夜、殺人現場を目撃した宇田川はその場で後ろから殴られ昏倒、目醒めたときにはオーガニック素材のケーキ屋を経営していた野田三姉妹の元にいた。よりによって3人に持って行かれた宇田川は、自分を誘拐したことにして、実家から身代金をせしめるよう煽動してしまう。上司の太宰主任は内々で処理しようとするが、鑑識の柴田経由で事情を知ったさくらも捜査に加わり、期せずしてさくらと宇田川が対決する羽目に陥るのだった……
回を追うごとにやることが極端になってきている……しかしそれで笑えるんですから問題なし。ていうか、ちゃんとミステリの様々なパターンを押さえようとするその心意気が素晴らしい。密室にアリバイ崩しと来て、遂にミステリ書きならいちどはやってみたい誘拐事件。
しかもこの誘拐というパターンを、さくらと宇田川の対決という構図に持ち込んで、トドメにあの台詞を持ってくる呼吸の上手さ。レギュラー陣の滑稽な活躍も存分に盛り込み、身代金の駆け引きで巧みに魅せる。さくらに対して宇田川が図る意趣返しの愉しさも秀逸です。正直、誘拐ものを志したにしては手段がヘボすぎるんですが、そこが却って宇田川らしいし、振り回されることで主任たちの個性もよく現れている。
惜しむらくは、さくらが犯人を追い込むための論理が雑すぎて、最後に自ら認めたのがどうにも不自然に感じられる点ですが、犯人の人柄を感じさせる描写で裏打ちしたり、と出来る限りの工夫はしているので充分に好感が持てる。やっぱり観ていて素直に愉しめるシリーズに仕上がっている、と言えましょう。
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