した乗用車に残されていたビデオカメラの記録した怪異《帰ってこれない》、実家が取り壊されるため、荷物整理をしていた投稿者が見つけた覚えのない《ランドセル》、テレビ局のクルーが行った街頭インタビューでの出来事が、恐怖の体験に繋がっていく《インタビュー》、自らの経営する芝居小屋に設置した監視カメラが捉えた怪異を投稿してきた人物を襲った最悪の出来事を追う表題作の全4篇を収録。
アイディアと導入はいいけど、登場人物の演技と展開のリアリティが理想に追いつかない傾向にあるこのシリーズ。今回もそれは一緒なんですが、そういう意味ではわりと悪くない出来映えの巻でした。
1本目の《帰ってこれない》は肝心の投稿映像内の会話があまりにも芝居くさいのを除けば、シチュエーションも展開も面白い。投稿者本人が撮影したわけではないからこそより如実になる不可解な状況が、じんわりと恐怖を誘う。本人は決して障りのありそうなところに脚を運んでいないのに、怪異が迫っているあたりにもヤバさを感じます。スタッフが取材の過程で発見したモノが、冷静に考えるといちばん不自然だったのが残念……経緯を考えたら、そこに残ってるわけがないんだよ。
2本目の《ランドセル》、取り壊す予定の実家の荷物整理を記録する、というシチュエーションそのものは決して珍しくないし、そこに覚えのない遺物がある、というのもありがちではある。ただ、見せ方や展開の工夫は悪くない――現象が極端すぎて、それをカメラがほとんど綺麗に捉えてるのがいちばん不自然なのが難点。
ときどき著名な妖怪や都市伝説に絡んだエピソードも登場するこのシリーズ、今回の場合は《インタビュー》がそちらに当たる。撮影している状況からするとカメラの動きやリアクションが明らかに不自然なんですが、その“正体”に言及した瞬間はちょっと嬉しくなってしまった……見方が間違っている気はする。
表題作も、投稿映像の取材から事態の変化と、それを見せる順序が巧いので、エピソードとして見応えがある。短めでも表題作に選んだのは頷けます。惜しいのは、最も決定的な瞬間を捉えた映像、悲鳴とそのタイミングが、普通に考えるとあり得ないのが引っかかってしまうこと。関係者の話から考えると、そもそも悲鳴が上がることがおかしいし、聞こえるべき物音がしてないのです。相変わらず、カメラの前で語る関係者が芝居っぽいし、けっきょくはフェイクなんだな~、とバレバレなんですが、フィクションのホラーとして観れば決して出来は悪くないのだ……フィクションである、と明かしたとしても、芝居の拙さは気にはなるけど。
しばらく前に行方をくらました演出担当が戻ってきた様子はなく、名物ADだった田中は今回もナレーションでの出演に留まっている。あり得ない態勢のまんま続いていますが、不出来なりに少しずつレベルは上がっている気がします……まあ、そんな風に言えるのも、私が何だかんだ言いつつ第1巻からず~っと観続けてきて、慣れてきちゃったせいもあるのでしょう。本格的なモノにばかり接しているひとが急にこれを観たら、やっぱり“駄目”って言うと思うよ。
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