直前
早めに出かけようと思ったら、久々に引っ張り出した自転車の前輪ブレーキが怪しげに緩んでいたので慌てて工具箱を漁って締め直したりしているうちに遅くなってしまい、政宗九さんらとの待ち合わせ場所に到着したときにはいちばん最後になっていた。出かけるより前、買いに行った昼飯は間違えられるし……厄日か。
太田忠司インタビュー
到着後、控え室で雑談したあと(一部には毎回ここに参加するのが楽しみだという意見もある)、大広間にて開会式、即太田忠司氏のインタビューに突入。インタビュアーは杉江松恋氏。
話はデビューに至る経緯から――ではなく、創作背景から。デビュー作である『僕の殺人』以来の三部作に通じる背骨について窺うと、これ一作で終わりという可能性も考えて、若い頃のドロドロとしたものを詰め込もうという意図だったとのこと。そこから自然にデビュー以前に話が推移する。それまでまったく読まなかったものが小林信彦などから小説にのめり込み、ほぼ同時期に創作に入ったこと、初期はかなりテクニカルな作風に憧れていたこと(この辺は新刊『月読』の巻末インタビューでも触れられていますが)などなど。個人的には『月光亭事件』がミステリに漫画風のイラストを添えた最初期のシリーズであったことが確認できたのが嬉しかった。今にして思うと、私はあれがあったから近年増えたイラスト主体の作品に抵抗を覚えずにいられたのだと思っていたので。
杉江氏の舵取りの巧みさもあってかなり興味深い話になりましたが、ちょっと時間が押せ押せだったのが残念。
幕間・パニックin蕎麦屋
全体企画・個別企画の説明があったあと、休憩へ。このあいだに各自夕食の買い出しに出かけたり入浴したりするのですが、誰からともなく近くの蕎麦屋で夕食を摂ろう、という話になったので乗っかることに。
向かったのは、何回か前のMYSCONの直前に西澤保彦さんを囲んで食事を摂った蕎麦屋。だろうなー、と思ったときに微かに厭な予感はしたのですが、突如訪れた12人の小団体にお店の人が半分パニックに陥ってしまった。お茶が出てくるまでに十分、注文伝票をこっちで書いてお渡しして、出てくるまでに更に時間を費やす。その間えんえんMYSCONからの流れとは思えない食べ物談義に明け暮れ、注文が届いた人から順次食べ始めて、片づいた人から急ぎ会場に戻るという流れに。私が食べ終わったのは、全体企画が始まる時間ジャストでした。
全体企画・MYSCONなんでもベスト10
というわけで数分遅れで到着。企画内容は、グループごとにクジで決まったテーマに沿ってベスト10を列挙する、というもの。私が参加した企画は……思うところあって内緒。今回はその場で(何故か)パフォーマンス込みの発表がなくなったので、いつも発表に駆り出されがちな人々が妙に安心した面持ちだったのが印象的でした。
個別企画1コマ目・海外ミステリ企画「MYSCON洋画劇場」
続いて個別企画、1コマ目は『螢』の読書会と海外ミステリ企画、MYSCON洋画劇場。海外のミステリ映画作品を、映画好きのサイト管理人作成のレジュメを中心にあれこれ語ろうという企画。政宗九さん・石井春生さんとともにレビュアーとして参加いたしました。
各人四・五作挙げてそれについて語り、随時参加者からもお薦め作品を提示して頂いたり――という具合に進んでいくのですが、予想以上の盛況もあって結構ギチギチ。政宗さんは『殺人の追憶』をお薦めしておきながら実際は『ロストメモリーズ』の紹介に力を入れていたり、石井春生さんは『デストラップ 死の罠』を中心に定番の作品について語られたり、素天堂さんは最近ようやくDVD化された『毒薬の老嬢』について語られたりするなかで、昔の映画は殆ど観てないが最近の作品については止むことを知らない私は『SAW』について徹底的に語らせていただきました。レジュメには原作付きも別途に挙げましたが、やっぱり欠点込みで『SAW』は観て欲しい作品です。
一向に話は尽きそうもありませんでしたが、時間が来てしまったのでお開きに。私はこの一時間ちょっとでほぼ気力を使い果たしました。でも満足。
