最初の“殺人なき殺人事件”、どう好意的に見ても、捜査に当たった人たちがことごとくボンクラだっただけに思えるんですが……? 以下、ネタバレに当たるので、いちおう“続きを読む”記法にて伏せておきます。
だって、初動捜査の段階であれだけ他殺の兆候が窺えたなら、もっと慎重に検視を行うべきで、早い段階で解剖を行っていれば、DNAを待たずとも、遺体が死後かなり経過してから燃やされた不自然な状態であったことが確認されたはず。そこまで解れば、そもそも事故か自殺か他殺か、などという議論をする必要もなかったでしょう。明らかに謀略があったと考えられるわけですから。
しかも、事故から数週間後、妻に新しい恋人が出来、すぐに同居をはじめた、という事実を軽々に信じているのもひどい。あの計画が語られているとおりなら、妻は夫の新しい身元として偽りの経歴を用意していたはず。そんなもの、ちょっと真面目に警察が洗い出そうとすればすぐに偽りが判明したでしょう。なんでこの程度のことに気づくのに、あれほどの時間を必要としたのか? 仮に夫=新しい恋人、という虚構じみた事実を察知できなかったとしても、事件後間もなく現れた恋人なんて容疑者候補の筆頭に上がるはずで、その身元についてきちんと調べることをあれほど遅らせるなんてボンクラもいいところでしょう。
いちおう再現VTRの途中で、「恋人は事件後に付き合いはじめた人物だ、と友人たちも保証した」云々というナレーションが挟まれていましたが、しかしそのあとには「夫婦は人付き合いが少なかった」という証言もある。つまり、極めて少数の友人たちに、交際期間についてしか訊ねていなかったために、これほど奇怪な事実をあっさり見過ごしていたわけです。こう言っちゃなんですが、フィクションですら真っ青のボンクラぶりだと思います。ちゃんと恋人がどういう繋がりで妻と出会ったのか、どういう素性の人間なのか、調べてから容疑者リストから外しましょう、っていうかどう考えても最初からリストに含めていなかったとしか思えません。
実際にはもっと早いうちから目星をつけて、確証を探っていたがために解決まで時間を必要としたのかも知れませんが、だとしたらこの再現VTRの描き方自体がかなり捜査陣に対して失礼ですし、そもそもそうならばこの成り行きは“アンビリバボー”でも何でもない。強いて言うなら、ミステリでも繰り返し目にしたような類の計画を実行に移した人間がいたこと、こんな杜撰な計画が半年も保ったことが驚きですが、それは完全に番組中での切り口と違う。
続く感動のアンビリバボーも、いい話ではありますが、個人の努力が結実した話であって、さほど“アンビリバボー”と呼べる類のものではない。怪奇現象の類をなるべく扱わないようになって、少し質が向上していたように見えた番組ですが、なんかまた怪しくなってきたか?
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