ついに都立受験の日。それぞれが緊張感を募らせるなか、生徒達の一部は受験以外の問題で心を煩わせていた。りなはかねてから想いを寄せていた悠司に呼び出され、もしかしたら告白されるのかも、と胸を弾ませていたら、何とサッカーのゴールキーパーを頼まれてしまう。このことで、前々からの想いに火がついてしまったりなは、改めて告白するが、悠司の態度に思わず撤回してしまった――一方、アメリカ留学の予定だった美香は金八先生や同級生達の姿に感化され、日本の高校に進むことを決めるが、夫婦仲の悪い両親はいずれも聞く耳を持たない。そのうえで美香が金八先生に進学の意志を告げると、先生は彼女が思いつきを口にしないことを理解して、願書を手渡すのだった……
毎シリーズ、このあたりになると「受験どころの騒ぎじゃねえだろ」という事件が背後であって観ているほうが焦るのですが、その意味では安心して観ていられます。かといってまったく波乱がない訳ではなく、物語にも動きがあり、描写にも愉しさがある。こと、受験中に、金八先生がさんざん引用していた茨木のり子の詩が出ているのを見つけた瞬間、同じ学校を受けていた生徒が小声で一斉に「出た」と呟いているのが実感的で良かった。
後半は、受験が本格化しているからこそ、受験とはまるで無縁の短歌作りの授業を行うという流れ。短歌作りは旧シリーズでも使われていますが、大事件に対してではなく、大変ななかでの心のざわめきを落ち着けるために用いている点で、初めて目的通りに扱っていると言えます。
シリーズとして重要な分岐点を、見ようによってはさらっと流している点でも絶妙。終盤、美香の笑顔が自然であればあるほど、あの場面の齎す波乱が色濃く予感されるわけです……もー何度も何度も言ってますが、本当に今回のシリーズは堅実でいい。
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