新耳袋トークライブ44

 終了後はすぐさま近くにある集合場所へ。すっかり毎回お馴染みとなっているN氏と、前回は欠席だった作家のK氏(別に名前を出しても問題なさそうな気はしつつもとりあえず伏せる)と合流して、それから番号順に会場へ。回を追うごとに動員数が増えていたこのイベントですが、今回は冷え込みに加えて金曜日という異例の日取りもあってか、いつもより若干ゆとりがあるような感じでした。……あくまで、いつもより、ね。基本的に、客にだいたいドリンクが行き渡ってから開演という運びで、混雑で店側の処理能力を超えてしまい開演時間がずれ込むというのが毎度の出来事だったのですが、今回はほぼ定時にスタート。

 ……が、しかし、今回は肝心の内容について、ちゃんと系統立てて記憶しておりません。もともと風邪気味で、外出することもあって用心のために風邪薬を服用しており、途中で寝てしまうかも、という危機感は抱いていたのですが、そのうえに第一部で最初にかけられた話題がいけなかった。ある怪奇映像の収録されたいわゆる“心霊スポット”を、雑誌『幽』の企画で中山市朗氏と北野誠氏が訪問したさいの模様を収めたビデオをもとに話を拡げていったのですが……ぶっちゃけ拡がらない。何故なら、何も起きなかったから。問題のスポットは既に廃墟となったホテルなのですが、廃業するのも宜なるかなという立地条件で、しかも怪奇現象以前に、夜中に入って万一足を踏み外したら死にかねないような状態になっており、そういう意味での怖さはあっても怪奇現象らしきものは何事も起きず、だーらだらと現場を検証するだけだったので、詰まらないとまでは言わなくとも、山場がないので気を抜くと眠気に見舞われる。あれは風邪薬や体調のせいばかりではないと思います。この話題が終わっても、最後までぼんやりとした眠気に囚われて集中出来ませんでした。

 しかし、さすがに『新耳袋』の著者ふたり、これでは終わらなかった。ひととおりビデオに関する説明が終わったところでまずは短めのエピソードを相互に披露し、木原浩勝氏がふたたび中山氏に戻そうとすると、若干長い話になるから、ということでいったん休憩。再開して、更に軽い話――といっても、これもちょっと凄い話でしたが、説明しづらい事情もあるので省略――を挟んだあとで、中山氏が問題のちょっと長い話を始めた。当初はパチンコ屋などで確認された、一風変わってはいるけれど細かなエピソードが幾つか出て来ただけだったのですが、それらを提供した人物がのちに中山氏に紹介した方が凄かった。以前、幽霊屋敷としか言えないような場所に住んだことがあるそうで、まずそこで発生した異常時が披露されたのですが、ひととおり話したあとで中山氏は写真を取りだして「ちゃんと行ってきました」――当然の如く湧く拍手。木原氏も聞いていなかったそうで驚くことしきり。

 当事者同伴で訪れたもののなかなか辿り着けなかったのは、住んでいたころから十数年経過して、話に登場した際立った特徴が失われていたせいだったからなのですが、その変化にも異様な兆候が確認されている。検証していった結果、この廻りの土地は非常に多くの怪事があるようで、そのすべてが一点に収束するのが凄まじい。しかもこの土地と、さきほどビデオで取材の模様が報告されていた心霊スポット、同じ川の近くにある。そう考えていくと、ビデオの途中に登場していた「水死者多発」という無数の看板にも異様な理由が思い浮かんでくる。あれほど悩まされていた眠気がいっときブッ飛ぶぐらいに衝撃的な報告でした。

 再度の休憩を挟んでの最終パートでは、木原氏がまとめて取材された、各地のアミューズメント・パークにまつわる怪談を披露した。巷間、都市伝説のように言い伝えられる幽霊話はほとんど否定される一方、まったく違うところに怪異が確認されている、というパターンが多いという。しかも観客の目に留まるようなところでは基本的に現れることがなく、作業のための地下通路であったり、また従業員のように常日頃から施設やイベント内容を把握している人間ではないと解らない種類の怪異が多いとのこと。寧ろ観客は自分では気づかないうちに従業員に対して怪異現象を知らしめ保証する役割を果たしていることがほとんどで、無自覚のうちにそういう役を割り振られているかも知れない、と想像するとまた妙な怖さがあります。終盤では現在も某アミューズメント施設に勤務しているという女性が壇上に登って、木原氏の振りに答える格好で体験談を披露されて、間もなくお開きの時間となりました。

 序盤のビデオのために話の順番や細かい内容は覚え切れませんでしたが、トータルではなかなか聴き応えのある回でした。途中で発表された短めの話にも結構良質のものがあったはずなので、後日、録音したものを整理して聴き直さないと。

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