怪異の視点で辿るオカルトミステリ。[レンタルDVD鑑賞日記その898]

心霊グラインドハウス ねむりめ(Amazon.co.jp商品ページにリンク)

 3月21日に、2022年3月リリースの『心霊グラインドハウス ねむりめ』を鑑賞。オカルトを専門とする探偵・犬井叶子が依頼を受けた、同時多発的な映像トラブルの原因を探る調査から始まる複数の怪奇事件を描いたシリーズ全6話を収録。
『ほん呪』シリーズ、『心霊玉手匣』などを手がけた岩澤宏樹監督が手がけ、エンタメ~テレにて放送された作品です……実は借りた時点で、エンタメ~テレでシーズン2が放送されてる真っ最中だったらしい。何も知らずに借りてた。Amazon Prime Videoにて、シーズン1はプライム特典で配信されてるのもあとで知った……ちなみに届いたのは1月である。作業とか旅行とかでなかなかタイミングが掴めなかったせいもあるけれど、寝かせすぎだ
『呪いの黙示録』のスタッフがしれっと顔を見せたりして、実在するシリーズともリンクはしてますが、あくまでホラードラマと銘打っているので、リアリティの問題にはある程度目をつぶって楽しめる。
 しかし、既に岩澤監督、なかなか見事な作家性を構築してます。怪奇ドキュメンタリーで培った技法を採り入れた、劇中のカメラを多用するかたちで、視聴者をドラマの内側に引き込んでいくのですが、今回、その視点映像の一部が“怪異”そのものである、というのが面白い。
 そこへ更に、実在する怪異ドキュメンタリーの関係者や、事故物件住みます芸人・松原タニシなどが登場し、リアルとフィクションの境を曖昧にする趣向も効いている。この辺は、同じエンタメ~テレ系列で放送された《心霊マスターテープ》シリーズでも同様の手法を用いてましたが、本篇はそれをよりダイナミックにした感じです。《心霊玉手匣》で、怪奇ドキュメンタリーの方法論をより拡張する試みに挑んだ岩澤監督の、作家性が強烈に発揮されてる。
 序盤、主に視点人物となる犬井の助手・後田庸介が本格ミステリ愛好家で、その設定に従って本格ミステリ的な趣向が入ってきたり、実在のスタッフを使うだけに収まらないメタフィクション的趣向を用いたり、細かな工夫とユーモアをちりばめ外連味たっぷりですが、最終的に明かされる真相と結末にはだいぶ毒が含まれている。大きな目的自体は、この手のドキュメンタリーに近い方法論を駆使したホラーではあまり珍しくなく、フィクションだから、と割り切ってしまったがゆえの芝居臭さが、やや説得力を奪ってしまっているのがもったいない。
 ひとによっては、いささか風変わりすぎる、と感じるひともいるでしょうし、趣向に振り回されすぎて、仕掛けや影響にいまひとつ納得がいかない、というのが難ですが、試みとしては意欲的で、私は好き。続篇もなんとか鑑賞する。

コメント

タイトルとURLをコピーしました