東京03 20周年記念BEST LIVE「東京0320」 in 恵比寿・エコー劇場。

 今年、東京03が結成20周年とのこと。それゆえに、20周年記念 BEST LIVE「東京0320」を開催する……という発表があったのが先月末で、開催がきょう。ほとんど間を置かずファンアプリでの第1次受付が始まり、あれよあれよという間に当日です。
 思いっきり想定外の公演でしたが、料金はいつもの半額くらいだったので、躊躇なく申し込みました……とはいえ、当選するとは微塵も思ってませんでした。
 ファンアプリを使い始めて以来、チケットが確保出来なかったのは、恐らくは唯一、バナナマンとのコラボ《HANDMADE WORK》だけ。あれはなにせ、バナナマンが常小屋としている俳優座劇場での開催、東京03が都内で公演するときの会場よりだいぶキャパが小さく、なおかつもともと単独のたびプレミアチケットになるコンビと一緒ですから、取れないのは解っていた。そういう意味では今回の会場である恵比寿・エコー劇場は東京03が第4回の単独公演まで使用していた、ということで選ばれたものの、キャパは130席。より広いガーデンホールや日本青年館ホールでの複数公演もしっかり埋めてしまう彼らがここで、しかもたった1回きり、となったら、さすがに確率は下がる。今年はFROLIC A HOLICに単独公演を追加までガッツリ鑑賞出来たので、まあ外れても仕方ないか、ぐらいの気分で申し込んだのです。今回ばかりは当たって驚いたよ。

 前夜のうちに仕上げたかった作業は、だいぶ頑張ったものの午前4時頃で5パーセントほど残ってしまった。しかし、前夜までにほぼほぼ勢いがついていたので、お昼前までにどうにか決着。出かける前に出来るだけ仮眠を取ろう、と昼食のあとに横になったものの、気が張りすぎてるのかなかなか寝付けず、たぶん1時間も眠ってません……むしろ起きられたことを褒めて。
 陽気はいいので、バイクにて移動。ただ、恵比寿でふだん訪れる映画館や、最近東京03が単独公演でよく利用するガーデンホールがある一画とは、恵比寿駅を挟んでほぼ反対側。駐車場はそちらに近いほうを選びました。ここは狭くてちょっと苦手なんだけどなー、と思ってたら、劇場からより近いところに、もう少し安い駐車場を見つけてしまった……別の機会に使う。
 一部、普段と違うルートを使ったので、遅れることも覚悟してましたが、だいぶこの界隈の構造が理解できてきたようで、案外あっさりと到着。開場前に、近くの自販機で飲み物を買って喉を潤す余裕もありました。
 そして入場。座席番号はB-1……安定の前方端。なんでだ。なんでファンアプリ経由で抽選に応募したチケットはほとんど左右どちらかの端寄りになるのだ。通常の公演と違い今回はファンアプリ限定、前述の通り競争率も高いので、非常に前の席なのは御の字なんですが、もーちょっと真ん中に寄ってくれんだろうか。会場ではA列の前に増設したと覚しい座席が2列あるので、結果として少し後ろになったが、充分前である。
 で、いよいよ開演です。収録も行われていた模様で、後日配信なりリリースが行われる可能性もあるので、そのときまで楽しみにしたい、という方はスクロールせずに閉じてください。

恵比寿エコー劇場、入口階段手前に掲示された『東京03 20周年記念BEST LIVE「東京0320」』キーヴィジュアルのポスター。
恵比寿エコー劇場、入口階段手前に掲示された『東京03 20周年記念BEST LIVE「東京0320」』キーヴィジュアルのポスター。






























