久々に渋谷でハシゴ、しかも2本目は『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』山村浩二×土居伸彰トークショーつき上映。

 1週間は大人しくしてましたが、さすがに我慢の限界が来ました。フラストレーション解消も兼ねて映画鑑賞へ。……と言っても、チケットは予め確保してあったわけですが。

 どーしても初日に観ておきたい作品がふたつあり、上映時間を調べてみると、片方は最終回のひとつ前、もう一方は最終回に観るのが、移動するときに焦る危険も少ない。しかし場所は渋谷、ギリギリに訪問するとチケットが確保出来なくなる恐れがあるから、と前もって買っておいたわけです。実のところ本当に時間割が優先だったので、2本目の上映後にトークイベントがあることなんか、買いに行くまでは考慮してませんでした。

 ともあれ1本目、17時15分より渋谷東急にて鑑賞したのは、『ドッグ・ソルジャー』『ディセント』でB級アクションの名匠という地位を確立した感のあるニール・マーシャル監督最新作、ウイルスの蔓延により崩壊した世界、というお馴染みのテーマを一風変わった解釈で描いたハード・アクションドゥームズデイ』(Presidio・配給)

 ざっくりと説明すると、炊飯器の中に怪しい菌が繁殖してたので、蓋を閉めて放置、25年後に変な気配があったので恐る恐る開けてみたら、中で『北斗の拳』が始まってました、という話。前半のインパクトは強烈なんですが、中盤以降でイメージが分裂して、最終的に観客側で充分なカタルシスを得られない決着になってしまったのが残念。狙いは解るし間違ってはいないんですが、もーちょっとやりようがなかったか、と思えるのです。しかしそれでもやっぱりべらぼうに面白いことは確かで、牽引力は超一級です。ポール・W・S・アンダーソン監督と作風が似てるんですが、こちらのほうが芯が1本通っていて風格があります。私は好き。

 鑑賞後、渋谷駅を横切って、スペイン坂の途中にあるライズXへ。実はここ、テアトルタイムズスクエアと共にデザインが大好きな劇場だったんですが、かかっている作品が私の好みとずれることが多く、かなりご無沙汰してました。しかし今回、無茶苦茶興味を惹かれた作品をかけてくれたので、久々の訪問です。どうもシャーリズ・セロンアカデミー賞受賞作『モンスター』を観に来て以来らしい――何と約5年振りだ、久々すぎるだろ!!

 本日2本目は、1968年にアカデミー賞短篇アニメーション部門にノミネートされた作品で注目されながらスランプに陥り、長年路上生活をしていたアニメーション作家ライアン・ラーキンの、死の直前まで製作していた35年振りの最新作含む5つの短篇と、彼にまつわるドキュメンタリー作品2本をまとめたライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』(Transformer×TORNADO FILM・配給)

土居伸彰氏(左)と山村浩二氏。
 こっちの感想はいったんおいといて、とりあえずトークショーの詳細です。

 出演者は、短篇アニメーション研究家で、ライアン・ラーキンにまつわるノンフィクション『やせっぽちのバラード』の翻訳も手懸けた土居伸彰氏と、『頭山』という作品でアカデミー賞短篇アニメーション部門にノミネートされたライアンの遙かなる後継者のひとり山村浩二氏。冒頭で写真撮影可、ブログなどでの掲載もOK、というお達しがあったので、iPhoneの機能では劇場内でまともに撮ることは無理、と承知しつつもシャッターを切りました。

 話の内容は、今回の上映に至った経緯や、上映されたドキュメンタリーなどでは語りきれない、ライアン・ラーキンという人物像についての補足といった具合。短篇アニメーションを劇場でかける、というのは、制作会社や配給会社の兼ね合いがあって非常に難しく、ライアン・ラーキンという人物の生涯とも絡める形で、とはいえ劇場でかけられたのを両人とも喜んでいるようでした。

 面白かったのは山村氏の話で、やはり同じ短篇アニメーションの作り手として、ライアンという人物については色々思うところがあるようです。以前にカナダのアニメーション作家が、かつて成功していたが今は路上で物乞いをしている先輩がいて、ときどき電車から見えるんだけどどうしよう、という話をされたことがあり、それからしばらくして、ライアン・ラーキンがふたたび脚光を浴びるきっかけとなった、アニメーションによるドキュメンタリー作品『ライアン』*1を観てショックを受けたこと、実はむかし初めてライアンの代表作『ウォーキング』を観たときはピンと来ず、後年になってドンと来たことなど、可笑しくも興味深い話が色々ありました。

 他方で上映作品のうち、ライアン・ラーキンの死後に彼を保護していた人々が完成させた遺作『スペア・チェンジ 小銭を』という作品については、「絵の力が弱い」「どこまでライアンの意向が反映されているのかは疑問」と率直に語っていたのも印象的です。実のところ私も引っ掛かるところが色々あったのですが、詳しくは後日。

 イベント終了後、劇場の売店にて『やせっぽちのバラード』を購入。B6判ソフト224ページという造本なのに税込2,100円という価格設定に一瞬躊躇しましたが、まーお二方の話が面白かったので、おひねりのつもりで支払いました。採算の問題もあったりするしね。

*1:今回の『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』に収録。

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