『ワーキングマン』

ユナイテッド・シネマ豊洲の入ったららぽーと豊洲入口脇の壁面に掲示された『ワーキングマン』ポスター。
ユナイテッド・シネマ豊洲の入ったららぽーと豊洲入口脇の壁面に掲示された『ワーキングマン』ポスター。

原題:“A Working Man” / 原作:チャック・ディクソン『Levon’s Trade』 / 監督:デヴィッド・エアー / 脚本:シルヴェスター・スタローン、デヴィッド・エアー / 製作:デヴィッド・エアー、ビル・ブロック、ジョン・フライドバーグ、クリス・ロング、シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ケヴィン・キング・テンプルトン / 製作総指揮:ヴォロディミール・アルテメンコ、レイチェル・コール、アレクシス・ガルシア、テディ・シュウォーツマン、マイク・シャンクス、ジル・シルフェン、イェヴゲン・ステュンプカ、トーマス・ザドラ / 撮影監督:ショーン・ホワイト / プロダクション・デザイナー:ナイジェル・エヴァンス / 編集:フレッド・ラスキン / 衣装:ティツィアナ・コルヴィシエリ / キャスティング:フィニアン・トウイード / 音楽:ジャレッド・マイケル・フライ / 出演:ジェイソン・ステイサム、ジェイソン・フレミング、アイラ・ジー、デヴィッド・ハーバー、アリアンナ・リヴァス、マイケル・ペーニャ、エメット・J・スキャンラン、マキシミリアン・シンスキ、イヴ・マウロ、コーキー・ファルコウ、チディ・アシュフォ、アンドレイ・カミンスキー / 配給:KLOCKWORX
2025年日本作品 / 上映時間:1時間56分 / 日本語字幕:平井かおり / PG12
2026年1月2日日本公開
ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2026/1/2)


[粗筋]
 一家で建設業を営むガルシア家の娘ジェニー(アリアンナ・リヴァス)が、友人達とパーティに出かけたあと、忽然と行方をくらました。予定されていたピアノの発表会にも現れず、家族は悲嘆に暮れる。
 父親のジョー(マイケル・ペーニャ)は、自らの会社で現場監督として勤めるレヴォン・ケイド)に相談する。雇われて数年、素性を語らなかったレヴォンだが、自身の父親が軍に勤めていたジョーは、レヴォンが特殊工作員ではないか、と捉えていた。過酷な世界を抜け出し、平穏な暮らしを築こうとしていることを察しながらも、警察が動く可能性が低い、と捉えるジョー達には他に頼る相手がいなかった。
 ジョーの見込んだとおり、レヴォンは英国の特殊工作員だった。だが、忠実に任務を果たすあいだに、妻が自殺してしまったことで、愛する娘メリー(アイラ・ジー)の親権を義父に奪われ、取り戻すための裁判費用を工面している。現役を退いたのも、暴力や危険から距離を置いて、忘れ形見であるメリーと静かに暮らしていくためだった。
 しかしレヴォンは、ガルシア家の恩に報いるため、ジェニーとの約束を果たすために、彼女捜索を始めた。
 まずレヴォンは、ジェニーの痕跡が途絶えた店を特定する。ジェニーとも接触していた店のバーテン・ジョニー(デヴィッド・ウィッツ)に動きに不審な点があることに気づき、ジョニーの追求を試みる。薬物の違法取引を陰で行っていたジョニーを追求するさなか、仲間の男が2人現れたが、レヴォンには敵ではなかった。
 成り行きで3人を殺してしまったレヴォンは、あえてジョニーの住居近くで張り込む。やがて、奇妙な服装した男2人と、彼らに敬意を払われる年輩の男が現れた。どうやら修羅場の痕跡を消す専門家らしき集団も登場したことで、レヴォンは彼らがジョニーの後ろにいる組織の人間であると察知、レヴォンはあとを追う。
 果たしてレヴォンは、恩人の娘を無事に取り戻すことが出来るのか――


