『容疑者室井慎次』監督・脚本:君塚良一/主演:柳葉敏郎/配給:東宝

 さあ、遂にこの日が来ました。『交渉人真下正義』に続く『踊る大捜査線』スピンオフ企画公開の日が。舞台挨拶つきの初回は朝八時十分から、と前作同様早い時刻ですが、先週わざわざ観る映画を変えるリスクを冒してまでチケットを購入したので、意地で早起きして有楽町に向かう。席の位置は少々後ろ気味でしたが、文句は言うまい。

 念のために作品を紹介しておくと、シリーズの重要登場人物である警察庁のキャリア・室井慎次が捜査の成り行きで被疑者を死なせてしまい、警察内部の力関係と謀略によって逮捕されてしまうところから始まる衝撃のサスペンス容疑者室井慎次』(東宝・配給)。評価の仕方が厄介で、感想を書くのにだいぶ手間取ってしまいました。シリーズから切り離しても鑑賞出来るような作りにしているのは『交渉人真下正義』同様、しかしシリーズ全体として見ても重要な局面を迎えるエピソードであるため、やっぱり切り離して考えるのは難しい。一方で、旧作とのリンクの仕方も、単独の作品としてのプロットにも問題が多く、またどちらの面からも捨てがたい魅力を感じる……詳しい感想は、「二ヶ月で招待状まで用意しちゃったのかよお前!!」からどうぞ。

 さて、上映終了後は舞台挨拶である。前の『交渉人真下正義』のときと同様、司会はフジテレビアナウンサーの笠井信輔。大人の事情とかで、出演者登場の前にやけに喋る。このとき、きのうの夕方にはお台場で最後の試写会のようなものが開催され、六本木ではカウントダウン上映が行われた話をしたあと、「昨晩のカウントダウンにも参加された方、いらっしゃいますか?」という質問をしたのだが、えらい沢山手が挙がる。ざっと観た印象で三割、錯覚を削っても二割ぐらいはいたはず。いやもう、マニア多すぎ。二回連続で舞台挨拶を観に来た俺も大概駄目だが。

 ほんとーに随分長く話すなー、と思っていたら、どうも準備に手間取っていたらしい。出演者たちは舞台袖ではなく、何と客席後ろの扉から入ってきた。『踊る〜』シリーズ定番の室井慎次登場の音楽にのせて、柳葉敏郎を先頭に八人が客席のあいだを通って壇上へ向かって進んでいく光景はけっこう凄い。順番はうろ覚えですが、八嶋智人がうしろから二番目だったのは間違いない――何故ならあの男、客席にポップコーンまきながら移動していたから。のっけから暴走気味である。

 舞台挨拶の面子は柳葉敏郎田中麗奈哀川翔佐野史郎筧利夫真矢みき八嶋智人君塚良一監督。今回も次の回の開始予定時刻までえらい余裕があり、たっぷり話す話す。シリーズ第一話からの付き合いで、よもや中央に立つ日が来るとは予想していなかったらしい柳葉敏郎は、前夜のイベントにも参加していたにも拘わらず初日の感慨は更に別格だったようで、涙ぐみそうになったところを哀川翔に指摘されて踏み止まるという一幕があったり。当の哀川翔も、ほかの作品の初日とは異なる熱気に言葉を失っていた模様。

 登場場面で弾けていた八嶋智人は自分の挨拶の番でも弾けてました。柳葉敏郎をジョニー呼ばわりしたり、嫌われ役ゆえ観客の歓心を買うのに必死だったと吐露したり(先刻のポップコーンもその一手だったそうだ。いちど落としたのを劇場の人が追加してくれたとのことで、劇場容認のうえだったらしい)と短い間に喋る喋る。嫌われ役の先輩である真矢みきが、このシリーズの観客は寧ろ喜んでくれるから、と励ましたりしていた。その真矢みきは二年前の『THE MOVIE 2』でのあんまりな悪役っぷりゆえ、またこの現場に関わることが出来るとは思っていなかった、出られるとしても室井の弾避けになるとかそんな感じだと思っていたとか。しかし蓋を開けてみれば、前回とはまるで人が違ったような雰囲気で、個人的にはいちばん儲けていたのが彼女だったという気が。

 役者陣での締めは筧利夫だったのですが、随分静かだと思っていたら、敢えてスイッチをオフにしていたらしい。直前の真矢みきの挨拶途中で、笠井信輔筧利夫の印象について訊ねるつもりがまるで彼に話を振っているような言い方をしてしまったために慌ててスイッチを文字通りオンにするという一幕があったあと、自分の番ではさながら選挙の応援演説のように大音声で室井=柳葉を持ち上げまくる。今回さらに関係性が微妙になった新城役について、「室井さんと一緒に住むのではないかと」思った、と言った挙句、「これから自分はロバートと呼んでもらいたい」と発言して大爆笑を誘う*1。ずーっと戯けまくりだった八嶋と対照的にメリハリを利かせた印象の与え方は、ハイテンションキャラの先輩ならではの貫禄でした。

 シリーズ作品初監督となった君塚良一が、『交渉人真下正義』の大ヒット中の製作でプレッシャーが並大抵ではなかったことを告白しつつ、自信の程を窺わせてひととおり終了。マスコミ向けのフォトセッションのあと、柳葉敏郎がまた言葉を詰まらせつつ「室井慎次は幸せ者です」と締めくくった姿には、さすがにこっちもちょっと感激しました。

 これの当たり具合で、更なる新作が用意されるか否かが決まるようなので、頑張ってほしいところです――まあ、これだけ固有ファンがいれば今回も一定以上のヒットは確実だと思うんですけど。

 ちなみにこのあと室井と新城は大阪に飛び、甲子園で始球式に臨んだそーです。新城がコートを受け取って、室井が投げるんだとか。……み、観たかった。

*1:柳葉がジョニーと呼ばれたことにかかっています、念のため。

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