コッテリ濃厚、でもさっぱり。

 母が所用で乗用車を出し、帰りに買い物をしてくると言う。私もその買い物先には何度も付き合っていて、実はその近くに、ず~っと気になっていたラーメン店がある。折しも作業のクライマックスで、映画鑑賞など時間のかかるお出かけは自重しているさなかながら、気力の補充も兼ねてラーメンくらいは食べに行きたい気分だったので、車に同乗、お店の近くで落としてもらって、初訪問。
 お店は、中華そば 七麺鳥。駅としての最寄りはいちおう鶯谷駅になるはず、ですが、駅からだとまあまあ歩く。細かに商店もありますが、やっぱり住宅街という趣のこの界隈では評価が高く、ネットの口コミだと、昼食時には券売機に列が出来ることもあるらしい。
 私が入店したのは12時ちょっと前、まだ混み合っておらず、食券の購入も着席もスムーズ、その後もお客はしきりにやって来ますが、常に幾つか空席はある。大人数で来なければ、着席で待つことはない印象。

中華そば 七麺鳥の味玉味噌ラーメン。

 いただいたのは、食券機のボタンによれば味玉味噌ラーメン……“よれば”と記したのは、店頭に並べてあったメニュー一覧から察するに、これはたぶん味玉つきの背脂味噌ラーメンのはず、なのです。ただ、背脂がいわゆるチャッチャ系のように解り易く見えているわけではないので、券売機の名称に従ってご紹介。
 具材はたっぷりの白髪葱にモヤシ、それから小口に切った葱もあったはず。チャーシューはやや大きめのものが一枚、そして1/8くらいに切った海苔一枚。味玉は、半熟よりもやや固めに茹でてあります。
 ひとまずスープを啜ってみて、意外な濃さに驚きました。味噌の風味と辛さがけっこう立っている。しかもスープの粘度が高い。もっとドロドロしたお店もいっぱいあるはずですが、私の好きな味噌ラーメンのお店と比較すると、かなり顕著にとろみがある。もしかしたらこれは、背脂がちゃんと使われている証なのかも。
 スープの濃厚さに度胆を抜かれつつ麺を啜る。こちらは味噌ラーメンでは定番の中太縮れ麺。初訪問ならそっちからチェックすべきだ、と自分でも思う醤油ラーメンを注文しなかったのは、あちらはストレートの細麺と記してあったからだったりする。今日、他に選択肢があったのにこのお店にしたのも、中太縮れ麺を食べたい気分だったから。意識してやや柔らかめに茹でられているのか、歯応えはやや弱いですが、モチモチ感はしっかりあって、スープの絡みもいい。
 しかし、それゆえにどうしても濃厚です。全体に塩味が強いし、たぶん背脂のコクも溶け込んでいるので、思いのほかガツンと来る。美味しい、けど、この暑いさなかにはちょっと濃い。或いは、ここまで移動するのに徒歩を挟んでいたら、ちょうどよく感じたかも知れませんが、何せ私は手前まで車に乗ってきてしまった。これはちゃんと活動したあとのほうが美味しい味噌かも知れません。
 とはいえ味は美味しい。ガツンと来るし、やや重たく感じますが、たくさん盛られた白髪葱とモヤシが適度に歯応えの変化と爽やかな苦みを加えてくれるので、味変をしなくても箸が進みます。
 また、チャーシューもいい具合。箸で千切れる柔らかさで、気づいたら断片がスープに紛れてしまいますが、それがクドさを助長しない。この濃厚なスープを吸っても濃厚にならず、むしろ適度にしっとり感のある肉と、優しい甘さのある脂身がうまく馴染む。これなら、チャーシューをトッピングで追加してもいいくらい……と思って足すと、想定よりたくさん追加されてしまう可能性もあるので、要確認。
 最初はちょっと濃厚すぎて、果たしていまの体調で食べきれるか、と不安になりましたが、意外にもスムーズに完食。さすがにスープを飲みきるのは無理そうでしたが、麺と具材は最後まで美味しくいただけました。
 実は感心したのはこのあとです。けっこうインパクトが強かったのに、帰り道で感じたのは、イヤな後味が一切残っていないこと。闇雲に濃くしているのではなく、味噌の風味、後味を考慮して丁寧にブレンドしているのでしょう。たぶん、よっぽど胃腸がくたびれていなければ、食べ終わったあとの負担はない。ちゃんと満腹感はあるけれど、余韻に重たさがない。こと、帰りは車がいないので、徒歩メインで帰宅した私にはここがけっこうポイントでした。
 通りかかったときに、列が出来ていることが多く、ネットでの口コミも良好だったため、長いこと気になっていたお店でしたが、これは再訪したい味でした……でも次回は、あっさり風味らしい醤油ラーメンのほうを試します。

中華そば 七麺鳥、店頭。
中華そば 七麺鳥、店頭。

中華そば 七麺鳥、入口脇に掲示されたメニュー一覧。
中華そば 七麺鳥、入口脇に掲示されたメニュー一覧。

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