『驚き! 海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』

ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン5入口脇に掲示された『驚き! 海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』ポスター。
ユナイテッド・シネマ豊洲、スクリーン5入口脇に掲示された『驚き! 海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』ポスター。

監督:田所勇樹 / 出演&ナレーター:さかなクン / ナレーター:水瀬いのり / ヒゲじい:龍田直樹 / 制作:NHKエンタープライズ / 製作&配給:ユナイテッド・シネマ
2021年日本作品 / 上映時間:1時間23分
2021年6月11日日本公開
公式サイト : https://umi-darwin.com/
ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2021/7/20)


[概要]
 海には驚きが満ちている。
 地球表面の7割を覆い、あらゆる生命の源となった母なる海。そこではいまも、多種多様な命の営みが繰り広げられている。時として群れ集い、愛を語らい、次世代へと命を繋いでいく。
 NHKの人気番組『ダーウィンが来た!』をベースに、いつものヒゲじい(龍田直樹)に加え、ナビゲーターとして海洋学者のさかなクンを、ナレーターとしてTVシリーズの次回予告でもお馴染みの水瀬いのりを招き、高画質化を施した映像を映画館の大スクリーンに展開する――


[感想]
 もととなったテレビシリーズのファン、というわけではないが、前作『恐竜超伝説』が最新の知見を子供にも親しみやすいよう工夫しつつ描いていたことに感心したので、今回も鑑賞してみた――ナレーターが水瀬いのりだったのも動機のひとつではある。
 結果、痛感したのは、「やっぱり自然ドキュメンタリーを退屈しない内容にするのは難しい」ということだった。
 子供向けという発想のない、本格的な自然ドキュメンタリーをいくつか観てきたが、いずれも尺の長さに対し、飽きが来るのが早い。個々の映像は貴重であり、映画として提供するからこその迫力も備わっているのだが、採り上げた映像がすべて観客にとって興味のあるものとは限らない。また、貴重ではあるけれど、決してインパクトの強くない映像も多い。そうしたものはどうしても構成上、中盤に置かれる傾向にあり、その結果、中弛みの印象を与えてしまうのだ。よほどしっかりと計算し、直接繋がりのない映像でストーリーを組み立てる、といった趣向でもない限り、倦怠感を切り離しがたいものらしい。
 本篇も、映像を群れや親子の絆、といったテーマで章立てをしていて解りやすいが、それでもだいぶ中弛みが厳しい。大人よりも飽きやすい子供が、果たしてどこまでついていけるか、私には断言しがたい。
 ただ、もしかしたら子供ならばそれほど退屈は味わわない可能性もある。大人だと、貴重な映像であっても知識があるため驚きには繋がらないが、まだ経験値の少ない子供たちにとっては目新しい要素はたくさんあるだろう。それを、子供にも親しみやすい表現を意識的に選ぶさかなクンの解説と、水瀬いのりによる平易で、ときどき遊びも含めたナレーションでうまく繋げていて、組み立てにはそつがない。さかなクンとヒゲじいのやり取りは少々幼稚だが、やもすると晦渋になりがちな生命の神秘を親しみやすく表現することには成功している。
 大人からすれば知っている情報が多い、とは言い条、生で目撃することの難しい現象をたくさん押さえた映像群に価値があることも確かだ。はじめから大スクリーンに投影することを前提とした撮影ではないようだが、特殊な技術で修正しているようで、決して見劣りはしない。
 大人が驚きや感動を味わうには物足りないが、まだ知識の少ない子供、或いはもともと海洋生物などに関心の薄かったようなひとにとっては充分に見応えがあるはずだ。テレビシリーズが好きだから、とか、声優に興味があった、といった些細な理由で脚を運ぶくらいのほうが、恐らく本篇にとっての理想的な観客になれるはずである――中途半端に、同傾向の大作に接してきたせいでスレてしまった私のほうがたぶんいけない。


関連作品:
恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!
羅小黒(ロシャオヘイ)戦記~ぼくが選ぶ未来~』/『劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!
ディープ・ブルー』/『オーシャンズ』/『日本列島 いきものたちの物語』/『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』/『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族

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