大人になれない少年の、その前の話。

 もともと今日あたり映画を観に行くつもりでしたが、それが“出来たら”ではなく“必ず”に変わったのは、松竹系列の映画館で、会員証を提示して食事を購入したときに受けられる抽選で当たった無料鑑賞クーポンの期日がまさに今日だったからです。普通にチケットを購入したときにもらえる、次の購入時にネットなら1200円、窓口でも1300円になるクーポンは、私にとってはお得感があまりないのでほったらかしてますが、さすがに無料クーポンは使わないともったいない。ちょうど、出来れば観たかった作品が終了間近になっていたこともあって、気づいた時点でチケットを確保してしまいました。

 訪れたのは丸の内ピカデリー。実に10ヶ月ぶりの訪問です……ここで掛かる作品はだいたいTOHOシネマズ系列でもフォローできてしまううえ、最近は新宿ピカデリーのほうが多かったせいもある。スクリーンの数が少なく、混雑してもそんなに移動に難儀しないので、劇場としてはこっちのほうが好きなんですけど。

 鑑賞したのは、『つぐない』『アンナ・カレーニナ』のジョー・ライト監督が、有名な児童小説の前日譚に挑んだファンタジー作品PAN 〜ネバーランド、夢のはじまり〜(字幕・2D)』(Warner Bros.配給)。評判があんまりよくなかったんですが、監督の作品は『つぐない』以降ぜんぶ劇場で観ていて、好きな監督に挙げてもいいくらいでしたから、とりあえず押さえてきました……出来れば3Dで観たかったんですけど、選択肢が一気に狭まっちゃったもので。

 まあ、評判が悪いのも頷ける。『ピーター・パン』の要素はきちんとちりばめていますが、その結果がわりとありがちなヒロイック・ファンタジーに収まってしまっているのが何とももったいない。趣向としてはギレルモ・デル・トロの『パンズ・ラビリンス』に近い気はしますが、オリジナルで、かつテーマと描写が哀しいほど折り合っているあちらと比較するとだいぶ劣る。

 ただ、戦争や孤児といった要素を絡めた序盤から異世界の冒険が突如始まるあたりまでの描写の興奮は素晴らしい。『パンズ・ラビリンス』のように作中できっちり完結させていないのが難ですが、オリジナルの『ピーター・パン』での表現や、描写ひとつひとつが仄めかす要素を考慮すると、色々な意図をくみ取ることが出来る。もう少しあとのことまで描いていたら評価は少し違っていた気がしますが、それをあえてあそこで止めることで1篇のファンタジーとして成立させてしまったことが、本篇を変に小さくまとめてしまい、“不発”という印象を与えてしまっているようです。異世界の表現にポップ・ミュージックをアレンジして採り入れたり、という工夫も巧く、作品としての完成度は低くないんですけど、如何せん観客の期待するものと違いすぎているのが問題だったような。

 鑑賞後は近くの某うどん店で昼食。来るまで知らなかったのですが、実は今日まで、皇居乾通りの一般公開が行われていて、私が銀座方面に向かうときに利用する道路が異様に混雑していた。当初は、他の買い物もあるので、神保町まで足を伸ばすつもりでいたのですが、あの人混みを掻き分けるのが億劫だったので、近くで済ませた次第。こっちも混んでましたけど、近隣の勤め人の方々ばかりでした。

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