『僕の歩く道』第十話

 新しく買ったロードバイクを見せるために、彼にとっては大冒険に等しい“知らない道”を輝明(草なぎ剛)が走ってきてくれたことで、都古(香里奈)は感情の箍を外してしまう。そしてある日、発作的に河原(葛山信吾)と暮らす家を飛び出してしまうのだった。一方、ロードバイクを手に入れたことと、ちかごろ交流の出来た喫茶店のマスター亀田(浅野和之)の影響から、輝明は自らロードレースに出場したい、という夢を抱くようになる……

 粗筋はこんな具合になりますが、しかし今回の中心人物は輝明の兄妹ふたりです。いずれ触れなければならなかった、“障害者の兄妹”の心の傷をようやく描くときが来ました。うまいのは兄・秀治(佐々木蔵之介)も妹・りな(本仮屋ユイカ)もいちばん悩みの深い年を過ぎてしまっている点。これが、輝明の存在のためにいじめなどの理不尽な扱いを受けるダイレクトな年齢だと生々しすぎて、輝明が主人公であるという視座を見失ってしまいかねませんが、いちばん辛い時期を過ぎているために若干和らげられている。それでは本質を衝いていない、と考える向きもありましょうが、本気で描かれると辛いぞ。

 何より、傷の痛みをいちばん意識するのは、きっと瘡蓋を剥がすときです。そこを上品に盛り込むこの作品のバランス感覚はやっぱり素晴らしい。

 一方の都古も、当初予測していたのと位置づけは異なっていますが、感情の揺れ動きの表現が繊細で印象的。今までは常に第三者だった友人・千晶(MEGUMI)も、海辺の宿に逃げ込んでいる彼女をいきなり訪ねる男前なところを見せて存在感を示してます。輝明とは基本的に接点のない彼女だから、都古自らに決断を促す役割を自然に担っている。

 ラストの流れも非常に良かった……のですが、輝明のあの行動にはちと伏線が欲しかった。あったのかも知れませんが、出来ればこの回のなかで触れて欲しかったところです。そこ以外は文句なし。

 すっかり楽しませてくれた本編も、来週で最終回。高視聴率を反映して、ちょっと時間延長されているのが早くも嬉しかったり。

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