『天保異聞 妖奇士』説八 狐芝居

 かつて芝居小屋のあった焦土に、人を仮面に変じる奇怪な妖夷が出没する。かつて芝居小屋のひとり娘であり、女が舞台に立てないという制約故に男装している宰蔵は、進んでこの事件に着手するが……

 OPをAパート終了直後に入れる、という編成で綴る新章は、男装の少女・宰蔵の来歴に触れる物語。……なんですが、いきなり妖夷の位置づけが理解不能になりました。前回までは不定形の闇から溢れてくるような印象だったのに、今回の動静にはあからさまな“意志”がある。そうでなくてはシリーズの締め括りがなくなってしまう、とは承知しつつもなんだか釈然としない。

 いやそれ以前に、もともと独自の位置づけで構築されていた“妖夷”という定義のはずが、今回はどう見ても民話における化け狐の行動原理に乗っ取ったうえで話を作っているので、いきなり普通の妖怪退治ものになってしまった感が。だから駄目、というわけではないのですが、唐突で少々戸惑っております。

 せっかくスポットが当たっているのですからもう少し宰蔵の心象に踏み込んで欲しいところですが、まあ“次回に続く”で終わっているので、とりあえずしばし様子見。

 見ていていちばん楽しかったのは、いきなりお喋りな馬になってしまった雪輪=ケツアル=雲七と、それに冷静に突っこんでいるアトルという妙な構図でした。

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