『ゆるしてはいけない』
判型:文庫判 レーベル:ハルキ・ホラー文庫 版元:角川春樹事務所 発行:2006年7月18日 isbn:4758432465 本体価格:580円 |
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『popteen』誌上に連載されている、十代・二十代女性の恋愛にまつわる“恐怖”を綴ったシリーズ、『つきあってはいけない』『ふりむいてはいけない』に続く第三集。連載分二十話に書き下ろし十六話を加えた、全三十六話を収録している。
毎年毎年よくもまあネタが続くものだ……と思う一方、時代とその風俗に合わせて恋愛における異常性とそれを象徴するアイテムも変化していくわけで、そうそう簡単に尽きるはずもない。作家志望であったりバンドマンであったり、というのは往年のパターンだが、インターネットを介して不意に侵入してくる“悪意”といった今日的な主題も盛り込んでいる。このシリーズはいわば主題を絞った『東京伝説』と言え、それ故にヴァリエーションもやや限られてしまっているが、飽きることがないのもそうした時代を反映した作りゆえであろう。 しかし今回何よりも驚いたのは、人間自体の狂気を扱っているシリーズであるがゆえに登場しないだろう、と高を括っていたところに、にわかに本物の怪異が立ち現れたことだ。だが、ちゃんと最終的には人間の無邪気な悪意に還元されていくあたり、きちんと弁えている。 本書は前2冊と比較して、何者かの無邪気な行動によって体験者が悲惨な目をみる、というパターンが増えている。オチに先方からの本気を疑いたくなるような謝罪があって、エピソードによってはそのあとに「ゆるしてはいけない」という一文が添えられる。あまりにパターン化しすぎていて、潤色を疑いたくなってしまうのが難ながら、読み物としては熟練の安定感があり、気軽に読める。 ……ただ、時として本文より、挿入されている写真のほうが怖いと思ってしまうのは、どうなんでしょう。 |
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