日曜日に映画を観に行くことは滅多にありません。その日限りのイベント上映など、特別な理由があるときに限ります。
そして今日は、どーしても出かけたい理由がありました。映画道楽に嵌って以来、けっこうたくさんの劇場を訪問しましたが、そのなかで設備のデザインがいちばん好きだった、新宿高島屋にあるテアトルタイムズスクエアが、本日を最後に営業を終了するのです。
閉館を前に顧客にアンケートを行い、人気上位だった作品と、これまでの観客動員数上位の作品の中から選ばれたものを、金曜日までは1日1本、土・日は毎回別々の作品をかける、という企画を実施していました。きのうまでの上映作品にも観たいものは幾つかあったのですが、タイミングなどもあって観に行くことが出来ず、せめて最終日ぐらいは、と駆けつけたのです。
最終日の上映作品は3本、最後の作品である『ローマの休日』は生憎とついこのあいだ観たばっかりだし、朝一番の『WATARIDORI』は傑作だけどDVDも持ってるし、というわけで選んだのは最終回の1回手前の作品でした。2002年の発表当時、アカデミー賞2部門のノミネートを受けるなど高く評価されたフランス産アニメーション『ベルヴィル・ランデブー』(KLOCKWORX・配給/WALT DISNEY STUDIOS HOME ENTERTAINMENT・映像ソフト発売)。
観たい作品ではありましたが、あくまで最期を看取るつもりの訪問だったので内容は二の次だったのです。……侮ってました。これ、もの凄い傑作でした。日本ではまずお目にかかれない、シュールかつ愛らしいデザインのキャラクターたちが繰り広げる、アニメーションらしい活躍の数々。けれどその背景にちょっとした違和感という形で毒が盛り込まれていて、苦い余韻も齎す。ジャズの雰囲気を持った、遊び心充分の音楽も秀逸で、これをここの大スクリーンと音響で観られたのは幸いでした。
閉館になる、と聞いた時から、ここの特殊な座席デザインを写真に撮っておきたかったので、鑑賞後職員の方に確認を取って――と思ったら、どうも同じ事を考える人は多かったようで、私が身支度を済ませて席を立つ頃にはあちこちでぱちりぱちり、係員の方も特に制止する様子もないので、黙って撮影しました。ヘボが前世代iPhoneの心許ないカメラ機能を用いた写真なので、見映えはよくありませんが、とりあえずつまずいたら一大事、な感じはご理解いただけるのではないかと。……本当に、事故とかなかったんだろうか。
ちなみに閉館理由には、ちょうどテナントの契約更新の時期が来ており、どうもテナント料や採算性との兼ね合いから撤退を決めた、というのもある模様。鑑賞後、オーディオケーブルを捜していたので、1階下にあるベスト電器を訪ねたところ、こちらも閉店セールでさながら略奪後の様相を呈している。そんなに無茶な条件を突きつけられたんでしょうか。ていうか上下のほぼ同区画に存在するテナントが一気に店じまいする、ってもの凄く不穏な空気が漂ってるんですが、いいのか高島屋。
……まあ何にしても、お気に入りの劇場がひとつ無くなってしまったのはとても寂しい。ですが最後にいいものを観させてもらったことに感謝します。
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