10月6日に、2019年12月リリースの『心霊盂蘭盆 Vol.10 よもつへぐい』を鑑賞。新人YouTuberタレントが撮影に赴いた心霊スポットで、軽率な行動が悪夢を齎す《お月見泥棒》、学園祭実行委員会の勧誘のために始めた撮影が阿鼻叫喚の事態となる《ワライ胞子》、一連の映像の繋がりをスタッフが探ろうとする表題作など、全5篇を収録。
久々に借りたシリーズ10作目は、伊邪那美を連れ戻そうとした伊邪那岐が体験した恐怖をベースとする、連作エピソードです……が、やっぱしこのシリーズはいまいちだなー、と痛感してしまった。
実際には明らかに同一人物と見られる、《お月見泥棒》と《キノコ狩り》の人物を結びつけることを取材パートで触れてない、なんてのは技法として別に悪くないんですけど、そもそも全般に、前提があり得なくて、リアリティを失ってます。《お月見泥棒》の映像の採り上げ方はたぶん本当なら権利的に色々と問題がありそうだし、映る人物の扱いにもうちょっと慎重になる必要があるはず。これは続く《キノコ狩り》や《幻覚依存症》も同様で、なんでこういうのを安易に使えるのか。安易でなければ、関係している企業の発言とか意向とか、少しでも出てくるはずだけど、それがないのが顕著。
そして、どーにも不審でならないのが、怪異が移ったときの撮影者の反応。なんでカメラを振るの。戻ったときには映ってない、というお馴染みの演出のためなんだけど、現実にああいう反応をするのは多数ではない、というのは自分が驚いたときのことを考えれば解るはず。特に《キノコ狩り》なんて、足許であんなものが見えたら、カメラを明後日に向けるんじゃなくて、自分がまず飛びのくのでは? 既に暗くなっているのだから、一瞬でそれがどんな姿をしたものなのか理解する以前に、何かいる、踏みそうになった、というのが先で、退くでしょうに。みんなカメラを持ったら律儀に自分の目線が解るように動かすのはまだ許すとしても、このお約束過ぎるフレームアウトだけは許せないし、醒めます。
何より、これだけ危険なことが起きる山が何故放置されてるのか。昔からこうなら、本格的に忌避されるか、信仰の対象となるか、もっと昔からこうなっていたことを窺わせる痕跡があるはず。普通に人が歩いていそうな山道があったり、仕切りが近代的でそこまで凝ってないフェンスだったり、いちいち不自然。ごく普通の山を忌まわしい場所と言い張って撮ってるだけ、にしか見えない。
着眼そのものはいいと思うのです。まるで黄泉比良坂が実際に存在しているかのような怪異、伊邪那美の呪いが現代に顕現したかのような怪異の連続。だいぶ手垢が付いているとはいえ、ドキュメンタリーとして仕立てているのは覚えがないので、うまくやればそれなりに面白いはず、なのに。
……そういうところばっかり目について、肝心の怪異の描写とかほとんど印象に残りません。ラストの映像の感じは悪くないんですが、それを活かすための導線をもっと練った方がいい。
灯りもなく夜の登山なんかしちゃ駄目。[レンタルDVD鑑賞日記その914]

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