スレイヤーズすぺしゃる(26) ミッシング・セイント

スレイヤーズすぺしゃる(26) ミッシング・セイント スレイヤーズすぺしゃる(26) ミッシング・セイント』

神坂一[著]/あらいずみるい[イラスト]

判型:文庫判

レーベル : 富士見ファンタジア文庫

版元:富士見書房

発行:平成18年04月25日

isbn:4829118113

本体価格:520円

商品ページ:[bk1amazon]

 本編である長篇シリーズ完結後も発表され続けている、ライトノベルの定番シリーズ第26巻。追放された賢者の遺物を発掘する現場で多発する事故の原因を調査に赴いたリナが出逢ったのは、間違った方向に個性を追求する人々だった、という表題作。ワインの産地を席巻する巧妙な混ぜ物ワインを排斥するためにリナたちが奮闘する『混ぜ物ワイン探訪記』。嘘くせー手紙にあっさり誘導される青年の純真極まりない冒険譚『シッティング・ダック』。個性の追求が間違った方向へ完璧に行き着いてしまった書き下ろし新作『未知なるキメラに個性を求めて』の全四話を収録。

 異様な安定感は本書でも変わりない。間違った個性至上主義に凝り固まった思い人に応えるため両腕にヤットコをつけ微妙な語尾で個性を立てた人が、果たして意義があるのか客観的には疑問符のある遺跡発掘に奮闘する表題作は言うまでもなく、成り行きは有り体でも“流れのワイン職人”とその周辺を巧みにコントロールして意外な物語を構築してしまう『混ぜ物ワイン探訪記』など、見せ方は絶妙だ。

 そのぶん、話の構造はだいぶ単純化しており、見方によってはマンネリでもあるのだが、ここまで来ればマンネリさえも魅力と言える。しかも、毎回こうも個性的なキャラクターや設定を用意しておきながら、基本的に食われることがない主人公・リナとその金魚のうんちナーガの完成度にも改めて感心する。

 もう読んでいる方の大半もいつ終わるかとか気にしていないはずなので、このまま著者が存命の限り続けて欲しいシリーズである――それはある意味、リナにとっては不幸という気もするが。

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