『地獄少女 二籠』第十五話 この国のために

 百合子は幼いながら、現行政権に対する憤りから、父親と共に対抗野党の選挙活動に入れあげている。政治の内容よりも前々から政治活動に加わっていることを誇りにしていると思しい父親に対して含むものはあるが、日々困窮していく我が家の状況に耐えかねる百合子は口を噤み、運動に精力を注ぐ……

 ええと、確か地獄通信には強い恨みがないとアクセス出来ないんじゃなかったか? その場合はNot Foundになっている、といった描写を以前観た記憶があるんですが、名前を入力して弾かれる、という描写は初めて見ました。

 それはさておき、今回はいずれ扱うだろうと思っていた政治問題。ただし、本質的には個人の憎悪に根付いているシリーズの原則に従っていて、話の展開はいつも通り。単純に義憤に収まらず、個人の闇に踏み込んでいくあたりは、シリーズの趣旨には添っていて、さほど問題を感じませんでした。よくもまあ発覚しないよな、と思う悪事は多けれど。

 ただ今回、全般に絵での表現が稚拙でした。車椅子の動き、椅子から崩れ落ちるときの躰の変化、終盤で座っている人間が突き飛ばされたときの反応などなど、躰の構造や自然な反応を無視していて違和感が強い。あいの見せ場もなく、作画的には総崩れという印象でした。そこさえしっかりしていれば、シリーズとしては比較的上位に属する仕上がりになったと思えるだけに残念。

 なお、張られた選挙ポスターにいたずらをするのは犯罪です。立候補者の事務所に属する人間がやった場合、候補者に累が及びます。それすら理解していない時点で、この親父はもっと早く事務所から排除されていたと思われます。

 他にも、伏線の張り方とか細かいところで、相変わらずシナリオの組み立ての拙さも窺わせていたりしますが――まあ、作画ほど酷くはなかったのでそっとしておきましょう。

コメント

  1. 通りすがり より:

    >ええと、確か地獄通信には強い恨みがないとアクセス出来ないんじゃなかったか? その場合はNot Foundになっている、といった描写を以前観た記憶があるんですが、名前を入力して弾かれる、という描写は初めて見ました。

     依頼人の少女が2度目に依頼しようとした時に、「本当に恨んでいたのは」と言って「お父さん」と打ち込んでいましたから、最初の依頼で「大泉」の名前を入力しても弾かれたのは、依頼人が本心から恨みを向けている相手ではなかったから、ということなのかもしれませんね。
     それにしても、今回の依頼者が「お父さん」という名前で入力しようとしており、その依頼は受け付けられませんでしたが、その理由について閻魔あいは「先約があるから」と言っただけで、「姓名を入力していないから」とは言っていませんでした。そのあたりから考えますと、地獄通信への名前の入力は、恨みを向ける相手が依頼人にとって明確であれば、かなり漠然とした表現でもOKなのかもしれない、と思いました。だとすれば、第2話「うたかた」や第10話「曽根アンナの濡れた休日」などのエピソードは、依頼人がどうやってターゲットの正確な姓名を知ったのか?という点がかなり疑問でしたが、その疑問も解けそうではあります。

  2. tuckf より:

    > 依頼人の少女が2度目に依頼しようとした時に、「本当に恨んでいたのは」と言って「お父さん」と打ち込んでいましたから、
    わ、そこは注意が逸れていたようで、思いっ切り見落としてました。
    なるほど、曖昧な入力、依頼者本人との関係性が明示されていれば具体的な固有名詞でなくとも受け付ける、という考え方も出来るとすれば、そういう解釈もあり得ますね。ただそれでも『曽根アンナの〜』はどういう風に入力したのか、そもそもどのタイミングで入力したのか、という疑問が残ってますが、依頼者の幅が拡がるのも確かです。
     しかし、「本当に恨みを抱いている対象ではないから」と地獄通信側で勝手に判定を下してしまうのはどうでしょう。依頼する前の人間の身辺調査をしている時点でも趣旨からすると微妙なんですが、そうして本人の意識を忖度するところまで行ってしまったら、そもそも依頼という様式を踏まえる必要自体なくなってしまいます。そうでなくても厄介なシステムだというのに、自ら進んで複雑化させなくてもという気が。

  3. 通りすがり より:

    お返事を有難うございます。
    >曽根アンナの〜』はどういう風に入力したのか、そもそもどのタイミングで入力したのか、という疑問が残ってますが

     これも疑問な点ですね。これに関しては、全くの想像ですが、携帯電話を使って地獄通信のHPにアクセスしたのかも?と思います。もっとも、携帯電話によるアクセスという描写はこれまで1度もありませんでしたから、この想像に根拠はないのですが。あるいは、哲郎が豊田八六によって地獄送りされたのはドライブインででしたが、そこにネットカフェのコーナーでもあったとか?

    >そうでなくても厄介なシステムだというのに、自ら進んで複雑化させなくてもという気が。

     確かにおっしゃる通りだと思いますが、地獄通信というシステム自体ツッコミどころが満載なものなのですから、ツッコミを入れつつ色々と想像してみるのがこの作品を楽しむ方法なのかも、とも思います。
     実際、今回のエピソードを最初に観た時は、地獄通信は私的な恨みだけを受け付けて、公的な義憤は受け付けないということなのかなあ?と思っていました。考えてみれば、地獄通信が何百年も続いていたのなら、これを利用して横暴な権力者を地獄に送ってやれ、と考える人間は山ほど出てきたでしょうし、そうなったら「正義の味方じゃない」はずの地獄少女が、「正義の味方」になってしまいそうですね。

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