原題:“飛渡捲雲山” / 英題:“Magnificent Bodyguards” / 監督&制作総指揮:ロー・ウェイ / 脚本:古龍 / 製作:スー・リーホワ / 撮影:陳榮樹 / 武術指導:ジャッキー・チェン、リウ・チュン / 音楽:陳動奇 / 出演:ジャッキー・チェン、ジェームズ・ティエン、ジェームズ・ツェン、ワン・ピン、ルン・シウルン、ブルース・リャン / 映像ソフト発売元:Paramount Home Entertainment Japan
1977年香港作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:?
日本劇場未公開
2010年12月17日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]
大成龍祭2011上映作品
DVD Videoにて初見(2011/06/30)
[粗筋]
ディン・チョン(ジャッキー・チェン)、不死身と称される武術の達人である彼が、道中突如襲われた。腕試しの意図を察したディンが敢えて彼らに従っていくと、案内されたのは一軒の豪邸である。
その邸の主人を名乗るランという女は、ディンの腕を見込んで、ある仕事を頼みたい、と申し出た。彼女の弟は重病に苦しんでおり、治療のためには3日以内に京城の医者に診せなければならない。だがそのためには、盗賊が跋扈しており生きて降りることが出来ない、と噂される捲雲山を越える必要があった。
金ならいくらでも払うから引き受けて欲しい、という申し出を、だがディンは報酬なしで受け入れる。同行者を選ぶ権利を許されたディンは、ランが予め集めた用心棒のうちごく一部を雇い、旧知の男で耳の聴こえない皮職人チャン(ブルース・リャン)を呼び寄せた。
さっそく旅立ったディンたち一行は、捲雲山の手前にある街で、盗賊たちの上前をはねているション(ジェームズ・ティエン)という男と遭遇する。支払を怠ると顔の皮を剥ぐ残酷な男だが、直前に捲雲山の女頭領ガムリンの恋人を殺害しているため、打算から味方につく可能性があると踏んだディンは、ランの資金を用いて彼を勧誘した。
かくして、3人の達人とランの腹心である美しい剣術使いを含めた一行は、捲雲山に赴く――
[感想]
このあとの、ジャッキーがレンタル移籍で出演した2作品や、ロー・ウェイ監督のもとを完全に離れて撮った諸作を鑑賞すると、つくづく彼はあまりいい監督ではなかったのだ、と痛感する。ジャッキーの魅力を引き出せなかったこともそうだが、魅力的なストーリーを構成する能力が乏しかった、と言わざるを得ないのだ。ブルース・リーを起用した『ドラゴン 怒りの鉄拳』や、比較的まとまった『龍拳』などを例外にすると、正直観ているのが辛くなることさえある。
そんな中にあって本篇は、比較的良くできた部類に入るだろう。
ところどころ意味不明であったり、支離滅裂に陥りがちなのは相変わらずだが、少なくとも話はかなりまとまっている。いきなりの激しいアクションから、いきなり奇妙な依頼を託され、集まった面々と共に、魑魅魍魎の蠢く捲雲山を目指す。普通なら敵役になるであろう人物がメンバーに加わっていることで、物語にはいい意味での緊張感が漲っており、この監督の作品としては意外なほど牽引力に富んでいるのだ。
依然としてジャッキー・チェンの魅力は引き出し切れていないが、他のロー・ウェイ監督作品に比べれば遥かに、のちのジャッキーが演じる人物像に近く、いまの目で眺めても馴染みやすい。仲間たちのキャラクターも立っているので、恐らく意図した結果ではないだろうが、全篇にユーモアの味わいをまとったことも幸いしているようだ。伸び伸びしているわけではないものの、この頃のジャッキーのなかでは精彩を感じる。
あまりにひねりすぎて、ほとんど無意味に陥っているものの、終盤のどんでん返しの連続が観ていて愉しいのもまた事実だ。このアクロバティックなストーリー展開は、恐らく脚本を担当する古龍のテイストではないかと思われるが、同じ古龍作品『成龍拳』と比べると成功しているほうだろう。破綻の著しさよりは、その展開の驚き、面白さのほうが印象に残る。
終盤のアクションの趣向や見せ方も、しつこいようだが、この監督としては振るっている。カメラワークのぎこちなさ、細部を見せる際の粗雑さには眉をひそめたくなるが、参戦者それぞれの個性が発揮されていて、ロー・ウェイ監督作のアクションシーンでは、『レッド・ドラゴン/新・怒りの鉄拳』クライマックスに肉迫する出来映えかも知れない。
細かな矛盾、アクションに対する情熱の乏しさなどに言及するとキリがないし、依然としてジャッキー・チェンが主演である必然性は乏しいと言わざるを得ないものの、この時期のジャッキー出演作としては、あまりわだかまりを感じずに愉しめる作品であろう。どーしてもロー・ウェイ監督によるジャッキー作品を1本観なければならない、と言われたらこれをお薦めする――そんな質問に遭遇すること自体あり得そうもないが。
関連作品:
『成龍拳』
『少林寺木人拳』
『龍拳』
コメント
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