『墓場鬼太郎』第二話 夜叉対ドラキュラ四世

 水木が地獄に堕ちたのちも彼の養子として彼の家に居座っていた鬼太郎だが、電気代や家賃を請求され、追い出されそうになっていた。しかしその夜、鬼太郎は突如眠りに就いたまま彷徨い歩き、よりによって目玉の親父を川に投げ捨てる。他方、患者が突然幽霊のような有様になる、という出来事に見舞われていた病院の主は、蝟集するマスコミの目を避けて逃亡し――辿り着いたのは、奇妙な民宿であった……

 うーん、原作通りなのかも知れませんが、冒頭における鬼太郎の金銭感覚がちょっと変。人間界での金銭の価値が理解できていないのに、何故“質屋”という単語がすぐに思い浮かんだのか。それ以前に、水木の養子として短い間ながら人間として生活していた鬼太郎が、金銭というものの重要性をあんなに軽く認識しているとは考え難い。これを筆頭に、随所に不自然な部分がありました。

 とはいえ、そういう不合理まで含めて、ある意味原点らしい雑多な味わいがあります。意味もなく日本に出没して、何故かねずみ男をこき使うドラキュラ四世と夜叉が戦うという奇妙なモチーフ。手前勝手な理屈に振り回されて、すべてを鬼太郎たちのせいにする、といった人間達の独善的な言動の数々。だからと言って善人であるどころか、人間達を嘲笑う黒さを自然に備えた鬼太郎と親父、等々、裏付けもなく人間の味方になっている節のある『ゲゲゲの鬼太郎』とは真逆の面白さがあります。

 劇画特有の濃密な線をそのまま動かすための技が更に洗練されて、ほとんど違和感のない域にまで達している美術的な質の高さも今のところ保っている。話はもう少し練り直してもいーんじゃないの、と思いつつ、しかし現時点ではやっぱり満足のいく仕上がりです。

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