 タイトルがタイトルだし、単独公演から間がないので、これまでのネタの再演であることは解っている。しかも、ファンアプリでは少し前に、全ネタからのベストを選ぶアンケートが行われており、今回のライブ開催の概要が出る前に順位が発表されていた。恐らくはそのランキングを参考に選ばれるのだろうな、と思っていたら案の定、トップのネタは第19回「自己泥酔」より《小芝居》。間違いなく、03の最高傑作のひとつと言っていい、03の良さがぜんぶ入ったネタでした。実際、先行して実施されたネタランキングの1位である。
 ただし、さすがは東京03と言うべきか、ちゃんと細かな手が加えられている。痺れたのは、序盤でけっこう重要な台詞を放り込んでいたことです。なにせここに来ているのはファンアプリ会員のみ、近年の傑作であるこのネタの構造を知らないはずもなく、ちょっと「おお」という空気が広がったのが印象的。あと、少し過剰にした部分で、親交のあるバカリズムがMCを務める『私のバカせまい史』で扱ったネタをさらっと挟んだあたりにもニヤリとしてしまった。それにしてもこのネタについては、左端という座席は最高でした。序盤の細かなやり取りが、けっこういい角度で堪能出来た。
 最初に書き忘れましたが、今回はお馴染みのオープニング曲や幕間映像はありませんでした。幕間は、単独公演で用いている縦長のモニターを使って、そのときに流れている曲のタイトルを提示しているだけ、薄明かりの中でスタッフがセッティングを行い、板付きの演者が位置に着くのがうっすら見える。曲も、単独公演のオープニングで使われた、大竹涼太元マネジャーによるピアノ曲メインでした。さすがにどれがいつのかまでは特定できませぬ。
 2本目のネタは第18回「明日の風に吹かれないで」より《蓄積》。こちらはランキング第2位なんですが、これを生で観るのが楽しみでした。なにせこれは飯塚さんのストレス解消ネタです。もちろん、展開はちゃんと台本に従ってますが、途中で吐き出す怒りのなかにさらっと実際の鬱憤が混ざっている。そしてそこからの飯塚さんの暴走っぷりがほんとーに楽しい。一方で、他のお二人のダメージが心配ではありましたが……まったく容赦がなかった。こちらのネタも、新たに仕込んだ箇所もあって、やっぱりブラッシュアップされてる。
 3本目のネタは、今回採り上げた中では最も古い第5回「傘買って雨上がる」より《スマイルハウジング》。古いネタは配信でひたすら繰り返し鑑賞している私としても、確かにこれは名作と思っていたネタで、投票でも近年の名作に紛れて6位に食い込んでいる。3位から5位を選ばなかったのは……なんでかは察しがつく。この辺、《蓄積》とおんなじくらいテンションが高くて、演者が疲弊するからだ。その点、このネタは古いながらもいまに通じる03の巧さが感じられるので、採用したのは頷ける。如何せん16年も前のネタゆえ、劇中に出てくる不動産の家賃が現代に準拠し、探している物件もメンバーの年齢層に寄せたものになってますが、いちばん感心したのは、締めの台詞が映像として残っている当時のヴァージョンから変更されていること。過去のヴァージョンでは、回しを担当する飯塚さんにもヤバさを感じたのですが、この形にした方がいまの03のスタイルにも合っている。さすがだ。
 驚いたのは4本目のネタです。何と、第25回「寄り添って割食って」から《嫌いな上司》を持ってきた。このあとのアフタートークによれば、最近の大きなステージで実施している単独公演のネタをどうしてもひとつはかけたかったところへ、最新公演のこのネタが飯塚さん曰く「鳥肌が立つ」くらいのウケ方をしたので、単独公演終了からひと月くらいしか経たないうちに採り上げたとのこと。ゆえに、さすがに追加公演時点での仕上がりから大きな変動はなかったのですが、より近い距離で鑑賞する角田さんのキャラは出色でした。たぶん年末くらいにWOWOWライブでの放送か、来年春頃の映像ソフトリリースを楽しみにして欲しい。スゴいんだからこれ。脚本家の坂元裕二も「凄いね」と言ってたそうだ。