[感想]
 鑑賞後に知ったのだが、本篇にはちゃんと原作があるらしい。『バットマン』なども手懸けたコミックライターのチャック・ディクソンによる、レヴォン・ケイドを主人公とするシリーズの第1作『Levon’s Trade』がそうらしい。内容についてはあまり調べられなかったが、もしかしたら建設の現場監督として働く、という部分は、シリーズにとって重要なものではなく、あくまで堅気となった元特殊工作員の活躍を描いたシリーズなのかも知れない。
 そう推測したのは、本篇があまりにも“現場監督”という設定を疎かにしていたからだ。
 いちおう、建設現場ならではの立ち回りは冒頭に用意されているが、恩人の娘ジェニーが誘拐されたあと、この肩書き、技能を活かすような場面は皆無と言っていい。
 率直に言えば、ここがいちばん物足りなかった。なにせ、映画としてのタイトルが『A Working Man』である。“働く男”という側面を強調したいのだ、と捉えてしまえば、現場監督という設定を活かしたアクションや活躍を期待したくなる。むろん、特殊工作員だって立派な職業だろうが、主人公レヴォンは家族のために命のやり取りもある現場を退き、危険は伴うが堅気の仕事に就いたのだ。そう思えば、余計にこの内容ではしっくり来ない。
 だが、その点を除けば、主演のジェイソン・ステイサムの魅力はしっかり堪能出来る作品である。
 ステイサムのフィルモグラフィを並べてみると、“現役を退いた専門家”という設定はさして珍しくない。他でもない、本篇に先行する主演作にして、監督との初コラボとなった傑作『ビーキーパー』がそうだったし、名優たちと共演した『キラー・エリート』、個人的には哀感が好きな『ハミングバード』、本篇と同じシルヴェスター・スタローン脚本による『バトルフロント』、世界的にヒットしたパニック映画『MEG ザ・モンスター』でも、導入はリタイアした潜水士である。<こと、年輪を重ねてからというもの、ステイサムはこういうキャラクターが板に付いてきて、積極的に演じている印象がある。
 しかも大抵は、体力、技術的な衰えを意識したから、というのではなく、家族を優先するとか、ひとりの生活を優先するとか、或いは現場でのトラブルがきっかけだから、いざ戦いの場に赴けば、すぐさまその技能を遺憾なく発揮する。これまた本篇も同様ゆえ、見せ場までのタメが非常に適度で、スムーズにステイサムの世界観に引き込まれる。
 そしてやはり、どの場面にあっても非常に強い。ちゃんと傷つくし、ピンチに陥る場面もあるが、基本的にはプロフェッショナルの手腕でしのいでいく。アクション俳優としての出世作『トランスポーター』シリーズのような、インパクトのある見せ場こそないものの、まさに経験を積んだプロを感じさせる手際で観る者を魅了する。
 本篇について惜しむらくは、映像的なこだわりなのか、アクションが全般に暗い場所で展開するため、細かな動きが把握しづらい点だ。レーティングが上がりすぎるのを避けるため、あえて曖昧に描く、という見せ方もあるが、少々その傾向が強すぎて、いささかもどかしい印象だった――私が観に行った劇場の調整が合ってなかったのかも知れないが。
 だがその一方で、他の作品にはなかった面白さも本篇にはある。、こす。 ひとつは、クライマックスにおける、敵側とのやり取りである。非情さの中に、敵味方を超えたリスペクトを留めたひと幕は、本篇にスパイスを加えている。
 もう一人は、レヴォンが救出に向かう恩人の娘ジェニーだ。最初こそ絶望に打ちひしがれていたが、それでも生きる希望を捨てず、幾度となく抵抗を試みる。結果として、また窮地に陥るものの、その逞しさは決してただ救われるだけのヒロインではない。クライマックスで見せる活躍が頷けるし、終盤の行動が爽快なのも、この強さをきちんと描いているからだろう。
 同じ監督・主演による『ビーキーパー』が、恐らく今後もステイサムの代表作に挙げられるのでは、というくらい魅力をストイックに詰め込んだ傑作だっただけに、見劣りは否めない。しかし、ジェイソン・ステイサムの活躍を堪能する作品としては及第点だと思う。やはりこの人、俳優としての自分をよく理解している。


関連作品:
フェイク シティ ある男のルール』/『サボタージュ(2014)』/『フューリー』/『スーサイド・スクワッド
キラー・エリート』/『ハミングバード』/『バトルフロント』/『MEG ザ・モンスター
X-MEN:ファースト・ジェネレーション』/『スナッチ(2000)』/『トランスポーター2』/『ブラック・ウィドウ』/『運び屋』/『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』/『エクスペンダブルズ ニューブラッド』/『ジェントルメン(2019)
96時間

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