『サンダーボルト』

サンダーボルト [DVD]

原題:“The Thunderbolt and Lightfoot” / 監督&脚本:マイケル・チミノ / 製作:ロバート・デイリー / 撮影監督:フランク・スタンリー / 美術:タンビ・ラーセン / 編集:フェリス・ウェブスター / キャスティング:パトリシア・モック / 音楽:ディー・バートン / 出演:クリント・イーストウッドジェフ・ブリッジスジョージ・ケネディ、ジェフリー・ルイス、キャサリン・バック、ゲイリー・ビューシイ、ジャック・ドッドソン、ジーン・エルマン、バートン・ギリアム、ロイ・ジェンソン、ビル・マッキーニー、ヴィク・タイバック、ダブ・テイラー、グレゴリー・ウォルコット、カレン・ラム / マルパソ・カンパニー製作 / 配給:日本ユナイテッド・アーティスツ / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

1974年アメリカ作品 / 上映時間:1時間48分 / 日本語字幕:?

1974年9月28日日本公開

2007年8月25日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2011/03/04)



[粗筋]

 サンダーボルト(クリント・イーストウッド)はかつての仲間レッド(ジョージ・ケネディ)から命をつけ狙われていた。かつてレッドらと共に行った銀行襲撃で得た金を独り占めしたと思いこまれているのである。教会の牧師として身を潜めていたが、そこを襲撃され、慌てて逃げ出したところ、1台の車によって救われる。

 車を運転していたのはライトフット(ジェフ・ブリッジス)と名乗る若い男だった。若い頃から流れ者で、サンダーボルトを助けた車も、つい先刻盗んできたものだという。牧師ながら拳銃で狙われていたサンダーボルトを面白がり、同行を申し出るライトフットを、いちどは拒絶したサンダーボルトだったが、レッドの姿を目撃した彼は、ふたたびライトフットの運転する車に飛び乗った。

 レッドとグッディ(ジェフリー・ルイス)を繰り返しながら、サンダーボルトは久々に、金を隠した場所に赴く。しかし、彼が黒板の裏に金を隠したはずの校舎は、その場所から姿を消していた。

 そこへふたたびレッドたちが襲いかかるが、気づけば争いは有耶無耶となり、無一文となっていた一同は、共に新しい犯行を計画し始める。標的は――かつてサンダーボルトたちが強盗を働いた銀行。彼らはかつて成功したのと同じ方法で、ふたたび金を奪おうと目論んだのだ……

[感想]

 クリント・イーストウッドmeets『明日に向って撃て!』といった趣である――説明すると実に簡単だが、しかしイーストウッド作品を意識して追ったあとで辿り着いてみると、かなり奇妙な手触りがある。

 イーストウッド自身が演じている主人公像は従来とほとんど変わりない。しかし周囲のキャラクターや、填め込む物語を変えることで、主題の持つ新味をいっそう強調しているのだ。

 とりわけ印象的なのは、のちに名優の名をほしいままにするジェフ・ブリッジスが演じた相棒ライトフットである。この作品に漂う、従来と異なる雰囲気はほとんど彼一人で醸しだしている、と言っていい。

 言葉数少なく、ひたすら重厚な振る舞いを続けるサンダーボルトに対し、実に軽く、その場その場の直感で物を言い、サンダーボルトを振り回す様は『真昼の死闘』でシャーリー・マクレーンが演じたヒロインにも通じるものがあるが、終盤ではその雰囲気がまた一変する。本格的に犯行計画が進められていくと少しずつ弱さを顕わにし、結末での言動は序盤を彷彿とさせながらも突き抜けた境地に至る。この物語を成立させるためだけに現れてサンダーボルトと関わり、さながら溶けてしまったかのようにふわりと消える様は、作品の備える軽快さ、清々しさ、そして虚しさを何よりも的確に象徴している。

 ジェフ・ブリッジスが素晴らしすぎるだけにいささか霞んでいるが、イーストウッドも従来のキャラクターを留めながらも、少し異なったアプローチを示している。牧師となって身を潜めていた、というユニークな導入を踏まえ、いつになく知識人的な側面を見せている。女性の扱い方や命のやり取りに、妙に繊細な表情を見せるのも、他の作品と比較すると興味深い。

 音楽を用意はしているがあまり鳴らしすぎることなく、環境音を主体として演出しているのも、それ以前の西部劇や、昨今のテンポのいい犯罪劇と比較して一風変わったムードを醸しだしている。一種神話的なストーリー展開の持つ微かなリアリティを、この過剰な音を抑えた演出が強めている。ラロ・シフリンの音楽が高らかに鳴り響き、クールな魅力を強めていた『ダーティハリー』2作品と並べてみると、そのスタンスの違いがまた面白いところだ。

 イーストウッドはほぼイーストウッドのままで、しかし当時の映画界の新しい潮流をきちんと組み込んできた、相変わらず職人芸の光る作品である。

関連作品:

ダーティハリー2

荒鷲の要塞

真昼の死闘

戦略大作戦

明日に向って撃て!

クレイジー・ハート

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