 5本目は、放送作家オークラが担当する、毎回大トリに置かれるやや長めのネタのほうのランキングで1位となった作品、第17回「時間に解決させないで」より《許せる心》……これが1位になったのも頷ける。こちらは角田さんの微妙にずれた、絶妙にダサいキャラ性が発揮され、なおかつ飯塚さんのひと言が最高に効いている名作です。このネタもまた、細かに過剰なところを加えてブラッシュアップされている。一方で、公演タイトルに引っかけた台詞をあえて省いているのもちょっと気が利いてる。いい遣い方だと思いますが、単独公演という枠組を外すとやや唐突にも聞こえるのです。
 以上でネタパートは終了。03の面々がちょこっと挨拶したあと、10分ほどの休憩を挟んで、アフタートークです。通常の単独公演よりネタ数が少ないし、終わるのも早いな、と思ってたら、このトーク部分が30分以上割いてあった。
 トークは放送作家オークラも交え、基本的に結成20周年の想い出を語り合うスタイル。当初は飯塚・豊本の二人によるアルファルファというコンビだったものが、プラスドライバーというトリオを解散して現場を離れていた角田がまず客演として、それから期間限定という体裁を経て東京03として固まる、という流れはファンならよく知るところですが、興味深かったのは、彼らが舞台での単独ライブ主体、という活動スタイルに至るきっかけ。大きかったのは、キングオブコント優勝からわずか10日で発生した、とある“事件”により、まだテレビに出ることこそ重要視されていたこの当時に、テレビに出ないことが許されるような立ち位置に追い込まれてしまったことだったらしい。そのとき腹を括ったからこそいまの成功がある、というわけで、もはや「運が良かった」と言ってのけるくらいになった模様。その結果、昨今の活躍する若手コント師のネタの仕掛けがほとんど東京03の完成させた構成に追随するほどになったのだから、何が起こるか解らない。
 また、オークラ曰く、いまやテレビ番組『ゴッドタン』を代表する人気企画の《芸人マジ歌選手権》が実はオークラの担当するラジオ番組に泉谷しげるが出演した際の出来事と、他ならぬ角田さんの存在が発端となっていた、という話にも驚きました。純粋に音楽が好きなのに、作る曲が絶妙にダサい角田さんの存在を使い、飯塚さんと豊本さんに水を口に含ませて角田さんのマジ歌を聴かせる、という稽古場でのちょっとした実験がそのまんま《芸人マジ歌選手権》の原型になっているのだそう。……ものすごーく納得がいく。
 話は非常に盛り上がり、他にも色々エピソードが登場してきたのですが、長くなるのでこの辺にしておきます。しかし、もっと色々と聞かせて欲しかったところではある。
 今回のエコー劇場での公演は、1年くらい前から飯塚さんが口にしていた「小さい劇場でやりたい」という願望が結実したものなのだとか。そして、まだ2、3個ばかり、やってみたいものがあるらしい。もしかしたらいずれまたこのエコー劇場か、或いは別の小劇場での特別公演が実施されるかも知れません。そのときも生で鑑賞したいところ……今回、相当凄まじい倍率だったそうなので、あったとしても狭き門になりそうだが。
 終了時間が早めだったので、付近で食事を摂るのはやめて、まっすぐ帰宅――するつもりでしたが、いつもと違う駐車場、しかも夜の移動だったせいで、道を間違えてしまった。まあ、すぐに道を調べなおし、あっさりと普段利用するルートに戻れたので、想定とそれほど変わらない時間に帰り着けました。恵比寿駅南側に用事がある場合は、ガーデンプレイスの駐車場を使うのはあまり賢明とは言えないので、南側の駐車場の位置や、そこからの道筋を研究しておかねば……東京03に限らず、何かのイベントがあるときに備えて。

この時計の意味はあえて説明しません。たぶんどこかで公開されるのを期待しましょう。
 この時計の意味はあえて説明しません。たぶんどこかで公開されるのを期待しましょう。またこの小さい時計に会いたいねえ。

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