原作:東堂いづみ / 監督:長峯達也 / 脚本:成田良美 / キャラクター・デザイン:川村敏江、爲我井克美 / 美術:行信三 / 作画監督:爲我井克美 / 音楽:佐藤直紀 / 主題歌:三船美佳&THE TRA★BRYU with Renon『Birthday Party』 / 声の出演:三瓶由布子、竹内順子、伊瀬茉莉也、永野愛、前田愛、草尾毅、入野自由、仙台エリ、朴ろ美、高木渉、川田妙子、土井美加、大塚明夫、松風雅也、石田彰 / 配給:東映
2008年日本作品 / 上映時間:1時間15分
2008年11月08日公開
同時上映:『ちょ〜短編 プリキュアオールスターズ GoGoドリームライブ!』 監督:大塚隆史 / 脚本:山下憲一 / 出演:本名陽子、ゆかな、田中理恵、樹元オリエ、榎本温子 +プリキュア5&ミルキィローズ
公式サイト : http://www.precure-movie.com/
[粗筋]
いちどは普通の女の子に戻ったはずの夢原のぞみ(三瓶由布子)たちだったが、キュアローズガーデンの守り人フローラから救いを求められ、こちらの世界に戻ってきたココ(草尾毅)とナッツ(入野自由)、そして人間に変身できるようになった美々野くるみことミルク(仙台エリ)の協力を得て、キュアローズガーデンに行くための鍵となるローズパクトを守るため、ふたたびプリキュア5として戦いに臨む。
……が、それはさておき、今日はのぞみの誕生日。ナッツの経営するアクセサリーショップで誕生パーティが催されたが、そこへ突如降ってきたのは……オーブンレンジ。中から飛び出してきたのは、ココ達のパルミエ王国と親交のあるデザート王国のお姫様チョコラ(川田妙子)、そしてプリキュアと因縁の深いブンビー(高木渉)。
エターナルとは別口、と言いながら毎度の如く使い魔のホシイナーで襲いかかったブンビーを、のぞみ達はプリキュア5となってすぐに退けた。しかしブンビーは皆が一所懸命作ったケーキを奪って逃走してしまう。チョコラは感謝のしるしとして、デザート王国で誕生パーティをやり直して欲しい、と言い出した。
デザート王国は川も樹も建物もすべてお菓子で出来た国。しかもここのお菓子はいくら食べても太らないという、女の子にとってはまさに理想郷。はしゃぎ回るのぞみ達をよそに、チョコラは次第に浮かない表情になる。彼女に請われて、チョコラの母であるデザート女王(土井美加)に面会に訪れたココたちは、悩みがあるなら力になる、と励ますが、そんな彼らに牙を剥いたのは、デザート女王であった。
同じ頃、のぞみにプレゼントするためのお菓子を収穫するため、りん(竹内順子)とかれん(前田愛)、うらら(伊藤茉莉也)とこまち(永野愛)の二手に分かれていた面々にも、魔手が襲いかかる。そして、ひとりはぐれていたのぞみの元にも……
[感想]
去年の『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』に続いて、子供向けだろうが容赦なく大人の語彙で粗筋を書いてみた。
前作は子供向け、TVアニメ・シリーズである、という大前提さえ受け入れていれば完成度の高い作品で、それ故に本篇にも期待を寄せていたのだが、正直に言って出来映えは少々劣る。
前作時点ではTVから登場する主要キャラクターは、戦いに臨む女の子たち5人にサポート役3人の計8人で、中心となる女の子たちがそれぞれ自分の“影”と戦う、というシチュエーションもあって、人物ごとの描写の掘り下げや見せ場の作り方も完璧であったが、本篇ではサポート役の数は変わらないものの、サポートから戦う側に出世したキャラクターがおり、戦いの部分で見せ場を必要とする人数がひとり増えてしまったせいで、どうも充分に尺が取れていない印象が強い。
そもそも、プリキュア5が狙われた理由がいまいち納得しにくいものなのが気になる。いちおう目的をもってプリキュア5を狙った、としているが、でもじゃあなんでプリキュア5なんだよ、というところまで言っていないので、取って付けたような感が強い。構想段階では考えていたことがあったように見受けられるが、作中でちゃんと説明していない、或いは補強していないのがもったいない。
かつその中でのぞみたちが得る結論が、実は冒頭の時点でほぼ出てしまっていることの再確認である、というのがまずいのだ。ベタでも臭くても徹底的に愛や正義を謳うのはこのシリーズの良さなのだが、ちゃんとのぞみたちが悩み、苦しんだ上で結論に辿り着いていた前作と比べると、同じ事を語ってもカタルシスに乏しい。導入部分で、芯を通すための表現が欲しかったように思う。
とはいえ、基本的にTVシリーズに親しんでいる人であれば充分に楽しめるクオリティは維持している。やはりこれも前作より迫力に欠けるがアクションはふんだんに用意されているし、イントロ部分で小さな観客に参加を求めるくだりと、実際に参加する部分の表現は前作よりも洗練された。のぞみとココの微妙な距離感を押さえてみたり、戦闘での組み合わせを、TV版の序盤では対立していたりんとかれんにしているあたりの構成も巧い。
大人としては、戦う組織は前シリーズから変わっているのに、人気があったために“転職”した悪役ブンビーが、まったく別の組織の話だというのにアルバイトと称して登場してきているあたりがとても嬉しい。この作品は悪役側に大人社会の悲哀がこっそりと織りこまれているのも面白さのひとつなのだが、それを象徴している彼が、どう考えても“他社”の備品であるホシイナーをアルバイトで使ってしまってるのはまずくないか、と突っこみたくなる。しかしたぶんこういうところを狙ってやっているのが、このシリーズの良さでもあるのだ。デザート王国に移動するための手段がオーブンレンジに入ってスイッチを入れることだったり、いくら食べても太らないお菓子とか、お願いだから現実に持ち越さないでくれ、という設定があるのも却って愉しい。
総体としては前作より緩い仕上がりながら、それでもTVシリーズを観ている人であれば満足のいく作品となっている。……ただ個人的には、のぞみがクライマックスで取った行動について、エピローグで蒸し返していないことが残念でならない。我に返ったところで多少は照れてくれないと、折角冒頭で描いた部分が活きてきませんってば。
2年にわたった5人組によるTVシリーズは近々終了し、新しいプリキュアにバトンタッチするようだが、しかし今回のメンバーは今春にふたたび映画で登場するらしい――旧シリーズのプリキュアも加えたオールスターで。
……本篇でも見せ場が充分に取れなかった嫌味があるのに、これ以上人数を増やしてどーするんだ、という気はしますが……気になるからまた観に行こうかな、と思っている私こそどーなんだ。
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