新耳袋トークライブ43

 なんかこの日記で前回を43回と表記してますが、正しくはこれが43回目、のようです。誰かが数え間違えているのでなければ。

 最近は大人数で訪れることの増えていたこのイベントですが、今回は欠席者が相次いで、久々にN氏と二人きり。お互い慣れているので、テーブルなしの身動きのしやすい位置に陣取る。

 ドリンクの注文がほぼ行き渡るのに時間がかかり*1、午前一時頃にようやく開始。いつものように冒頭は木原浩勝氏が単独で登壇し、幾つか宣伝。私らにとっては怪異蒐集家としての顔が強烈な木原氏ですが実際には多岐に亘って仕事をされており、まず冒頭で氏の関わったゲームのどこよりも早い動画を上映してちょっと時間を稼がれる。話が逸れるのはいつものことなのでこっちも気には留めませんがさすがにこれだけで三十分近く費やしているのはどうだろう。いや、ものの見事に乗せられて、欲しくなってしまったんですけど紹介されたゲームが。

 ひととおり宣伝が終わったところで中山市朗氏が登場され、ようやく本番へ。まず近頃発見したという一風変わった、しかも背景が奇妙に目出度い心霊写真を愛でたのち、新たに取材されたエピソードが数点矢継ぎ早に披露される。このくだりで印象的だったのは、中山氏が体験された“自転車の老人”の話と、通常なら封印されている写真にまつわるエピソードから発展して、ある大事故にまつわる怪異譚に推移していったくだり。とりわけ後者は時期が時期なだけにかなりインパクトが強い。更に凄かったのは、契約者が敷金・礼金を振り込んだ直後に失踪する、という出来事が三件相次いだ不動産物件にまつわるエピソード。なんでそんな不可解な出来事が相次ぐかも不思議ですが、その物件を任された彼に連れられてその場所を訪れたという女性の目撃談がまた型破りで凄まじかった。

 休憩を挟んでの第二部は、木原氏が枕代わりに第一部で披露した出来事のフォローをしたのち、中山氏が二十数年振りにあの“山の牧場”を再訪した一部始終のレポート。御本人が言い出したことではなく、ある方の提案で総勢十二名のさながら特殊部隊のような面子で乗り込んでいったとのこと。写真を交えて語られる山の牧場は、『第四夜』に綴られているのとはだいぶ様変わりはしていますが、やはり異様であることに変わりはない。しかし、北野誠氏や映画秘宝の面々などが乗り込んだりするたびに山の牧場の状況は変化を繰り返し、どうやら今回の突入で一区切りとなりそうな気配です。何故か、はいつか発表されるであろう中山氏のレポートをお待ちください。……一部微妙な展開もあったので、公表されないままに終わるかも知れませんが。

 ここで、第一部にて木原氏が披露したエピソードの体験者御本人が登壇して、お二人に絡む形で他の持ちネタを語る。放送業界に携わる方なのですが、これが驚くほど秀逸な話をお持ちで、のちに木原氏をして「面子ぶち壊しじゃないですか」と言わしめるほどでした。体験者は人にそれを語ったあとでその内容を忘れてしまう、という新耳の著者お二人もしばしば経験している出来事を拡張して、ほとんど悪い冗談にまで突き詰めてしまったようなエピソードに、電車の窓から目撃した謎の物体、そしてご自身の小学生時代のシュールな現象など。ひとくさり感心させられたところで、二度目の休憩。

 残り一時間ほどを費やしての第三部は、先ほどのゲストにふたたび登壇していただいて、引き続き三人で矢継ぎ早に語っていく。まずゲスト氏の籍を置く放送業界に関連する話が続いたあと、木原氏がとある著名人から聞かされた話二本。よくある建物の因縁話にちょっと一ひねりを加えたような話に、これも定番のエピソードにまさかの続きが付け足される話で、小振りながらも衝撃は充分。続く中山氏が新たに発掘してきた新・夜警の報告談がまた怖かった。あんなにいちいち「うわー」という呻きの上がった話も久々です――何故か同じくらい笑いも湧きましたが。しかしこれで終わりではなく、続いて木原氏の紐解く焼身自殺を巡る経緯がまたとんでもない。成り行きはパターンと言えばパターンなのですが、幾つかの現象についてその都度確認を入れているので、生々しさがただごとではありませんでした。更に木原氏取材のとある旅館の話に、もひとつゲスト氏が学生時代に友人から聞いたかなり不気味な体験談と、とある大学にまつわる中山氏の話があって、ほぼ六時ピッタリに閉幕。

 先週のコミケ以来ずーっと眠気が抜けず、途中で寝てしまうかと危惧していましたが、それどころではない素晴らしいまでの実の詰まり具合でした。……こらやっぱり、来年の新刊もあるな。『新耳袋』という名前を継承するしないは別として。

*1:いつものことだ。

コメント

  1. 冬野 より:

    ちょっと話題はズレますが『新耳袋』系ので面白そうな怪談本ってなると、どのあたりがお奨めですか? もちろん、新耳袋や古典は外して。

  2. tuckf より:

    ……まっっったく思いつきません。はっきり言って、類書が存在しないような状況なので。強いて言うなら、ちょっと古くなりますが福澤徹三さんの『怪を訊く日々』あたりがいちばんいいかも。で、そのクオリティをリアルタイムで読みたいなら『幽』に頼るぐらいしか。

  3. 冬野 より:

    やっぱり難しいですか。急に何か怪談本が読みたくなったのですが、書店へ行って何冊か立ち読みしても「何じゃこりゃ」となったんで。どれも、あんな水準ですかね。ちなみに『怪を訊く日々』は以前に購入済み。

  4. tuckf より:

    ですから、基本的に夏に羽虫のごとく湧いてくる怪談本を読むときは、駄目であることを前提にそのゲテモノっぷりを楽しむとかツッコミ倒して堪能するつもりでいないとしんどいと思います。たまーに拾いもののエピソードもあったりしますし。

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