かりん 増血記(7)

かりん 増血記(7) 『かりん 増血記(7)』

甲斐透[著]/影崎由那[原作・イラスト]

判型:文庫判

レーベル:富士見ミステリー文庫

版元:富士見書房

発行:平成18年9月15日

isbn:4829163682

本体価格:540円

商品ページ: [bk1amazon]

 吸血鬼の一族に生まれながら、逆に血が増えてしまい定期的に他人に供血せねばならない因果な体質の少女・真紅果林を主人公とした人気コミックのノヴェライズ、久々となる書き下ろし長篇第7作。

 晴れて雨水健太と両想いになれた果林。依然として種族の違いという壁はあるが、今のところは成就した想いに酔いしれているところ――しかし、そんな彼女の身辺を探る者が現れた。吸血鬼同士の情報交換の場である集会に顔を出さず、気ままに行動することから“掟破りのノエル”と渾名されるノエル・アンブローズが、慢性的な少子化に悩まされる吸血鬼たちのなかで珍しく3人もの子供を成した果林の両親に興味を示したのである。しかもその娘は、昼間であっても普通に出歩いているらしい。そこに秘密の匂いを嗅いだノエルは、密かに策略を巡らせる……

 今回は少々纏まりが悪い。ミステリー文庫なのにミステリー要素が皆無、なのは元々原作が謎解きとは関係ないのだから、ここまでシリーズが継続している以上はもう拘る必要もないと想うのだが、しかし単純にお話としても照準が暈けている。気を吐くかと思われたオリジナル・キャラのノエルがろくに直接絡まず、中盤以降は果林の親友・時任麻希の悩みがメインとなり、その背景も単純すぎて物足りない。

 ただ、このシリーズは一貫して、原作ではあまりスポットの当たらない周辺の人物に着目して、話を膨らませるという工夫がある。その観点から言えば、真紅家を出て麻希を採りあげたことは判断として理解できる。また、原作のほうで掘り下げるべき彼女の背景や悩みについてあまり追求できないことを考えれば、このくらいの扱いになってしまうのも致し方のないところだろう。

 ただ、そうだと解っていても、話全体の印象が薄いことは残念に思える。いっそのこと過渡期の話と割り切って、途中で登場するバカップル・コンテストのような素材を増やし、もっと果林と雨水の微妙な恋愛関係に焦点を当ててコメディにしてしまったほうが、作品としては楽しめたのではなかろうか。

 そんな具合にどうも消化不良のきらいが強い内容だが、それでもお話としてはちゃんと綺麗な締め括りをしているのは職人芸を感じる。何だかんだと言いつつ、漫画の内容を崩すことなく膨らましている点で、ファンにとって楽しみなシリーズであることは変わりない。というわけで次もお待ちしております。

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