芦屋瑞稀の兄・静稀が、彼女を連れ戻しに来日した。断固として拒む瑞稀だったが、彼女がわざわざ男と偽ってまで男子校に潜入した理由である佐野は、「視界にいるだけで鬱陶しい」と彼女に言い捨てる。だが実は、佐野は芦屋兄妹の会話を盗み聞きしてしまっていたのだ。瑞稀が女であることも、本気で佐野に陸上に復帰して欲しいと願っていることを知り、だからこそ佐野には彼女の言葉や存在が重みを増していたのだ……
冒頭、兄に会うために女の子の服装に戻りながら、長いこと男と偽って生活していたせいで咄嗟に男っぽい仕種が抜けない、というあたり、相変わらずよく解っております。
今回も基調はコメディながら、押さえるべきところは丹念に押さえていて、お話として楽しめます。瑞稀が連れ戻される危機に、下着ドロというモチーフをうまく絡めて二重に緊張感を演出しつつ、ちゃんと最後の締めにも活用している。随所に大袈裟なところを残しているのも、作品本来の方向性を思えば正解です。本当に純粋に面白い。
ただ今回に限っては、佐野が静稀に対して訴える論旨のピントがずれているのが気になりました。この場合、そういう説得の志方はまずいんじゃないかなあ。とはいえ、関係性の変化を感じさせる話運びは悪くない。1クールなのですから着実に進めないとね。
それにしても、第1回の時点からいいなー、と思っていましたが、この作品の上川隆也は実にいい。年齢不詳の怪しさ、危険な格好良さとユーモアがうまく共存していて、ちょっと滑り気味な登場人物たちのなかにあって1本筋を通す役割を果たしてます。これまでは、うまいけどそんなに気になるほどでは、という印象だったのですが、本編で一気に私のなかでの評価が鰻登りになっております。
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