最後に、参加された方にちょっとご注意。ネタを伏せつつ一所懸命解説したつもりなのですが、一箇所だけ意図的に“嘘”をつきました。御覧になった方はもしかしたら気づかれているかも知れませんし、これから御覧になる方も「あれ?」と思われるかも知れませんが、そこだけは勘弁してください。
※2005/04/06追記
こちらに簡単な補足をしておきましたので、参加された方・興味がおありの方は御覧ください。
個別企画2コマ目――但しひとやすみ。
2コマ目は近田鳶迩さん入魂の児童向けミステリ紹介と持ち込み企画のミステリソムリエでしたが、いずれもかなり門外漢という想いが拭えないし、途中経過だけでもアップしておきたかったのでキャンセル。荷物を置いた部屋にて、早くも寝る用意をしてしまった方を交えて歓談しつつ、全体企画の項までアップ。話に気を取られていたのと、すっかり疲れ果ててもはや言葉が出てこなくなってしまっていたので、なかなか書き進まなかったのです。
恒例(?)ゲリラ企画・MYSCON教育委員会
すっかり恒例になってしまった挙句、とうとう大部屋での突発的開催から企画部屋を使用しての独立企画になってしまったMYSCON大喜利シリーズは予定が押して午前一時半からの開始となりました。ていうか年々凝り方がレベルアップしてないか。
今年はテレビ番組『平成教育委員会』を元ネタに、ミステリ関連のクイズを英語・社会・体育・国語と四科目に見立てて出題し、演者は時としてまともに応えつついつも通りのボケを飛ばし、一方で観客も手渡された用紙に解答を記して一緒に楽しむという主旨に。英語では海外ミステリの原題から邦題を当てるとか、創元推理文庫の日本人作家シリーズにつけられている英題から本来のタイトルを当てたり、社会では「歴史」と言い張ってクイーンの国名シリーズや「このミス」往年の結果の穴埋め問題を出し、体育ではミステリのタイトルをジェスチャーで当てるという無茶極まりないテーマに挑戦し、国語では想像通り京極夏彦らのそもそも字を思い出せねーよという問題を出したりと、ほんとーに凝りまくった作り。
出色は体育と題したジェスチャー。『新宿鮫』あたりが出て来たときの嘆きとか何故か異様に早く当てられた『ドグラマグラ』とか、久々に心底笑かせていただきました。あと進井瑞西さんの怪しげな漢字は是非ともブログにアップしといていただきたい。
最後は卒業式を倣ったネタで締め括り。ちなみにあれは「シュプレヒコール」と言っても間違いではないらしい>たれきゅんさん
大部屋ダラダラ
ゲリラ終了後は未だ眠気を堪え続けている面々でだーらだらと雑談。私は毎年のように市川憂人さんとか杉本@むにゅ10号さんとかと喋っているよーな気がする。主にライトノベルやそれすら読まない層をどうやったら本格ミステリに取り込めるのか、とかそれ以前に生き残れるのか我らは、といった話のまわりをぐるぐると巡る一方で、MYSCONに参加している面々が共通して読んでいるのってどのあたりの作品なのかという話も出て来て、起きて聴いている人十数人のみながら挙手でアンケートを採ってみたところ、『九マイルは遠すぎる』や『そして誰もいなくなった』という大定番が強みを見せる一方で、『十角館の殺人』『占星術殺人事件』は全員、『月光ゲーム』も数人程度が読んでいないだけという結果になったのにちょっと驚く。なるほどこの辺がやはりMYSCON参加層の原体験になるのか。一方で例のベストセラーを読んでいたのは二人だけでしかもどっちも買ってない、というのがいかにもマイノリティー。
先日私がダブらせてしまったカーの『絞首台の謎』は市川憂人さんに押しつけましたが、前述のアンケートで実はその市川さんがカーを読んでいない、という衝撃的な事実を知って、ちょっと申し訳なく思ったり――私自身はまだ読んでない『絞首台の謎』ですが、世評を考えると間違っても初体験で選んでいい作品じゃなかったような……。
あと、大広間でこんな本を頂戴しました。
現在では入手困難な“名無しの探偵”シリーズ初期作品。古本屋がよいの習慣がない私にはよけいにお目にかかる機会のない一冊だけに嬉しさもひとしお。ありがとうございます〜。
コメント