翌年春に結婚が決まっていた里奈の実家に、突如母が戻ってきた。里奈が幼いころ、他の男のもとへと去っていった母は、自らの過失で事故に遭い、寝たきりの状態になってしまったのである。籍を抜いていなかったため、自分が見放せば施設送りになると知った父は母を引き取るが、「世話になるからといって卑屈にはならない」と宣言した母は、横暴の限りを尽くす……
このシリーズでは珍しい、ほぼ全篇にモノローグを挿入した作り。少し文芸作品風の雰囲気は出ていますが、そのせいで話に波が感じられなくなってしまっている。また、そういう格好で物語の視点を固定しているにも関わらず、途中から母の視点や父の視点が混入しているため、バランスを崩してしまっているのも気に掛かります。
とは言え、二籠に入ってからの傾向に違わず、着目点は悪くない。いちど人生から消えたはずの母があまりに辛いかたちで舞い戻り、新たな苦しみを齎す。その挙句に判明する、本人が知らなかった事実――如何にも古い文学作品みたいな主題ですが、これを地獄少女の文法に当て嵌める発想は悪くない。
しかしそうして目の付け所が良くなると、あいや三藁の出番はますます失われていくというジレンマには相変わらず囚われっぱなし。また、テーマの処理の仕方にも疑問が残ります。あの流れだと、どうして母がああいう態度を選んだのか、若干頷けないものを感じるのです。
そしてもうひとつどうかと思うのは、呪いの依頼人と対象者の関係の問題。前々から、“藁人形が第三者の手に渡って紐が解かれた場合はどうなるのか?”という疑問がありましたが――実はこれ、実写版のほうで本編とは逆の答を示してしまっている。むろん実写版とアニメ版とは別の作品と捉えればいいだけのことですし、また紐を抜いた人間と本来呪いの対象となっていた人間との関係性によっても変わるのかも知れませんが、その辺をどうもきちんと設定していなかったと思しい状況の“揺れ”がどうも引っかかります。前シリーズの時点でちゃんと固めていなかったツケなんだろうなー。
今回は作画もいまいちだったのですが、まあ話にせよ構図にせよ意欲は感じられたので、そんなに駄目という気はしなかった。問題は色々あるんですけどねっ。
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