8月13日に、2019年4月リリースの『心霊盂蘭盆Vol.7 七人ミサキの伝説』を鑑賞。ホストに捨てられた女性が丑の刻参りで怨みを晴らそうとする様子を記録した《丑三刻》、くぐると命を奪われる、という鳥居を取材した2人組の体験した恐怖《自己像幻視》、当時YouTuberをしていた投稿者が、心霊スポットである山中で行った降霊術が悪夢を招く《鏡封印》、宗教団体の活動に違和感を覚え逃亡した女性が、団体からの嫌がらせを証拠として記録していた映像が思わぬ顛末を記録する《悪魔祓の警告》、一連のエピソードに関連する怪異との戦いの顛末を記録した表題作の全5篇を収録。
今回も長篇、しかもタイトルから明白なように、題材は有名な伝承“七人ミサキ”です。ちょっとワクワクしながら鑑賞してしまう。
投稿自体はおのおの別々か、取材の過程により発掘された、という趣なので、本当にまったく別々のエピソードが結びついていく、というカタルシスはない。けれど、先行するエピソードで語られていた関係者がこれで、こんな展開が背景にあるとか、こういう風に広がっていたのか、という驚きや衝撃はある。それだけで、自然と全篇を見てしまうので、趣向としては巧いし、コウカモ弁えている、と思う。
ただ、細部のリアリティの乏しさ、説得力の乏しさは如何ともし難い。
そもそも“七人ミサキ”という題材を安易に捉えてて、伝承にある怪異と本篇で記録されてるものに食い違いがあるんだけど、そこをさほど気にしていないのは、タイトルにまで掲げたにしては掘り下げが甘い。急に消えて取り込まれるよりは、きちんと解り易い呪い、祟りがあって、その影響で現実に観測された死から犠牲者が7人に取り込まれていく、というのがオーソドックスなんだけど、劇中の七人ミサキはヤりたい放題すぎる。
しかし特に引っかかるのは、一連の怪異で序盤からその姿をちらつかせていた宗教団体から飛び出してきた女性のエピソードです。宗教団体の方向性、行動が受け入れられず飛び出しても、執拗に追い回される、というのは新興宗教絡みではありがちなエピソードだし、本篇で描かれているのがちょっと事情が異なっていて、だんだん様相が変わってくる、のはまあいい。ただ、最小的に明白になった構図から帰納して考えてみると、明らかに不自然なところが多いのです。果たしてあの経緯で、“警告書”なんてものが弁護士の署名付きで送られるのか、送ったあとで関係者が訪問してくる、なんて経緯があり得るのか。また、映像の中心人物である女性も、そこまで追い込まれているわりには、警察や支援団体など然るべきところに相談する様子もなく、謎の強硬さを見せている。何より腑に落ちないのは、これもまた“七人ミサキ”がもたらす怪異で、現れるものが撮影者の口にしたとおりのものなら、なんでここに現れるのか。幾ら、怪異は理不尽であったほうがより怖い、とは言っても、芯を感じられないとしっくり来ません。
そもそも、ある人物がこの一連の怪異がどうして“七人ミサキ”と捉えたのか、という点も不明瞭だし、その上で表題作のような対処になったのもピンと来ない。わりあい知られている伝承を題材に採り上げているだけに、不整合が余計に気になります。
続き物だし、リンクの仕方は面白いので、最後まで楽しめるし、怪異が出現する瞬間はいい感じにヒヤッとします。ホラーとして、きちんと観るものに恐怖を与えよう、という意欲は感じるので、好感は持てるんですが、ツメがだいぶ甘い。もっと“七人ミサキ”というものを考えて組み立てるか、何なら“七人ミサキ”なんてものと同一視せず、それに似た連鎖する怪異、ぐらいに描いた方がよかったのでは――完全にフィクションと断定しきった評価と提言になっちゃってますが、残念ながら完成度としてはまだそのくらいなのです。
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