『スピーク』

スピーク [DVD]

原題:“The Speak” / 監督&原案:アンソニー・ピアース / 脚本:ブレット・ドノフー、ラモント・マギー、アンソニー・ピアース、マーティン・ワイリー / 製作:アンソニー・ピアース、ブレット・ドノフー、マーティン・ワイリー / 製作総指揮:ポール・ハドソン、ティア・キャンベル・ピーターソン、アルニ・ヨハンソン、リック・ダグデイル / 撮影監督:エド・ルーカス / プロダクション・デザイナー:ピーター・リチャード / 編集:L・スティーヴンス / キャスティング:バーニー・ヴァン・デ・ヤック / 音楽:アンドリュー・ウィリアムズ / 出演:クリスティーナ・アナパウ、トム・サイズモア、スティーヴン・ネルソン、ウナ・ジョーブレイド、ティナ・カスチアーニ、ブレット・ドノフー、マイケル・クリンガー / 配給:Broadmedia Studios×Culcure Publishers / 映像ソフト発売元:Culcure Publishers

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間23分 / 日本語字幕:?

2011年10月11日日本公開

2012年3月9日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.speak-movie.com/

DVD Videoにて初見(2012/07/08)



[粗筋]

 自主映画の監督シェリー(スティーヴン・ネルソン)は新作の舞台として、ある廃ホテルを選んだ。最初の開業以来、持ち主が毎回のように悲劇に見舞われ、現在は資産管理会社が権利を保有しながら、廃墟のまま放り出されている。

 制作担当として撮影を手伝っている恋人ペイジ(クリスティーナ・アナパウ)の尽力で取材の許可を得たシェリーは、毎回カメラ担当として同行する弟ルイス(マイケル・クリンガー)に、今回急遽雇い入れた音声担当のジャクソン(ブレット・ドノフー)とエルサ(ウナ・ジョーブレイド)、そして先住民の血を引き、降霊の儀式を行ってもらうことになっているマリア(ティナ・カスチアーニ)と共にホテルに赴いた。

 契約した相手が管理人ドイル(トム・サイズモア)ではなく息子であったため、事情を知ったドイルとのあいだにしばし悶着があったが、シェリーがどうにか説得して、ひと晩の取材を認めさせる。だが、内部に踏み込んだ途端に、マリアは不快感を示し、儀式をするのは危険だ、と告げた。シェリーはこれも有り金をすべて提示してどうにか儀式を強行させるものの、終わった途端に、ホテルの内部には異様な気配が立ちこめる……

[感想]

 近年すっかり定着した感のある、主観映像=P.O.V.によるホラー映画だが、本篇にはふたつ、際立った特徴がある。

 ひとつは、ほぼリアルタイムに近いかたちで物語が進行していることだ。深夜に廃ホテルに潜入、降霊の儀式を執り行った結果、遭遇する異様な出来事を、ほとんどワンカットに近い形で示す。P.O.V.はこういう手法に向いている一方で、『ブレアウイッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』のように、全般に発見された映像を編集した、いわゆる“ファインディング・フッテージ”という形で示されることが多く、案外こういうかたちは珍しい。

 もう1点の特徴は――具体的に書くことは出来ないが、その結末にある。同種の擬似ドキュメンタリー形式は多々あるが、こういう締め括りは極めて稀有で、恐らく今後も追随するものはあまり出て来ないだろう。

 そういう特異なアイディアを盛り込んでいることは評価出来るのだが、如何せん、緻密さに乏しいのが勿体ない。この手法を用いている作品としてご多分に漏れず低予算、しかも趣向の制約故にかなりタイトな撮影を強いられていたことは察せられるが、それにしても随所の怪異が安易すぎるし、せっかくの結末のアイディアを活かすための伏線が、具体的な意味でも心情的な意味合いでも不足しているので、驚きよりも失望に繋がりやすい。それ以前に、あの顛末を見ても、いったい何が起きたのか解らない、という観客も少なくないだろう。

 本篇に登場する映画制作者たちの振る舞いや、彼らに動員される“能力者”の言動に滲む生々しさが、そのまま独特のユーモアやリアリティとなっている点は興味深いのだが、それが全体としての質の高さに結びついているとは断言しかねる。作中で登場人物たちの足を引っ張った、低予算映画ならではの制約が、そのまま現実の制作者にも影響しているように映ってしまう、その皮肉が面白い――と言われてしまうのは本意ではないだろう。

“能力者”にいわゆるエクソシストのようなものを登場させず、先住民という設定を用いたことなど、ホラー映画に理解があるからこそのひねりが窺える点に好感は持てるが、その理解に引きずられて、変に小さくまとまってしまった感がある。もっと練り込んでいれば、或いは玄人を唸らせるだけの仕上がりになったのでは、と惜しまれる作品である。

関連作品:

グレイヴ・エンカウンターズ

85ミニッツ PVC-1 余命85分

SHOT/ショット

邪願霊

REC/レック

REC:レック/ザ・クアランティン

パラノーマル・アクティビティ

POV 〜呪われたフィルム〜

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