世の中、細かい間違いは気づくけど大きな間違いは案外スルーされがちだという『誤字院原の敵討』、誰もが安心するためのアイテムが身近にある『われらライナス』、流行語も1年経てばただの死語『楽天大将』、そして伝説のネタ……と思われる『夜間きよ飛行』の全4篇プラス諸々。
最後の最後で出血大サービス状態。たぶん原作通りでしょうが実験的趣向の用いられていた『誤字〜』に、たぶん原作者が封印していたネタをそのまんまやっていると思しい『夜間きよ飛行』、とどめは毎度の『絶望えかきうた』であの人まで引っ張り出してしまった。実験性を最小限に留めてやって来たのを、最後の最後で徹底利用したような感じ。ずっと覚えていた不満が1回で吹き飛んでしまいました。
唯一単行本収録から抜き出したエピソード『われらライナス』も、観たかった話――というより暑さでぼーっとしている小森霧が観たかったんだが――なので、最後の最後で採り上げてくれて嬉しい。さり気なくですが、原作通りのオチに軽くアレンジを施して、マリアが締めくくるのを正当化しているのが絶妙です。
通して実験性が低かったのは残念ですが、その分原作の再現性は完璧と言っていい水準で、絵のクオリティが破綻しなかったのは立派。細かいくすぐりで終始ファンの心を擽ってくれたので、これはこれで良し。でも、出来ればOADとかまたリリースするはずの『絶望少女撰集』では改めて実験的表現をやってくれると嬉しいんですが。
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