『真夜中のサバナ』

真夜中のサバナ 特別版 [DVD]

原題:“Midnight in the Garden of Good and Evil” / 原作:ジョン・ベレント / 監督:クリント・イーストウッド / 脚本:ジョン・リー・ハンコック / 製作:クリント・イーストウッド、アーノルド・スティーフェル / 製作総指揮:アニータ・ザッカーマン、 / 共同製作:トム・ルッカー / 撮影監督:ジャック・N・グリーン,A.S.C. / 美術:ヘンリー・バムステッド / 編集:ジョエル・コックス / キャスティング:フィリス・ハフマン / 音楽:レニー・ニーハウス / 出演:ジョン・キューザックケヴィン・スペイシー、ジャック・トンプソン、イルマ・P・ホール、ジュード・ロウ、アリソン・イーストウッド、ザ・レディ・シャブリ、アン・キューザック、ボブ・ガントン、ジェフリー・ルイス / マルパソ製作 / 配給:Warner Bros.

1997年アメリカ作品 / 上映時間:2時間35分 / 日本語字幕:?

1998年6月日本公開

2009年9月9日DVD日本最新盤発売 [amazon]

DVDにて初見(2010/04/26)



[粗筋]

 フリーライターのジョン・ケルソー(ジョン・キューザック)は依頼を受けて、サヴァナで活躍する実業家ジム・ウィリアムズ(ケヴィン・スペイシー)の主催するパーティの記事を執筆することになった。

 パーティ自体はさほど波乱なく進展していたが、その晩、ジョンが滞在先に戻ったあとで、事件が起きる。ジョンが雇い人のビリー・ハンソン(ジュード・ロウ)を射殺したのだ。近隣では札付きで知られる男で、賃金の前借りのために訪れた彼が銃撃してきたために反撃、その不幸な結末だとジョンは証言するが、幾つかの不自然な点からから、警察は彼が意図的に殺害した、という可能性を疑う。

 事件に興味を抱いたジョンは急遽、事件の真相究明に記事の主題を変更して取材を続けることを決めた。ビリーの下宿先や交友関係と接触していくうちに、ジョンは法廷で炙り出されていくのとは異なる、人間関係の闇を垣間見る……

[感想]

 ……主役はザ・レディ・シャブリ様でしょうか?

 無論そうではない、が観ているあいだ、そんな風に思えるほど彼女(ではないのだが、敬意を表して“彼女”と呼ぶ)のインパクトは著しい。被害者の下宿の家主、というさほど重要性を匂わせない位置づけで登場しながら、急速に話の中心に躍り出てくる様は、まるで彼女の登場を境にシナリオが書き換えられたのではないか、と勘ぐりたくなるほどだ。

 これも恐らく事実とは違う憶測である。というのも、本篇は実際にサバナで起きた事件のルポを原作としているからだ。かなり脚色を施されているとしても、事件の大まかな推移、現実でザ・レディ・シャブリに相当する役回りを演じた人がいたのは間違いないと思われる。

 ただ、だからこそ、彼女にあまりに食われてしまったかのような展開が惜しい。言ってみれば本篇は、まだまだ根深いある“誤解”や“差別”が影響している事件であり、そこに興味を惹かれたからこそスタッフは映画化に臨んだのだと思われる。ならばあまりザ・レディ・シャブリに持って行かせず、程よい匙家限と緊張感を維持して欲しかった。彼女の出番を抜きにしても、あまりにゆったりし過ぎていて、間延びした印象を禁じ得ないのだ。

 落ち着いた味わいのあるカメラワークに終盤の描写の奇妙な重み、淡々としながらも貫禄の演技を見せるケヴィン・スペイシーに、殺される役ながら妙にしこりを残すジュード・ロウと、見所は少なくない。だがそれ以上に緩さの目立つ、些か勿体無い作品である。ザ・レディ・シャブリの稀有な存在感だけでも楽しめるが、サスペンスや法廷ものとしての面白さには乏しく、昨今すっかり名匠としての地位を確立したクリント・イーストウッド監督の、成長への道を辿る、といった目的がないとちょっとお勧めしづらい。

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